セルビア戦・ベラルーシ戦を終えて

欧州遠征の第一弾である中堅国2連戦を2連敗で終えた日本代表に対し、ザッケローニ解任と言う声が一部で上がっているようですが、なんとまあ、アホかと。
特にセルジオさんなんかは日本ホームで行うぬるい親善試合なんて集金にはなっても強化につながらないのだからどんどんアウェイに出かけて厳しい環境で試合をしろと言ってたんじゃなかったでしたっけ? アウェイに行っていろいろ試して勝てば良いけど勝てなくても狙いが分かる敗戦ならしょうがない、そんな風に思ってますのでこの2試合や直近の流れをもって監督解任なんてまったく思えないのですけどね。


ということで私が感じた狙いなんですが、日本はアジアにいる以上ワールドカップのアジア予選は力の差がある相手と戦うことが多くなるわけで、必然的に自らがボールを持って引いた相手を崩す形が多くなるのはしょうがない。今まではそれで予選を突破しても本大会では同じ形が通用しなくて、特に南アフリカ大会直前にはチームの戦い方を大きく守備重視に振って戦いある程度の結果を収めたが、決勝トーナメント初戦のパラグアイには通用せずに(通用して守りきったけど少ない攻撃機会では攻め切れなかった)敗退した。ここが全てのスタート地点になっている。
で、次のブラジル大会も出場権を得る予選までの道のりは似たようなもので、予選の最中に日本が引いて守ることを選択するべき相手はいない。でも、来年の本大会に向けて引いて守るのか? というのが問われているのが現在地点。


それはコンフェデのブラジル大会からテストは始まっていて、その試合に勝つ、その大会に結果を残すことが目的なら違う戦い方をしたかもしれないけれど、日本はアジア予選と同じ戦い方で臨んで負けた。ブラジルに対し通用しない部分、ちょっとグダグダなイタリアに対し通用する部分としない部分、メキシコに対し通用しない部分ははっきりと分かった。でも、そこでまた自分達のスタイルを変えて大きく修正すると言う考え方は現在の日本代表にはないのだと思っています。とにかく今の戦い方でどこまでいけるのかを試す。そう、試している真っ最中です。


試すと言えば一部の方からは同じスタメンばかりでなぜ新しい選手を試さないのかと言う批判もありますが、試し方は監督の自由。新しい選手を使ってチームの幅を広げる方に試合を使うのか、負けても負けても同じメンバーを使ってチームの進化がどこまでいくのか深さを求める方に試合を使うのか。日本代表の限られたマッチスケジュールの中でザッケローニ監督はチームの深さをチャレンジすることにした、ただそれだけです。幅を広げてもチームは強くなるでしょうが、深さを選んでもチームが進化して強くなるかもしれない。正解のない選択肢で監督の監督たる所以である部分の仕事なので、それを持って批判するのはお門違いも甚だしいと感じます。


で今回の2連敗ですが、確かにセルビアベラルーシも欧州の中堅国以下でしょうから負けるのは心配になります。でも、このような国はワールドカップ予選やユーロの予選のグループリーグで常に欧州強豪国2カ国ぐらいが同じグループに入っていて、守ってカウンターなど練習しなくたってやれるほど慣れているはず。そのようなチームを相手に今の日本代表のスタイルがどこまで通用してどこが通用しないかを試すことができた収穫のある2試合だったと思ってます。
確かに香川選手や吉田選手などクラブで試合に出ていないが故のコンディションの問題などは抱えていたかもしれない。でも、今この2試合に勝利し結果を出すことよりも、半年先のワールドカップ本大会を日本が自分達のスタイルで戦えるようにチームの深さの幅をとることを8割ぐらい優先しただけの2試合だったんじゃないか、と思ってます。残りの2割は柿谷選手を使ったこと。新しい選手だって試してるじゃん。


次の欧州遠征がオランダとベルギーの2試合になるのなら、コンフェデのブラジル戦のように好むと好まざるとに関わらず日本はアジアの戦いとは違って押し込まれた状態が多くなった中で必然的に戦うことになります。これは意識してテストしなくたって相手によってはそうなるし、本大会でも第一シードの国と戦う1試合はそうなるでしょう。でも、残りの2試合はセルビアベラルーシよりももう少し強い国とやるし、決勝トーナメントに進んだらそのような相手から得点しないと先に進めない。本田△のように優勝はまあ、まあ難しいかもだけど、私もグループリーグやトーナメントで引いて守る日本は見たくない。ただ今はコンディションや意思統一の部分でチームのダイナミズムやオートマティズム(このチームのザック戦法にあるのなら…)が失われていて、ザックさんが微修正してそれをどう取り戻すかが問題だと思っています。縦に早くパスをつけるとか、ボールを追い越して走り抜けるとか、そんなことがふとしたキッカケで思い出せれば問題ないし、オランダやベルギーはそれを思い出しやすい相手でもあります。


ザックさんも経験のあるプロ監督ですから本当の意味でのチーム作りは最後の合宿期間でもできるでしょうから、今はとにかく試せることを試す時期でもあり、それができるようなマッチメイクを日本サッカー協会がうまく作れているのだから、もっと一喜一憂して(一憂二憂って感じだけど…)楽しんでればいいと思ってます。本大会をリーグ開幕だと考えるなら、今はまだ一次キャンプをどこかの南国でやってるようなもんだから。