イエメン戦監督会見、選手会見

相変わらず言葉が深いし、いい難いこともズバリと仰る。
イエメン戦後 オシム監督会見 スポナビ

先ほどイエメンの記者から「どうして最強のチームを連れてこなかったのか」という質問があった。私は「今来ているのがベストチームだ」と答えたが、プレーヤーがベストだということではない。プレーヤー個人の力を比べれば、連れて来た選手よりも優れた選手はいるかもしれない。しかしサッカーは個人競技でなく、集団競技である。集団として、どういう力を発揮できるかというのが重要だ。だから集団プレーに向いている選手を今回連れてきた。

前の代表に対するアンチテーゼではないと思いますが、このような考え方の方が日本には向いているのではないかと思います。もちろん、個の力で相手との違いを作り出せる選手も必要だと思います。でも、そのような選手を11人並べても良いチームが作れるわけではないでしょう。ジダンの傍らには常にマケレレがいたように、違いを作り出せる選手が輝くためには、それを生かせる周囲の選手が存在しなければならない。今はその基礎作りをしている段階で、ある時期になったらそのような選手を呼ぶのかどうか、非常に興味のあるところではあります。


幸いにも日本の対イエメン戦後にサウジアラビアのおかげでアジアカップ予選突破が決まりましたから、ホームでの親善試合(ガーナ戦)やアジアカップ予選でのインド戦、サウジアラビア戦をかなり自由に戦える環境になりました。それらの試合でオシム監督がどのような選手を招集するのか、今から興味深々です。


さて、こちらは軽率なメディアに対する苦言。

――チーム立ち上げのこの時期に、こうしたハードな試合をこなしたことはよかったと思うか?

経験ということか。それは私個人の経験だけでなく、皆さんも含めて選手も経験を積んでいくものだと思う。一種の共同作業だからフェアにいかなければならない。
 田中達、佐藤寿、巻、我那覇らが代表に選ばれていない時期には「どうして彼らを選ばないんだ」という記事を皆さんは書いていたと思う。今、彼らが選ばれてプレーして、少しでもミスをすると「何であいつらを使っているんだ」という記事を書いていないだろうか? また全部のJのチームを見て回って、またFWを4人追加で選ばなければならないことになってしまう。先ほどの趣味の話に関連するが、今回連れてきた4人のFWよりも、いいFWがいるのなら誰か教えていただきたいものだ。


(会場、無言)


 矢野とか、高松とか、大久保、大黒……名前を挙げればきりがないだろうが、それではいい選手は誰か? 誰かいるか? だからミスをしたとか、得点力不足だとか、そういう批判を簡単にしてもらっては困るのだ。しかし同時にFWの彼らが、集団の中で生きるようなトレーニングをしなければならない、ということも考えている。シュート練習、キック練習というものは、彼らもボールを買うくらいの余裕があるだろうから、買ってもらってクラブでやってもらいたい。まあ、買わなくてもクラブにあるだろうが(笑)。

相変わらず苦言を呈した後はジョークを言って場を和ませようとするところはさすがですが、心ある記者ならこの発言は大きな楔になると思うのですけどね。ないものはねだれないし、嘆いても変えられないなら嘆いても仕方ない。今与えられているものの中でで、最善の結果を残すための努力をするしかない。
当たり前だけどきわめて重い話を、きちんとストレートに話してくれる。代表監督としてだけでなく、日本のサッカーに関わる世界全体がいろいろと考え直すキッカケを与えてくれる得がたい人物を日本サッカー界は幸運にも手にしたような気がします。後は愛想を尽かされないように気をつけなきゃいけませんね。



さて、こちらは選手会見。
イエメン戦後 選手コメント スポナビ

坪井慶介浦和レッズ
(阿部を最終ラインに下げたのは)相手の14番(アルオムキ)と41番(アリシェリ)が動いていたので、はっきりと阿部に付いてもらった方がいいと思った。

後半押し詰まった時間帯での右サイドのオーバーラップも圧巻でしたが、阿部選手のポジションなど選手が考えている部分が嬉しいですよね。

阿部勇樹ジェフ千葉
闘莉王が上がった後のカバーリングなどはこの間のサウジ戦よりも改善されたと思う。相手もある程度前線に人数を残してきたけれど、(前線に)上がれるタイミングはあった。(最終ラインへは)普通に考えて、入る展開だった。自分の判断だったが、特に何も言われなかったし、この間のサウジ戦も同じような展開だった。


3バックとか4バックとかフォーメーションが大事なのではなくて、マンマークでいくのかゾーンで守るのかラインの高さとかようやくシステムの問題に戻ったような気がします。前の代表の守備についてはフォーメーションがシステムと混同されてそこばかりがメディアにクローズアップされていましたが、大事なことは人数とかのフォーメーションではなくて、守り方のシステムのイメージが全選手に共有されているかどうかだと思っているのでようやく安心できるかな、と。まだまだ中盤の選手との連動が難しい部分もあるでしょうが、大事なのは人数じゃなくて”守り方”だと思うので、これからが期待です。

風間八宏氏を”斬る”

穏やかならぬタイトルですが、何せ先に風間八宏さんがオシムさんを斬っているので、あえてこのタイトルにしました。風間氏の名前を使ってますが、本人が書いたというよりは聞き取りを記事にした、そんな感じの文章でしょうか。そうでなければ、あまりにも内容が酷すぎますね。
風間八宏氏がオシムジャパンを“斬る” スポニチ

日本代表の個人能力の低さが目を引いた。シュートやクロスの制度をはじめ、代表選手とは思えないプレーが数多くあった。個のベースがなければサッカーは成り立たないし、選手選考に疑問を感じざるを得ない。

 象徴的なのは、前半24分に羽生がタメをつくる選択肢を放棄し、雑なスルーパスで好機をつぶした場面と、同45分にゴール前にボールを運びながら勝負を仕掛ける選手がおらず、バックパスを繰り返した揚げ句、フリーの加地がシュートを打ったが、柳沢、高原は仕事をさせてもらえなかった。その柳沢、高原でも、この日の巻、田中達よりも質の高い動きをしていた。

微妙に日本語もおかしいのですが、それには目をつぶるにしても、この試合の置かれた位置をどのように考えるかの前提が違いすぎると思います。


オシム監督の側から考えれば、Jリーグと日本代表の厳しい日程のせめぎあいの中で、練習時間もろくに取れない中での公式戦であること。そして、停滞した4年間の後に、若い選手の発掘と公式戦の結果を両方追い求める必要がある試合であること。4年後のワールドカップに向けて、次の世代の選手に本来ならば前の4年間で積むはずだった経験を、短期間で積ませなければいけないこと。
それらの事情を踏まえた上での今の招集メンバーであり、先発メンバーであるはず。オシム監督にとってのゴールは今回のアウェイ2連戦ではなく、チーム作りは始まったばかり。それらを考えての選手起用であり、ある意味我慢でしょう。


確かに現在の招集メンバーより質の高い選手はいるかもしれない。でも、その場その場で質の高い選手だけを並べて、4年間にわたる継続した強化方針なり次の世代につなげる努力をしなかった結果というのはドイツの地で充分に分かったはず。敗戦の後の日本に残されたものは、次世代への希望だったのか、草も生えない焦土だったのか。
その結果を踏まえてのオシム監督就任であり、現在の日本代表でしょう。質の高い選手だけを並べた日本代表が見たいのなら、前の監督の留任を強く希望すれば良かったのに。


代表ですから結果も必要ですが、今だけを見るのか未来を見るのか。風間さんご本人の意図が100%反映されているコラムだとしたら非常に残念ですね。下の監督会見の言葉とあわせて読めば、差は歴然です。