いつか来た道

このエントリーは論理的なものではなくて思いっきりぼやきというか結果論なのですが、今回の男子五輪代表は鈴木啓太選手をメンバーから外したことが分岐点だったのではないのかな、と思っています。もちろん、18人という厳しい登録人数の中で決定的なパスミスをしたりする鈴木啓太選手が入らなかったことには、技術的には納得しています。でもチームの精神的な部分はどうだったのだろう、と思ってしまうのですよね。


思い返せば、フランスワールドカップ本戦直前で三浦カズ選手を外した岡田監督。シドニーオリンピックOA枠で中田英寿選手を連れて行って彼のキャプテンシーは期待外れだったというようなことを言ったトルシエ監督。日韓ワールドカップ直前に圏外と思われていたゴン中山、秋田選手をメンバーに入れたトルシエ監督。そしてアテネのメンバーから鈴木啓太選手を外した山本監督。


私はキャプテンシーを語るのは嫌いなのです。だってその選手に会ったこともないし、チームの雰囲気を内部から感じる術もない。でも、技術的な優劣を超えた精神的な支柱というか、チームに刺激を与える役目、また経験を伝える役目。そして、ここが踏ん張りどころだと思ったら怒鳴り散らしてもいいからチームに緊張感をもたらす役目の選手は必要だと思うのです。うまい選手だけを集めれば最高のチームができるわけではなく、試合を始める選手、試合を終える選手、そして出番がなくてもチームを支える選手、またボールが納まり足元の技術が高い選手、スピードのある選手、足元の技術は劣るけれどハートがあって泥臭く相手を潰す選手、そういう様々なタイプの選手が組み合わされてこそ最強のチームができるのではないかと思うのです。そういう意味では私は今回の山本監督のチームはバランスが取れているとは思えませんでした。


しかし、日本サッカー協会の考え方は違うようですね。
山本氏A2監督就任へ  おりたさんのところより

田嶋幸三技術委員長(46)は「山本のやってきたことに間違いはない。経験を大切にしたいし、今後も協会に残ってもらう」と手腕を高く評価している。

今回の試合後の山本会見を読んでも、本人はどこかで自分が間違った結果がこのような試合結果になったとは考えていないようですね。もちろん会見ですべての本音を語るとは思いませんが、アテネ後に自分の監督としての戦い方を山本さん自身が総括して、この話を受けるのかどうか見守りたいと思っています。


現状では私はテスト、競争、ボリバレントという言葉に踊らされて、チームを作ることを忘れた山本監督には、オリンピックチームとはいえ率いる力はなかったと思っていますが、これは山本監督自身の問題というよりは、監督就任を要請した協会の責任というか問題なわけで、このような談話がリップサービスとして出てくるならともかく、2試合で7失点してグループリーグ敗退を決めた監督は、大会中でも解任されてもおかしくないだろうとすら思います。


たまたま今朝のラジオで聞いた話なのですが、かつての体操王国の日本は、自分達の強さにおごるあまり、他国から学ぼうとする姿勢を失って、久しく苦しい時代を過ごしたそうです。そこからアテネで金メダルを取るまでに実に25年以上の時間が掛かったわけですね。
今のサッカーの日本代表は世界の頂点には立っていませんが、アジアの中では強豪国として君臨しています。その強さにおごるあまりに、他国から学ぶ姿勢を忘れていないか、このことが非常に心配です。今のフル代表の監督の選手起用を考えた時に、若手にチャンスが回ってくるとも考えられないので、B代表を作ること自体は否定しませんが、それならなおのこと、海外から若手の育成に熱心な監督を連れてきて、日本の中では学べない技術なり戦い方を学ぶチャンスだと思うのですが。


この話がこの先どういう展開を見せるのかわかりませんが、2002年以降のジーコ監督の就任と山本監督の就任が日本サッカーの発展と停滞の最初の分かれ道だとしたら、アテネ後の日本サッカー協会の選択は2度目の分岐点だと思います。
1度目の選択は間違ってしまったけれど、どうか2度目の選択は正しい道を選んでくれるように願うばかりです。サッカー協会の中にも、良識の残っている方は、必ず居ますよね。世界大会が終わった後に総括や反省はしないのですか。アテネに向けて正しい選択をしましたか。この道は『長沼 - 加茂時代』に通った道ではありませんか。よく考えてください、日本サッカーの未来のために。