「西部謙司の眼」 東京V、スタイリッシュに大勝

誉められていますが心が痛むコラムです。

かつて、緑のユニホームに身を包んだ男たちは、サッカー少年のあこがれのまとだった。ヨミウリは異端で、ファンキーで、不良だった。テクニックは図抜けていて、自らそれに酔ってしまうような欠点もあったが、それも含めてとてもカッコよかった。今のJリーグの選手たちはずっとプロフェッショナルだが、あの緑の連中ほど魅力的な気がしないのは時代が違うということだろうか。ガラガラのスタジアムに響いたサンバのリズム、それに乗ったまったりしたパス回しで相手チームに催眠術をかけ、十分に感覚を麻痺させた後に目覚めのキツイ一撃をお見舞いしていた。それまでの日本には、どこを探してもないサッカーがそこにあった。

そうです、このスタイルに私も心を一撃されてしまったのです。

現在の東京Vは決して客の呼べないサッカーをしているわけではない。他のチームと比べても遜色がないどころか、この手のサッカーが好きな人なら、きっと面白いだろうプレーをしている。そう、かつてのヨミウリのサッカーである。
 観客数1万2653人は、9位と12位の対戦にしては入ったほうかもしれないが、ゴール裏に陣取るサポーターの数はホームの東京Vと清水で大差がない。

スタジアムに中々行けない私が言うのも説得力がないのですが、寂しいなぁ。

これだけの試合ができるなら、東京在住のサッカーファンは見に来なければもったいない。優勝を狙うには力が足りないのだろうし、清水の出来が悪かったのも事実。だが、東京Vはスタイルを持っている。カズやラモスが退団して以来、一時は失われていたスタイルだ。それは、清水戦の後に行われた日テレ・ベレーザの試合でも同じだった。というより、こちらはさらに破壊的。ベレーザのCF荒川恵里子、彼女が男で、東京VのCFだったら、Jリーグ優勝も十分に可能だと思うのだが……。

西部さん、それは言わない約束で。