フットボールニッポン ジーコインタビュー

VOL9 2004冬号に掲載されているジーコ監督インタビューですが、言っていることとやっていることの差がありすぎるように感じます。

Q: 戦力補強ですが、監督は以前、代表のサイドバックに課題がある、といった言い方をしていましたね。
ジーコ: 課題といった意味は両サイドが弱いといった話ではないのでそこは誤解を招かないで欲しい。現状において、選択肢の幅が狭いに過ぎず、弱いのではない。
(中略)
右が加地と山田。左にアレックスと三浦だけ。2つのポジションにわずか4人では、何かがあった場合を考えると、選択肢の幅が非常に狭い。予選の困難を思うと考えておかなくてはならないと思う。

監督がインタビューですべて本音を語るとは思わないし、また100%話してしまう監督でも困るのですが、この部分は困るというか呆れてしまいます。こんなことは1年半も前からサポーターはずっと言ってきたことでしょう。Jで活躍している選手を招集して、合宿や親善試合で試してみろと。選手層を厚くするチャンスはいくらでもあったのに、親善試合でも目先の勝利にこだわって新しい選手を試さなかったのはどこの誰ですか。テストなど選手に失礼だとか何とか言って、固定してチームの幅を狭めてしまったのは自分自身でしょう。

Q: ほかのポジションはどうでしょうか、今全く知らない選手を入れる可能性は?
ジーコ: もちろん、今後新しい選手補強がない、と言うつもりはない。チームは常に変化し、確固たるチーム、完結した普遍のチームといったものはサッカーには存在しないからね。誰かが入る可能性はいつでもあるし、リーグでコンスタントにプレーをしていれば誰にでもチャンスはある。しかし、2月から予選がスタートすることを思えば時間がそれほどないのも事実であり、現在の核を壊してまで新戦力を吸い上げていくことは難しいと考えるべきだ。
代表には指定席などないのだ。私がこの一年、選手と一緒に学んだことは、あの選手、この選手でなければ試合に影響を受ける、その選手頼みで試合に勝つことではなかった。本当に誰が入ろうと、誰が怪我で抜けようとも、今では代表はひとつのチームとして、クラブなどと同じように機能する、非常に熟成された組織だと思うね。

ここもまったく同じ怒りというか呆れを感じてしまいます。この文章だけを見れば至極もっともな発言なのですが、チームの変化を望んでいないのは監督自身だと思えるし、試合も見に来ないのにJリーグでコンスタントにプレーすればチャンスはあるなどと教科書的な受け答えをされると腹が立つ。天皇杯の試合は何試合見たのですかね。税金対策で国へ帰っていたのでしょう?


2月からの予選を考えれば時間がないって、そんなの今年に入って決ったことでもないし、昨年の最後の2試合、シンガポール戦とドイツ戦で何かやったのですか。2002年から2年半の時間があってサイドバックは左右2人づつしかいないのですよ、呆れてしまいます。
現在の核を壊さずに新戦力を見出したり育てたりするのが監督の能力じゃないのですかね。監督から見るとシンガポール戦もドイツ戦も機能していたのでしょうか。熟成された組織に見えるのでしょうかね。


常々思うことなのですが、『機能している』という表現のなかで、その人の基準が良く分からないと意味が大きく異なってくると思うのですよね。例えばDFが機能している。これの意味として失点しなかったから機能している、例えどれだけ押し込まれて、どれだけシュートを浴びせられても失点しなければ機能しているのか。それとも試合前の狙い通りの高さやポジションで相手ボールをうまく奪えて攻撃の起点になれることが機能していると捉えるのか。DFに求める役割というのでしょうか、守備を考える時の目線や視点の高さと言うのでしょうか。
例えば攻撃についてカウンター1本でも得点が入れば機能しているのか、それともイメージ通りの攻撃を組み立てられることが機能していると捉えるのか。


まあ、ジーコ監督にそれを求めること自体が間違いだということは充分承知しているのですが、あらためてインタビューでこのようにまともなような事を言われると、実際のこの2年半を振り返って非常に腹立たしいです。
現在の日本代表に日本で最高のサッカー、見ていてワクワクドキドキするようなサッカーを見せて欲しいタイプの人間です。今の選手たちは2002年の大会を経験している選手が中心で、その経験豊かな選手プラスアテネ世代から有望な数人をピックアップしたら、魅力的なサッカーは不可能じゃないと思うのですよ。でも、現実は予選に勝つだけの最低限のサッカーを目指すチームに成り下がってしまっている。代表チームに負けて欲しいわけではないのですべての試合に勝利を祈っていますが、ただ勝ちだけにこだわっている試合を見せられると落ち込むし、悲しくなります。
それでも応援してしまうのは代表チームがひとつしかないからな訳ですが、『予選は楽じゃない』をすべての免罪符にして欲しくない。