4年前の今頃

雑誌をひっくり返していたら、ちょうど4年前のナンバープラスを見つけました。2001年6月5日発行で、ちょうど日本開催のコンフェデ直前になります。そう、サンドニでフランスに大敗し、コルドバでスペインに守りきれなかった直後の頃です。(以下は本文から引用)


連敗の意味 田村修一
フィリップ・トゥルシエが考える現在と未来「戦術か経験か」。

フランス戦とスペイン戦。ワールドカップを1年後に控えた日本が、世界のトップ20へと入っていくためのプログラムは、そのスタートから大きな衝撃を日本に与えた。2連敗という結果が衝撃なのではない。フランス戦での完敗と、その後にトゥルシエが標榜した守備重視の現実路線への転換が、波紋を呼んだからだった。
フランス戦の敗北は、日本がここまで築きあげてきた組織サッカーの崩壊だった。雨で重いグラウンドと深い芝生。スタッド・ドゥ・フランスの大観衆。試合開始早々のPKなど、日本に不利な状況が重なっての大量失点ではあった。
(中略)
だが、トゥルシエにとっては、事態はずっと深刻だった。というのは彼の日本代表がここまで拠り所としてきた60%の組織が、何らかの理由で機能しなくなったときに、30%の選手個々の能力では、中田(英)以外はフランスにまったく対抗できなかったからだった。10%の運に頼るべくもなく、シドニー五輪アジアカップで確立した攻撃のオートマティズムも、フランスには通用しなかった。立て直しは急務であった。


フランス戦から2週間がたった横浜合宿の後でトゥルシエ監督はこう語っている。

「(合宿には)満足している。選手が個々の部分で努力しなければならないということに気がついたからだ。
今、問題なのは60%の組織ではない。それは既に出来上がっている。フランス戦では壊れたが、作りなおすのは簡単だ。
それよりも力を入れているのは30%の部分。選手個々の能力をどう上げていくかだ。本来ならクラブが行うべき領域の仕事だ。
しかし残念ながら今のJリーグではそれは望めない。だからこうして2日間とはいえ合宿でやるしかない。」


ここで留意すべきは、フラット3をベースにしたシステム自体は変えてはいないことだ。たしかにフラット3は「攻撃的なサッカーを前提とした超攻撃的」なシステムではある。しかしそれは同時に「相手との力関係によって、守備的にもなりうる」ものであった。
「攻撃的かどうかは、あくまで相手との力関係の問題であるからだ」
「守備を重視する場合にもシステムは変えない。変えるのはシステムではなく選手だ。例えばサイドも、中村に代えて服部を起用すればそれだけで守備的になる。守備の安定を考えたときには、左サイドは服部と中田(浩)の組み合わせがベストだ」と。


同じ時期の2連敗でも、現在の状況とは大違いですね。もちろん予選免除の特典はありますが、それでもペルーとUAEに連敗している現在とは雲泥の差です。
また、選手起用について、次のような記述もあります。

シドニー五輪アジアカップを戦った選手たちは、2年間かけて力を証明してきた。それは決して軽んじるべきものではない」
(中略)
進歩のためには選手の入れ替えも必要だ。それがスペイン戦を前にしての「技術的にはさほどではないが、フィジカルが強く、戦える選手たち」の招集であった。

代表は順番待ちだという考え方とは非常に対照的です。

スペイン戦で日本が目指したリアリズムは、例えば来年のワールドカップで、日本の選手が1人退場になったときに実を結ぶだろう。
(中略)
だがどこかで、現実と理想の折り合いをつけなければならない。現実問題として、攻撃しなければ点は取れない。ならばどこが攻守のバランスの均衡点になるのだろうか。
「オプションは2つ」とトゥルシエ
「ひとつはアジアを戦った戦い方だ。中田(英)と小野、中村を中盤に並べれば誰もが満足する。しかし世界のトップを相手にしたら6−3か7−2で負けるだろう。攻撃サッカーを好む日本の良さが発揮されるという意味では、それが最高のやり方かもしれないが…。
もうひとつはスペイン戦のように、服部や波戸を使って接戦を演じるかだ。ワールドカップがサッカーの祭典であるならば、どちらがいいのか私にはわからない」


今の日本代表チームでは、こんな会話は夢のようですね。選手を固定して戦ってきた中で怪我人も発生し、『誰を使ったらどのように戦えるか』ではなくて、『誰がコンディション的に使えるか』というレベルですからね。いきなりDFラインが、ほとんど一緒にプレーしていない選手で組まれたりしちゃいますから、準備という点では何をやっているのでしょうね。まあ、ほとんど何もやってこなかったのですが。
それにしても不思議ですよね。あの頃はアジアカップで負けるとか全然思わなかったですし、シドニーのアジア予選でも負ける心配なんて全然しなかったですね。アジアでは負ける心配はなくて、いかに世界レベルのチームと戦うかを心配していたのですが、今はアジア予選を本気で心配してますから。予選なんて、どんなに強くても心配の種は尽きないものだとは思いますが、それにしてもひどすぎますね。