日本サッカーの箱の大きさ

いつも楽しみに読んでいる LooseBlog のいたさんの力作に触発されて少しだけ思うところを書きたいと思います。


夢の終わり、現実の強化へ -これからの日本代表-  LooseBlog


これまでの10年のような急激な成長は簡単には望めないという、大筋の意見には深く納得するところですが、私は2002年のベスト16という結果が、日本サッカーの「箱」を満たした結果だとは思っていません。確かにあの時点での日本代表にとって、ベスト16は誇るべき結果だし、良くやってくれたという思いはとても強いです。しかしあの結果はあくまでトルシエ監督が用意した「箱」と日本サッカーの「箱」の融合の限界だったと思っています。


確かにそれぞれの国によって「箱」の大きさに違いがあるでしょう。歴史的背景、国民性、人種による体格、経済格差、そんなサッカーのプレーとは違うレベルで決まってしまう「箱」の大きさはあると思います。その国がもともと持っている「箱」の大きさや性格と、招聘された代表監督が過去の実績から用意して持ってきた「箱」の容量や大きさができるだけフィットしたときに、その国の代表が輝くのではないでしょうか。


2002年のベスト16という結果は、あの時点での日本代表の「箱」の大きさとしては限界で納得の結果だったでしょう。でもそれが日本サッカーの「箱」の限界だったとは思えないのです。だから協会があの時点で監督を交代することには同意だったのですが、海のものとも山のものとも分からない監督経験のないジーコさんに任せることが信じられなかったのです。
例えば「箱」の高さが”個の力”だったとして、横幅が”組織力”だったとします。トルシエ監督の用意した「箱」は3:7くらいの横広な「箱」だったわけですね。でも本来の日本サッカーが潜在的に持っていた「箱」の大きさは5:5くらいのバランスの「箱」だったかもしれないのです。だとしたら、次期監督は各国のクラブや代表でそれに近いバランスのサッカーを展開している監督を探して連れて来るべきだったと思っています。例え何ヶ月かかったとしても。


現在のジーコ監督自身のの持っている「箱」(選手の話し合いの「箱」ではない)は8:2くらいの縦長なものでしょうか。果たしてそれがもともと日本サッカーが潜在的に持っていた「箱」の大きさや比率とマッチしているのでしょうか。例えばオシム監督が現在の千葉で繰り広げているような「箱」とどちらが日本人にフィットしていたのでしょうか。アルディレス監督の「箱」と比べてはどうでしょうか。ネルシーニョ監督の「箱」と比べてどうでしょうか。
このように比べるときに、どこかで監督をすでにやっている方ならば、何となくでも「箱」の大きさや縦横の比率の想像がつきますよね。でも、就任前の監督経験のないジーコさんの「箱」の想像はついたのでしょうか。


Jリーグが開幕してから自国開催のワールドカップまでの間、後ろも振り返らずに日本サッカーは突っ走ってきました。自国開催でのグループリーグ突破という目標を果たした後に、今までとは違う方向に「箱」を伸ばす努力はあっても良いと思います。ですがそれは今まで積み上げてきたものを破壊してまでトライするべきものではなく、現在の日本サッカーの立ち位置や特性、つまり日本サッカーが潜在的に持っている「箱」の大きさや縦横のバランスを考慮して決めて欲しかったと思っています。


監督が変わればサッカーが変わるのは日本人の国民性によるところも大きいでしょう。ギリギリの最後まで、まずは指示に忠実に従おうとするのが日本人だと思いますから。出会ってすぐに自分の主張をし、意見を述べ、話し合いをするような国民性ではないですものね。国民性の問題以前に監督が変わってもサッカーが変わらなかったら監督の存在価値がなくなってしまいます。ただ、そのサッカーの変わり具合が、日本人はより監督の指示に忠実なことにより大きなことは確かでしょう。これをもって”日本のサッカーにアイデンティティがない”と言うのはちょっと厳しすぎると思います。
もともと日本サッカーが潜在的に持っている「箱」の大きさやバランスこそが日本のアイデンティティであり、サッカー協会若しくは会長が監督選びの際にアイデンティティの抽出に失敗したことが現在の状況だと思っています。


日本サッカーの伸び代はまだまだこんなものではないし、もっと高みに到達できるはず。少なくともオシム監督が用意する「箱」に入った日本代表が、今の日本代表とまったく同じとは思えないですよね。(次の監督にオシム監督を、という意味ではなく…)
私は現在の日本サッカーにも、まだまだ発展の可能性はあると思っています。ただ、現在は協会や会長の失敗により、袋小路に突き進んでいるだけで、道を変えればまだこの先に歩むべき道はある。アテネ世代の可能性にワクワクしませんか。ワールドユースも楽しみですよね。そして現在のフル代表の選手達だって、こんなに様々な国際経験を積んだ代表選手なんて過去にいなかったですよね。
今までのように闇雲に突っ走るのではなく、冷静に道を選べば、まだまだ日本代表の「箱」は大きくなる可能性があると信じています。