役割

このお2人のコラムを読んで感じたことや、前から考えていることでもあるのですが。
オシムの「多中心」サッカー  ケット・シー さん
グラスゴーで俊輔が得た多大な利益  ジェレミー さん


まずはオシム監督の頭の中を想像すると、たぶん”ポジション”という概念は極めて薄いのではないかと考えています。試合を始める時に、ある程度ピッチ上に選手が等間隔に散らばっていないと具合が悪いとか、または基本のプレーエリアが決まっていたほうが比較的選手が重ならなくて良いとか、そんな意味での基本ポジションがあるだけなのではないか。FWとかMFとかDFとかポジションによって役割が変わるのではなくて、その場その場の状況や選手の体勢などで役割が変わるのではないか。


例えば守備の方法としてマンマークを採用した時に、DFだから守備がその選手の役割で、その役割を果たすためのマンマークではなくて、守備時にはマンマークという役割が最初に与えられていて、相手の攻撃の時は当然マンマークをするのだけれど味方の攻撃になればマークなど捨てて攻め上がって行くことが求められる。
DFだから攻撃に参加しなくていいとか、DFがまれにオーバーラップするから効果的な攻撃になるのではなくて、守から攻に切り替わった瞬間に体勢の良い選手はDFとかMFとかに関係なく、攻撃に参加しなくてはならない。
結果的に同じような場所で同じような仕事をこなしているとしても、その根本にある考え方は違うのではないか。だから3トップ気味の選手が自陣のコーナー付近にまで戻って守備をするし、後方の選手が特別なことではなく当然のように攻撃参加をする。


ポジションによって役割が変わるのではなく、ポジションに関係なく全選手の基本タスクというものがあって、その他に個々の選手に特別の役割が割り振ってあるだけなのではないか。ボリバレントとかに関係なく、全選手共通の基本タスク以外に最初に何らかの役割を割り振った選手をだいたいのポジションに置いてあるだけと言ったら言いすぎでしょうか。だからこそいわゆる本職のDFがいなくたって特に気にしない。そんなことなのではないかなと感じています。


とここまでが長い前置きで、最初のお二方のコラムに戻るのですが、そこで中村俊輔選手です。私は来年になれば怪我でもない限り中村俊輔選手は招集するのだろうと思っています。ただ、そこにはトップ下とかというポジションはなくて、司令塔とかゲームメーカーなどという特別な専門的仕事もなくて、少し攻撃に比重を置くけれど、基本的なタスクは他の選手と同じ。ただ、全ての選手が同じ基本タスクを実行しようとしても、当然個々の選手の個性や技能は表れるわけで、そこが現在の三都主選手のような個性になったりするのではないか。


例えば”司令塔”という役割が特定の選手に与えられるのではなく、守から攻に切り替わった瞬間に体勢良く攻撃に参加できている選手なら誰でもこなさなければいけない仕事であり、その時によっては攻め上がったDFが司令塔かもしれないし、下がってきたFWの選手が司令塔かもしれないし、サイドから中に切り込んだ選手が司令塔かもしれない。もっと言ってしまえばフィールド上の場所に関係なく、その場で一番体勢良くボールを持てる選手が司令塔、そんなサッカーなのではないかと漠然と感じています。


えっ、ここまで言葉を費やしてきたことは、一言で言えば『トータルフットボール』ではないかって? うーん、考え中です。