トルシエ、オシムサッカーを語る

この本を読みました。
オシムジャパンよ! 日本サッカーへの提言
オシムジャパンよ! 日本サッカーへの提言


タイトルは大層なもの「日本サッカーへの提言」などとついていますが、それでも2002年から5年の歳月は人をこうも穏やかにするものか(笑)。
本の構成としては大きく、1.ジーコ監督時代の日本代表とドイツワールドカップの惨敗について 2.オシム監督の日本代表の現状と目指しているものについて 3.最近の日本サッカーについて という、3つの構成からなっています。特にジーコ監督時代の日本代表については、ドイツワールドカップをリアルタイムで日本のテレビ局のコメンテーターとして過ごしたこともあり、日本のジャーナリストよりもよほど適格に日本サッカーの抱える矛盾について分析しているように思えます。また、ピッチ上のことは批評できるけれど、チーム内部のことは外からは分からないという姿勢を貫き、自分のことをあれほど批判したジーコ氏について一切批判していないところが監督が語るサッカー批評ですね。ところどころチクチクとはやっていますが(笑)、それでも穏やかになったものだ。


現在のオシム監督の日本代表についても随分と試合のDVDを見ているようで、現状の物足りない点と、でもそれはジーコ監督時代に国際経験を積むことができなかった世代に国際経験を積ませる期間なのだからしょうがないという擁護、そしてこれからの海外組との融合について語っています。アジアカップについてもベスト4以上の結果を求めることも必要だが、黄金世代以降の選手たちの国際経験の少なさについて、U23以下の世代はオリンピック予選やワールドユースで経験できるけれど、24歳以上黄金世代以下の谷間の世代はこのアジアカップぐらいしか国際経験を積む場所がない。だから見る側も、結果を求められる公式大会としてのアジアカップとそのような経験を積む場所としてのアジアカップという、矛盾した内容を受け入れなければならないとしています。


最後の日本サッカーについての部分では、サッカー界全体を語る前に引退した中田英選手や、活躍している中村俊輔選手などの個々の選手についての想いなどにも触れています。中田英選手に対する部分などは、当時の微妙な緊張関係などが想像できて面白いです。そんなに穏やかに話し合ったとは思えないのですけれどね。
以上、かなり面白く読めた本でした。日本を離れても、この人は日本のことを随分気にしてくれているのだなぁと思います。もちろん生活のため小銭を稼ぐ必要があるのかもしれませんが、それでも最近出てきた選手についても特徴を掴んでいるし、ある意味のサッカー馬鹿振りが変わらなくて嬉しいです。