ポルトガル - イングランド

あっという間の前半でした。体感的には15分くらいしか経っていない感じです。両国サポーターが混在する不思議な雰囲気のスタジアムで白熱した好ゲームが繰り広げられています。


前半3分、イングランドゴールキックからのロングパスを、ポルトガルコスティーニャがヘディングでGKにバックパスしようとして、そのボールを狙っていたオーウェンが、時計回りに体を反転しながら右足のアウトサイドでリカルドの頭上を破りゴール!!あっという間にイングランド先制です。狙っていたオーウェンはすごいけど、あの体勢で決めたことはもっとすごい。
これでもう試合はヒートアップ。ポルトガルの反撃はまるで後半のロスタイムじゃないかという勢いで始まります。耐えてカウンターのイングランド。両チームともこれで90分戦えるのかと心配になるようなペースです。後半ロスタイムのような雰囲気のまま、前半45分が0−1で終了します。
唯一残念なのは、前半途中でルーニーが足首を痛めて交代してしまったことだけです。攻守の切り替え、ボールへの寄せ、アイデアにあふれた攻撃、すべてが期待に違わぬ好ゲームです。


後半は前半以上のペースでポルトガルが一方的に攻め込みます。しかし、シュートは枠を捉えられません。この試合90分を通して繰り広げられているポルトガルから見て右サイドのクリスティアーノロナウドとアシュリーコールの戦いは完全にアシュリーコールが抑え込んでいます。しかし、後半38分ポルトガル左サイドからのクロスをフィーゴと交代で入ったポスティーガが見事に合わせて同点ゴール!!とうとうポルトガルが追いつきました。
ロスタイムにお互いにヘディングで惜しいシュートがありますが、そのまま1−1で90分が終了、延長戦に突入です。


すごいテンションのまま延長前半を戦います。ポルトガルが攻勢で進みますが、ラスト5分はイングランドもやや盛り返します。
延長後半、もう書けません。


死闘とか熱戦とか言葉にするのが陳腐な気がします。何で地上波はこの試合を放送しないのだろう。すべてのサッカー好きにこの試合をダイジェストではなく、原寸大で見て欲しいです。希望者全員にDVDを焼いて郵送で配布したい気分です。録画でもいいから試合を放送しろTBS!


延長後半の5分、コーナーキックからのポルトガルの惜しいシュートがイングランドゴールを襲いキーパーも対応できませんが、イングランドの誰かがこれをゴールマウスの中からクリアします。両チームの全員が『決まったか?』という雰囲気でプレーをやめかけますが、主審の判定はノーゴール。一瞬止まったポルトガル選手の足ですが、さきにこのこぼれにイングランドが反応しカウンターを仕掛けます。しかしこのカウンターを止めたポルトガルが、ルイコスタがドリブル独走からそのまま持ち込んで、ペナルティエリアの外ギリギリから豪快なミドルシュートを放ちイングランドゴールに突き刺します。ポルトガルの劇的な逆転ゴール!!
これが決まりスタジアムの選手や観客はゴールデンゴールが決まって優勝を決めたかのような雰囲気になります。しかし、この試合はシルバーゴール方式なのでまだ10分あります。


ここからイングランドの捨て身の反撃が始まりますが、ルーニーを怪我で欠いてからのイングランドの攻撃には怖さがありません。選手交代で守備を固めていたこともあり、セットプレー以外では得点できそうにありませんが、その5分後ベッカムコーナーキックをテリーがヘッドで折り返したボールを、ゴール前の混戦からランバートが蹴りこんで同点とします。あきらめずに戦ったイングランドはすさまじい。ポルトガルの逆転ゴールの時とは違ったどよめきがスタジアムを包みます。試合はこのまま終了し120分戦って2−2のドローで終了します。ここまでくるともうどちらのチームにも勝って欲しい心境です。


PK戦にもドラマがありました。先攻のイングランドの1番手はベッカムですが、たち足の芝がゆるく、ペナルティキックを大きく上に蹴り上げてしまいます。蹴った瞬間に足元を見つめるベッカム、これでポルトガルが一歩リード。しかし、ポルトガル3番手のルイコスタもギリギリ上に外してしまい、またイーブンに戻ります。それ以降両者1人も外さず、7番手のバッセルまでいきます。
ポルトガルのGKリカルドがバッセルのPKを止めますが、この時すでにリカルドはキーパーグローブを外して、素手でセーブしていました。最後はGKリカルドが自らPKを蹴りこんで、ポルトガルの勝ち抜けが決まりました。蹴る順番だったポルトガル選手が、とぼとぼ歩いてチームのところに戻るのが印象的でした。誰だったんだろう? でも、それぐらいリカルドは試合に集中し、その場の中心でした。


本当に歴史に残る名勝負でした。だからこそ放送しないテレビ局の判断が信じられません。独占放映権の獲得には視聴者にプログラムを届ける責任が伴うと考えますが、いかがなものでしょう。
しかし、本当に凄い試合でした。イングランドの同点ゴールが決まった瞬間には明け方にもかかわらず大声で叫んでしまいました。両チームの選手に感謝するとともに、イングランドサポーターには胸を張って国に帰って欲しいです。本当にありがとう。


ドラマはPKとともに 中田徹

 試合後のイングランドエリクソン監督は「PKはスキルですが、くじでもあります」と振り返った。イングランドは試合前日の練習でPK練習を行ったが、ルス・スタジアムのペナルティースポットあたりの芝生の状態が悪く、UEFA(欧州サッカー連盟)に芝生を張り替えるよう要求したがそれは結局なされなかった。

 そのPK戦で最初のキッカー、ベッカムがボールをスタンドに蹴り込むミスで失敗した。後攻のポルトガルは3番手のルイ・コスタがやはりボールをスタンドに蹴り込んだ。ルイ・コスタはセンターサークルに戻ると「なぜ逆側のゴールでPK戦をしない?」と予備審判に抗議していた。

 そんな中でポルトガルが神経戦を制した。PK戦のハイライトは、サドンデスに入りキッカーの緊張度が増した6人目の後攻、ポルトガル、ポスティーガのチップシュート。これがGKジェームスをあざ笑うように決まり、イングランド心理的プレッシャーをかけた。次のイングランド7番手、バッセルのシュートをポルトガルGKリカルドが左に飛んで完ぺきに止め、その勢いに乗ってリカルドが自らPKを蹴って、ポルトガルの勝利とベスト4進出を決めた。