日々是亜洲杯2004 「個の輝き」という危うさ 宇都宮徹壱さん

まったく同意です。なんでこういうまともな意見がたくさん出てこないのだろう。
まず、サッカーについて

現在の日本代表は、良くも悪くも個に依存したチームである。これまで幾度となく、このチームは「個の輝き」を発揮して勝利を重ねてきた。しかし一方で、けが人が出ないと選手の顔ぶれが変わらないのもジーコ・ジャパン。それはすなわち、代えの効かない「個の集団」ゆえのことではなかったか。


「組織から個へ」という大号令の下、ジーコがチームを指揮するようになってはや2年。皮肉にも現在の代表は、その「個の輝き」に依存するあまり、何とも硬直したチームになってしまったように思えてならない。無論、メンバーを固定するのも、ひとつの方法論ではある。しかし長期的な視野に立てば、そのデメリットも決して少なくないはずだ。


 確かに、今年に入ってジーコ・ジャパンは好成績を残している。ここまで13戦して11勝1分け1敗。数字だけみれば素晴らしい戦績だ。だがその陰には、累々とけが人が横たわっていることを決して忘れるべきではない。代えが効かないために、特定の選手が酷使される。酷使された選手は、やがて疲労が蓄積されてけがをする。そこで抜けたポジションに、新しい選手が起用されて……極論すれば、その繰り返しではなかったか。

怪我人袋がいくら大きくたって、そのうち入りきらなくなりますよ。


中国のブーイングについて

重慶の観客はなぜ、日本のプレーに対してブーイングしていたのですか?」
 先の日本対オマーン戦での、観客の明らかなオマーンびいきに疑問を抱いた私は、旧日本軍の重慶爆撃など知らないような顔をして、数人の記者やボランティアスタッフに尋ねてみた。結果は、あいまいな笑みを浮かべるだけで、だれもきちんと答えてはくれなかった。ましてや今回のような、政治的な問題について外国人に語ることは、きっと彼らにとっては恐ろしくタブーなのだろう。
 確かに重慶では、何人かの中国人と顔見知りになったし、彼らにはいろいろと親切にしてもらってはいる。とはいえ、そうしたシリアスな会話ができるほど親しくなったわけでもない。今さらながらに、日中両国間に横たわる得体の知れない大きな壁を痛感する。


日本の国歌斉唱の時には、案の定、というよりも予想以上の大ブーイングに包まれた。私が座っていた記者席のすぐ後ろは、一般客に開放されていたのだが、「君が代」が流れる間「ひぇえええ! ひぇえええ!」という、何とも品のない奇声が延々と続いていた。すると、隣の席にいた尊敬すべき先輩同業者が叫ぶ。
「お前ら、決勝で会ったらボロ勝ちしてやるぞぉ!」
 そう、理不尽なブーイングに対してはフェアな勝利で報いるのみ。とりあえずは、目前の対戦相手であるタイにきっちり勝つしかない。頼むぞ、日本代表!

まず、事実をありのままに伝え、その上でその問題について真摯に向き合い、深く考えるチャンスとする。ブーイングがあったことに触れないよりは、触れてその原因について思いをめぐらせる方が両国間の歴史や現在、未来を考えた上でよっぽど有意義だと思うのですが。
昨夜のNHK−BSの中継は日本の国歌の時のブーイングに対して、曲の途中で現地音声というかスタジアムの現場音声を明らかに絞ってブーイングを目立たなくしていました。微妙な問題に触れないことが報道なのですかね。