2つのイラク代表

恥ずかしながら、このコラムを読むまでそのような大会が行われていたことすら知りませんでした。
川端暁彦の「Uの世代」 求められる育成カレンダーの策定

今年で8回目(全国ユースサッカー優勝大会及び日本海国際ユース大会時代を含めると17回目)を迎える国際ユースサッカーin新潟が、7月16日から19日までの4日間にわたって新潟県内各地で開催された。大会には、地元から参加の新潟県選抜と新潟ユースに加えて、日本、イラクパラグアイ、チリの各国代表を招待。昨年度、一昨年度とこの大会に連続参加した平山相太に続くタレントの台頭に期待が集まった。

そのコラムの中で特に気になったのがイラク代表チームの活躍です。

日本代表以外では、日本サッカー協会が主導したイラク支援事業の一環として参加したイラク代表も大会の注目を集める存在だった。国内がいまだ混乱状態にある中、全国大会を実施してそこで優秀選手を選抜。2週間の合宿を経て来日してきたというイラク代表のパフォーマンスについて、私を含めた多くの者はあまり期待を寄せてはいなかったはずである。しかし、大会直前に実施された日本との親善試合でその評価は一転する。1−0で日本を破るという結果のみならず、内容でも日本を圧倒したイラクの強さは大会を通じて賞賛の的となった。初戦でU−16代表を送り込んできたチリを6−0で一蹴すると、続く新潟ユース戦もシュート40本を放つ猛攻に次ぐ猛攻で8−1と圧勝。あっさりと決勝へ駒を進めることとなった。とても急造チームとは思えぬ強固な団結力だけでなく、随所で見せつけた個々人の高いスキルと身体能力は、イラクが21世紀においてもアジアのサッカー強国であり続けるであろうことを強く示唆するものであった。

残念ながら(?)決勝では日本代表に敗れてしまったようですが、同じアジアのサッカーファミリーの一員として、日本の存在が若いイラク選手達の強化の手助けとなるのなら嬉しいことですね。この件に関しては日本サッカー協会、グッジョブ!


一方でイラクのフル代表もアジアカップで踏みとどまっていますね。
日々是亜洲杯2004 強豪たちの復活 宇都宮徹壱さん

さて、同時刻に成都で行われていたイラクサウジアラビアの試合は、イラクが2−1で勝利してグループ2位抜けを決めた。初戦でウズベキスタンに敗れながらも、短期間にチームを建て直し、残り2試合を連勝したのは見事と言うしかない。今後は、間近に迫ったアテネ五輪との兼ね合いが気になるところだが、中国との準々決勝もエキサイティングな試合内容が期待できそうだ。

イラク、サウジ破り8強 スポニチ

イラクが優勝3度を誇るサウジアラビアを破り、C組2位で準々決勝へ進出。男子の五輪出場に続く快進撃は、復興を目指す国民に朗報となった。試合は後半6分に先制。6分後に追いつかれたがあきらめなかった。後半42分、左からのシュートはGKにはじかれたが、詰めたマハムドが押し込んで、これが決勝点。選手たちは「謝謝、成都!」と書かれた横断幕をなびかせ、観衆の拍手に応えた。

グループリーグの初戦を落としたチームが、中3日という短い期間でチームを建て直し、2連勝して勝ち上がるのも簡単なことではないでしょう。
今大会のベストマッチを堪能する 宇都宮徹壱さん

■完全復活を遂げつつあるイラク

 トルクメニスタンイラクの一戦は、これまでアジアカップで観戦したゲームの中でもベストマッチと呼べる、実にスリリングで感動的なものであった。
(中略)
攻め立てるイラク、耐え忍ぶトルクメニスタンという構図がしばらく続いた後、再びスコアが動いたのは81分。イラクの右サイドの起点となっていたマハディ・カリムのクロスに、途中交代のアハメド・マナジッドがダイレクトで反応する。弾道はバーをたたくが、エースストライカーのラザク・ファルハンが確実に詰めていた。これで2−1。それまでイラクに声援を送っていた成都市民は、喜びのあまりウエーブを始めて、スタジアムは一時騒然となる。
 しかし、試合はまだ終わらない。85分にはクリイェフがFKを直接ゴールにたたき込み、再びトルクメニスタンが同点に追いつく。イラクの気迫もすごいが、1人少ないトルクメニスタンも決して勝負をあきらめない。何という気迫のみなぎった試合なのだろう。ああ、成都にやってきて、本当に良かった。

 そして88分、ついに劇的な大団円が訪れる。コーナーキックのチャンスを得たイラクが、さながら「ドーハの悲劇」を彷彿(ほうふつ)とさせるショートコーナーからゴール前に絶妙なクロスを供給。これをクサイ・ムニルが押し込み、土壇場でイラクが難敵トルクメニスタンを振り切った。
 タイムアップの笛が吹かれた瞬間、死力を尽くして戦った両チームに対して、スタンドから盛大な拍手と歓声が送られたことは言うまでもない。

私も今年の2月12日に国立競技場で実際にイラク代表を見ているので、よりいっそう思い入れが強いのかもしれません。あの日の国立では、チームとしての準備期間がほとんどないであろうと思われるイラク代表が、すばらしいサッカーを展開していたのを昨日のようにはっきり覚えています。明日がどうなるか分からない混乱した国情の中で、強い精神力を発揮し戦い抜く姿には素直に頭が下がります。大会直前に起きた監督問題のゴタゴタも乗り越えて勝ち進むイラク代表ですが、次は開催国中国との試合となります。どんな試合になるのか目が離せませんね。