敗退決定後の監督会見

会見の中で『自分の責任です。』と言えば責任を感じていたり、監督の努めを果たしているとは言いませんが、どうも両者の会見に感じる印象が違うのですよね。


アメリカ戦後 女子代表上田監督会見

――オフサイドのように見えた決勝ゴールの判定については、どう感じていらっしゃいますか?

 今日のゲームで、選手たちはベストを尽くして、非常によくやってくれたと思います。2点目のオフサイドトラップについては、これまでトレーニングでもやってきましたし、私もそういう指示をしました。しかし、オフサイドの判定はレフェリーがするものですし、私の位置からも分かりませんでしたので、それはしょうがないと思っています。ですから、戦術面での責任は私にあると思っています。


――アメリカとの真剣勝負ということでしたが、力の差についてはどの程度違ったのか? また、この2年間を選手たちと過ごしてきて、戦いを終えた今の総括を教えてください

 2年間やってきた中で私としてはベストを尽くしましたし、選手たちもベストを尽くしてくれました。そして、選手達は進歩してくれたと思います。ただ、アメリカとの差というのは、まだ依然としてあると思っています。この先、この差を埋めるために女子サッカーは努力していかないといけないと思います。


イタリア戦後 男子代表山本監督会見

今日の試合の結果によって、このオリンピックの決勝トーナメントに進出することができなくなってしまったわけですけれども、この大会で選手が見せてくれたパフォーマンス、勝負に対する執念というのは、われわれはこのアテネ経由でドイツに行くということを目標としてきましたので、そういう意味では戦う姿勢を見せてくれた選手たちに対して感謝したいと思いますし、これからが彼らにとって、本当に大事な2年間になると思います。

 ここに来ないと感じられないことがたくさんあったと思いますので、努力して、前を向いて次につなげていってほしいと思います。まだ、もう1試合ありますので、次につながるような試合がしたい、そう思っています。

 内容的にはわれわれが見せたサッカーというのは、十分世界に通用するということを証明できました。立ち上がりの1戦、2戦についてもそうなんですけれども、ハイ・ローのパフォーマンスで相手が動ける時間帯の部分、それとペナルティーエリアペナルティボックス内でのプレーの質を改善していかないと、なかなか世界にはついていけないなということを、今日は感じました。


――パフォーマンスとしてはいいものが出せたとおっしゃられましが、試合の結果がついてきませんでした。うまくいかなかった点というのはどういうところでしょうか?

 立ち上がりの早い時間帯の失点によって、プランが崩れてしまったということ。少なくとも0−1で行きたかったんですけれども、0−2まで行ってしまったことでプランが崩れたということが、ひとつあります。あと、クロスが入ってしまった時のペナルティーエリア内での高さの質ということを考えると、まだまだ足りない部分が実際にあると感じました。これがこれからの日本の課題だと思います。あれだけ高速で精度の高いクロスが入ったときのペナルティーエリア内での対応、われわれが攻撃になった時のペナルティー内でのキックチャンスの生かし方、そのプレーの質を改善していくことが日本サッカー全体にとって大切な課題だと思っています。

――4バックを採用した理由を教えてください

 相手が高い位置でサイドを突いてくるためです。要するに、われわれの弱点というのはサイドにあって、DFのサイドバックが開いたときに、どうしても人が足りなくなって数的不利な状況を作られてしまう。そのため、サイドの強化という意味で4バックを採用しました。今考えると、徳永の早い時間帯でのケガというのもありましたし、その質の差が出てしまったかなと思います。


会見の言葉の一部だけを切り取って比較するのはフェアではないし、あくまで私個人が受ける印象の話です。
上田監督は対戦国との力の差、優劣を綿密に分析してきて戦い方を考え、それにしたがって戦った結果負けたのだから、戦術的な敗戦の原因は私にある、と言っているように感じるのですが、山本監督の話からは監督の戦略というか監督の戦いについての印象があまり感じられないのですよね。もちろん試合の主役は選手達なのですが、どうも山本監督も一緒に戦っているようには感じられず、傍観者のような指導者のような…どうもそういう他人事感が感じられてしまうのです。


選手達の成長を促すために答えは言わずに選手達自身で見つけさせる、このような山本監督の発言をよく耳にしましたが、本大会でもそれを実行してしまったのでしょうか。U−23という世代は選手の成長に期待する世代なのでしょうか。イングランド代表のルーニー選手は今いくつですか。エリクソン監督はルーニーにも答えを見つけさせているのでしょうか。オーウェン選手がワンダーボーイと言われていた時はいくつ?


どうしてもきつい言葉になってしまうのですが、上田監督と山本監督をくらべた時に監督としての目的、『与えられた選手』と『与えられた時間』の中で最良の結果を残す、という仕事にどちらが真面目に取り組んだのかが一目瞭然と思えてしまうのです。いくらU−23とはいえ、ほとんどの選手がプロだったわけですから、戦っていく過程の中で選手が成長することがあっても、選手を成長させることが目的、特に代表監督の仕事ではない。山本監督はどこかでこの部分を勘違いしてしまったようでなりません。
協会が山本監督に与えた使命の内容がわからないので、選手の育成が第一目標だった可能性もありますが、常識で考えればオリンピックでそんなことするわけないですよね。試合開始の笛が吹かれてしまえば、あとは選手達の戦いになるわけですが、そこに至るまでの準備とその結果のピッチ上の選手達の役割の整理や意識の統一が図れていたのかどうか後悔は尽きません。
女子が敗退した直後の『悔しいけれどやるだけやった』という印象と男子が敗退決定した直後の『不完全燃焼感』の差はこの辺から来ているような気がしてなりません。