安全運転 or 無謀運転

今回の事前合宿への選手の招集の仕方や、2004年の日本代表の戦い方で感じていることがあります。
自動車運転免許を取得する時に、教習所で『かもしれない運転』って言われましたよね。細くて見通しの悪い路地を運転する時に、「子供が飛び出すかもしれない」、「自転車が飛び出すかもしれない」、「車が出てくるかもしれない」、そんな危険が潜んでいるかもしれないから安全のためにスピードを落として徐行運転しなさいってことでしたよね。


で、私は普通の人間ですから見通しの悪い路地はスピードを落として走ってしまうわけです。でも、本当に子供が飛び出してきたことなんてほとんどありません。それでもやっぱり私は明日も見通しの悪い路地は徐行してしまうでしょう。


でも、世の中にはそんな路地でも例えば100キロで通り抜けていく人がいるかもしれません。まわりから見ていると危なくてしょうがない運転ですが、本人は危険だと思っていないかもしれません。で、事故が起きなければその人のほうが先に目的地に着くわけです。そんな運転を繰り返していればいつかは事故を起こしてしまうでしょう。でも、とてつもなく運がいい人や、常人には想像もつかないような動体視力や運転技術を持っている人は最後まで事故を起こさないかもしれません。そういう一握りの人が世の中で成功するのかもしれません。


今の日本代表の戦い方はどうも後者に思えてしまうんですよね。一次予選は全勝で通過した。結果は出ている。アジアカップは優勝した。結果は出ている。どうだ文句があるかってね。
確かに今年一年間は事故を起こさずに路地を通過しました。来年の最終予選でも事故を起こさずに見通しの悪い路地を通過できるかもしれません。でも私から見るとそれはただ単に運が良かっただけで、常に事故を起こす危険と隣り合わせの運転で、事故が起きる可能性を少なくする運転ではなかったと思います。どんなに安全運転をしたって事故を起こす時は起こしてしまうでしょう。でも、日頃から安全運転を心がけている人と、路地を100キロで駆け抜けていく人の、どちらが事故を起こす可能性が高いのか、どちらが事故を起こさない可能性が高いのか。また事故が起きた時に被害を小さくできるのはどちらなのか。


ただ、こんなことを言ってもサッカーは勝負事ですから弱肉強食の世界、事故を起こす奴は運が悪いのさ、という考え方もあるでしょうね。それは分かるし『俺は絶対に事故を起こさない』と信じて見通しの悪い路地を100キロで通り抜けていく人間が結果として勝利者となるのかもしれません。
でも、それでいいのかなと思ってしまうんですよね。安全を追求しつつできるだけ早く目的地に着く方法を考えなくていいのか。『早く着けばいいんだろう、事故を起こしたら俺が責任をとるよ』と責任者が開き直っていいのか。安全性と目的地に早く着くことを両立させる努力はしなくていいのか。今の日本代表周辺はこの努力をしているのですかねぇ。