必然に満ちた準決勝 東京ヴェルディ1969対ガンバ大阪 宇都宮徹壱さん

毎回楽しみにしている宇都宮さんの天皇杯漫遊記ですが、あと1回しかないのですね、残念です。でも、長居の観衆が7000人ちょっとしかいなかったのは言わない約束で。だって、わざわざ準決勝を関西でやった意味が本当になくなっちゃうから。もともとヴェルディもここ最近は集客力があるチームではありませんが、準地元のG大阪が残っているのにあの観衆は寂しい限りでした。あれなら準決勝の2試合は国立と味スタ(埼スタと国立でもいいけど)でやって欲しかったですね。それでも1万人に達しないかもしれませんが。

ところが長居スタジアムに到着したとたん、私は自らの判断を早くも後悔し始めた。というのも、お客さんがあまりにも少ないのである。何しろ、バックスタンドの座席に描かれている「OSAKA」の文字は、そのまま見えるくらいガラガラなのだ。
 のちの主催者発表では、今日の観客数は7202人。準決勝なのに、地元のガンバが出場するのに、そしてこんなにいいお天気なのに、なぜ大阪の人々はスタジアムに集わないのだろう。


それとJ's GOALの会見コメントでも気になっていた移動についての質問は宇都宮さんだったのですね。気の利いた質問をする記者もいるものだと、感心していたのですが。これはヴェルディのサポはたぶんみんなが思っていた不公平感だと思いますが、監督の回答が聞けて嬉しかったですよ。決して本心ではないかもしれませんが、そのことに記者会見で触れるのか触れないのかは大きな違いです。宇都宮さん、ありがとう。
少し長いのですが、引用させていただきます。

一方、見事ファイナリストとなったヴェルディ監督・アルディレスにとって、今日の勝利は最高のクリスマス・プレゼントとなったようだ。晴れやかな表情で会見に臨む監督に、私はかねてから抱いていた疑問をぶつけてみることにした。
「今大会のベスト4のうち、ヴェルディだけが長崎とか大阪とか、遠征ばかりを強いられていました。こうしたレギュレーションの不公平について、思うところはありますか」
 てっきり、何がしかの不満が出てくるものだと思っていた。しかし知将の回答は、とてもおだやかでウイットに富んだものであった。

「こういったレギュレーションであっても、私としては受け入れざるを得ません。決勝がたとえヨーロッパで行われたとしても、われわれはそこに行って戦います。ウチは移動には慣れていますし、そういう環境の中でもいいスピリットを見せられる選手がいますから。それに『日本を知る』という意味でも、(こうした遠征は)いい経験だと思います」
 そう語って、にっこりと微笑むアルディレス。実のところ私は、これまで目前の指揮官をあまり高く評価していなかったのだが、この一言で見方を大きく変える必要に迫られることになった。与えられた状況(=レギュレーション)に対して、不満を抱くどころか、それを前向きに捉え、まるで楽しむかのように困難をチーム一丸となって打開していく。そこに私は、今のヴェルディの底力を強く感じるのである。

監督としての経験の多さ、懐の深さが感じられるコメントですね。


大いに満足の宇都宮さんのコラムですが、それだけは言わないでください。

もし現・日本代表監督が、このゲームを観戦していたならば、きっと多くの有意義な発見があったのではないか――と。たとえば、前半にゴールを決めた小林慶と平本、そしてアジアカップではまったく出番のなかったキャプテン・山田卓也の献身的なプレー、さらには三浦淳宏を押しのけて左サイドに定着した、相馬の精度の高いクロスと縦へのスピード、などなど。
 この天皇杯におけるヴェルディの戦いぶりを見る限り、ジーコ・ジャパンをパワーアップさせるためのヒントは、いくらでも見つけることができたはずだ。もちろん、祖国でクリスマスを迎えたいという気持ちも分かる。だが、何とももったいない話ではある。

ヒントというものは、見つけたいと思っている人にしか見つけられないものだと思います。現代表監督が見つけようと思っているかどうかはわかりませんが。