フットボールニッポン 川淵インタビュー

VOL9 2004冬号に掲載されている川淵会長のインタビューですが、本当かなと思う部分について紹介します。

(加茂監督の交代劇についての話の後に)
今でこそ言えるけど、トルシエ、辞めさせてくれっていうのも相当あったんだよ。強化委員会から。技術委員会から。全部おれのところで止めていた。おれが直接責任者じゃないんだけど、みんなぼくのとこへ最後、そういう嫌な話をもってくる。本当に人を辞めさせるというのはすごくエネルギー使うし辛いんだよ。そのくせ、何も事情を知らない外野は『勝手に決めた』とかいうからアタマにくるんだよね。おれが勝手に決めるということは絶対ないんだよ。必ず技術委員会からいろいろ言ってきて、こういうとこは問題あります、こういうことも問題で、だから、ちょっとこのままじゃ苦しくなりますというようなことを言ってきて、それを聞きながら、最後は決断するということであって、おれが独断専行でやるなんてことは一度もないのよ。ジーコを決める時だって手順は踏んでンだよね、一応は。

トップが決断するという時は多かれ少なかれそういうことだとは思うのですよ。ただ、そこに論理性というか多くの人を納得させられる普遍性のようなものがあるのかどうかが問題なわけで。
もちろん一般社会でも、急成長する企業のトップは常人が考え付かないようなことを思いついたり、普通の人が怖くて決断できないようなことを勇気を持って決断するから他の人と違った結果が得られているとは思うのです。でも、サッカー協会の会長に求められている決断は、そのようなギャンブル的にリスクを背負いつつ博打にでるような決断なのかどうかというところです。一国のサッカーが成長するには多くの人の縁の下の努力と、トップに立つ人の方向性を誤らない舵取りが必要なわけで、今回のジーコ監督の就任は誤った方向に進んでいませんかね、そこが疑問です。


トルシエさんの解任を本当に川淵さんがおさえていたのか、当時の会長だった岡野さんがおさえていたのか、それとも多数のサポーターが支持していたから解任を避けられたのか、真実を知るすべはありません。でも、私の印象は、『川淵さん、あなたトルシエ嫌いだったでしょう』という感じです。

今度のジーコとの関係だって、契約の最初に『ジーコがダメなときは、おれの口から辞めてもらうって言うから』と言った。ジーコも『自分がもうダメだと思ったら、自分の口から辞めさせてくれってちゃんと言います』と言った。そういうところからスタートしているから、例えば最悪の場合になったら、おれが言う前に絶対ジーコから言ってくるなって感じはあるわけ。おれがジーコを呼びつけて、無理やり辞めさせようなんていう事態には絶対にならないと思うね。そういう太い絆が2人の間にはあるんだよ。

ここについても、結局のところジーコ監督の実現しているサッカーを信頼して支持しているわけではなくて、一個人としての川淵とジーコという人間の信頼関係を強調しているだけですよね。ここでももちろんパートナーとして一緒に仕事をする場合に信頼関係が大事だという一般論は理解できます。ですが、実際にピッチ上に現れているプレーとしての現象や結果に対して、人間性と同様に信頼し支持しているのでしょうか。協会会長と代表監督の関係は純粋にサッカーでの問題に割り切って欲しいですね。


実際にこのインタビューの後半で、現在のチームは守備の構築が何となく変わってきて、攻撃の面白みはこれから加わってくると思っていると語っていますが、守備を何となくしか変えられない監督がどうして攻撃を構築できるのか、そう思える根拠が大きく疑問です。単なる希望的観測なのではないでしょうか。
現実問題として残された時間は短く、もう打つ手はほとんどありません。こんなことを書いたって、何が変わるんだという思いもあります。でもね、やっぱり自分たちの選択間違いを棚に上げて、自分の正当性だけを主張させると腹が立つ。本当に今のサッカーで2015年に日本代表チームは世界でトップテンのチームになれると思っているのでしょうか。世界でトップテンの経済力のあるサッカー協会にはなれるでしょうが。