ドリブラー ヒデ

日本人のサッカー選手の中でとても好きな中田英選手なのですが、私の中で一番大好きな彼のプレーはドリブルをして前に突き進んでいる姿です。
中田選手のプレースタイルというと、どうしてもパスの出し手としての印象が強いと思います。トップ下やボランチで彼がパスを出している姿の印象が強い方が圧倒的に多いでしょう。


たぶん彼のサッカー哲学の中でも自分がボールを持った時のプレーの優先順位は、

  1. 決定的なチャンスになるところにいる味方選手(FW)に対するキラーパス
  2. 前方のパスの受け手がマークされている時は、横にいる味方選手(MF)に対するつなぎのパスを出してすぐ次の受け手となるように自分が前に動く
  3. 前や横の味方選手がカバーされていてパスの出しどころがないときに、しょうがなく前に向かってドリブル

こんな感じでしょうか。常に効率よく味方の最大のチャンスを狙っているのでしょう。だから効率的ではないドリブルという選択肢は、優先順位がきっと低いのでしょうね。でも、ドリブルをしている彼が好きなのです。


首を振って周りの状況を確認したあと、前を力強く見据えて、自分で行くんだという決意を固めて、背筋をスッと伸ばして、安定した重心の動きでボールを前に運んでいく。相手がアプローチしてくる少し前にペナルティエリアの外側から強烈なミドルシュートを放つ。
が、バーを叩く。そうなんです、ゴールはなかなか決らないのですが。


ジョホールバルでのアジア第三代表決定戦の延長後半。イラン陣内でボールを持った彼は外し続けるFWに痺れを切らしたのか相手ゴールに向かってドリブルを始めます。延長も後半に入って動きの重くなっていた選手の中で彼だけが動いているかのようでした。シュートはGKに弾かれましたがこぼれを岡野選手が流し込みました。


ローマでの優勝争いの中、ユベントスとの直接対決で2点をリードされた後半、途中出場した彼はユベントス陣内でボールを奪うとドリブルを開始し強烈なミドルシュート。決めた後の『ヨッシャー』という口の動きは忘れられません。2点目も彼のミドルシュートのこぼれを押し込んで、ローマはスクデット獲得に向けて貴重な勝ち点1を獲得しました。


日本が準優勝したコンフェデレーションズカップセミファイナル。彼のFKで先制したものの退場者が出て後半は自陣に押し込まれっぱなしの日本の中で、数少ない攻撃は彼のドリブルだけでした。自陣ゴール前に釘付け状態の味方からボールを受けた彼はセンターサークル付近から猛然とドリブルを仕掛けます。だってパスを出す味方選手が前にいないから。その孤独に戦っている彼の姿を見ていると、なぜか涙が出てきそうなほどでした。


そしてワールドカップのロシア戦。後半にロシア陣内でボールを持った彼は短いドリブルの後に強烈なミドルシュートを放ちます。シュートは惜しくもバーに弾かれましたが、バーを叩いた音が耳の奥に残るような強烈なシュートでしたね。


このように私の中でヒデはドリブラーなのです。もし、現在の日本代表の間延びした中盤の中で、彼がいたずらに消耗するだけで効果的に使われないのであれば、2トップの下がり目というか、1.5列目でFWのように使って欲しいですね。
押し込まれて、自陣に深く下がって守るのなら前には広大なスペースがあるのだから、ヒデのあのドリブルを見てみたい。もちろん強烈なミドルシュートが今度こそネットを揺らすところも。