オジー記者会見の表裏

相変わらずヴェルディに対する厳しい愛情あふれる湯浅さんのコラムですが、内容も面白いですがアルディレス監督の記者会見を読み解く補助手段としてヴェルディの公式ページと読み比べると面白いです。


アナタが言ったことは正しいと思うよ・・ところで、何て言ったんだっけ・・??  湯浅健二さん

それは、私の質問に対して一通りコメントを述べたオジーが放った最後の(ウイットにあふれた?!)一言でした。記者会見での私の質問は、こんな内容だったハズです。「今シーズンのヴェルディは、ワシントンも加入したし、いまやっているサッカーの内容的にも確実に優勝候補だと思う・・この試合での前半の出来も素晴らしかった・・ただ、リーグ優勝するためには問題もある・・オジーさんは、しっかりと守備が出来ていたと言っていたけれど、私はそう思っていない・・マリノスは、流れのなかでしっかりとチャンスを作り出せていた・・逆に言えば、ヴェルディ守備ブロックが崩されるというシーンの方が多かったということ・・それは、(中盤プレイヤーたちのマークが甘ということで!)二列目からの飛び出しをうまく抑えられていなかったから・・長いシーズンでリーグ優勝するためには守備をもっとしっかりとしなければならないと思うけれど、どうですか?・・質問が長くてスミマセン・・」。

 それに対してオジーが、開口一番「アナタの質問は、(いつものように!?)私の答えよりも長いよネ・・いまの質問、よく分からなかったからもう一度お願いします・・」なんて応酬する。アハハッ!


アルディレス監督の記者会見の模様 公式パージ

ディフェンスが良かったと言いましたが、2列目から上がってきた選手に対するマークについてどうお考えですか?

公式のページではこんな短い質問になってしまうのですね。


それに対する公式ページでのアルディレス監督の答え

マリノスが公式戦をすでに3試合プレーしているということが感じられました。我々にとって公式戦は初めてです。だから、ヴェルディのプレーの精度が低いという姿も見られました。特に、中盤でパスの精度が低くて相手にボールを渡してしまうという所があったと思います。だからこそ、最初に言ったようにマリノスの方がボールをキープできてたと思います。通常はそうはなりません。ゴールチャンス、どちらがゴールに近かったか、得点に近かったかと言えば、ヴェルディの方が危険な場面を作ることができたと思います。そして、ワシントンがチームに入って、ワシントンと一緒にプレーするということに今なり始めている段階です我々の理想のコンディションにはまだほど遠い状態です。でも、この勝利は必要でした。最終的には、運に任せなければいけないPK合戦に勝ったのですが、どういう形であれ、勝つことによって選手に自信がつきますし、それが良い雰囲気を作ります。自分たちが目指しているサッカーを今日は実践できなかったと思います。でも、いきなりそれができるわけではないと思います。徐々にそういうサッカーができるようなると思います。この試合の分析はもう一度、月曜日、選手達とやります。今日と明日は祝う為に使いたいと思います。月曜日はしっかりミスを分析し、そこを修正したいと思います。言われたことはその通りだと思います」


湯浅さんの同じ質問に対する解説

 まあ基本的にオジーは、私が聞きたかったことに直接答えるのではなく、こんな意味のことを羅列していました。「今シーズンのマリノスは既に我々よりも多くの実戦を経験している(A3のこと?!)・・たしかにマリノスの方がボールをキープできていた・・ただし、どちらの方が得点に近かったかという視点ではヴェルディの方がよかった・・ワシントンについては、確かにまだコンビネーションの精度を上げていかなければならない(イメージシンクロのレベル?!)・・勝つことによって自信を深められ、そのことで、自分たちが目指すサッカーに近づくことができる・・このゲームの分析は、月曜日に落ち着いてやることにする・・この週末は、とにかくセレブレーションだゼ!!」なんてネ。そしてその最後に冒頭の言葉をつなげたというわけです。

 このオジーの発言では、最後の「ゲーム分析は月曜日に落ち着いて・・」というクダリが大事だと思っていた湯浅です。基本的に彼は、「何を言ってやがる・・ウチの守備はうまく機能しているんだよ・・一体オマエはどこに目を付けているんだ・・」なんてことで、「冷静に」憤っていたのだろうけれど(もちろん、ディベートのキッカケになるような反論が私の質問の意図!)、最後は、ここで意見を戦わせるのではなく、とにかくビデオでのゲーム分析をしてからだ・・とまとめたところが、冒頭の「イヤミ」も含めて、素晴らしく冷静でインテリジェンスあふれる対応だったと思ったわけです。


私が感じていたヴェルディ守備ブロックの問題点とは・・。具体的な現象としては、マリノス選手たちが「比較的頻繁に」ヴェルディゴール前の決定的スペースや、最終ラインの前の二列目スペースにフリーで入り込んでいたということなのですが、その原因として、二列目や三列目からのボールがないところでの飛び出し(動き)に対するマークイメージがうまく機能していなかったという事実を挙げたわけです(質問は、舌っ足らずだったけれど・・)。

毎回記者会見をこのように解説してくれると、質問の意図と監督の考えがよく分かりますね。


それと今回の湯浅さんのコラムの中で、試合の内容についてではありませんがこの部分が印象的でした。

 私はその発言の背景に、「 I understand (what you are telling...), but I don't agree...」という、ディベートという実効コミュニケーションの価値をしっかりと理解する人々に共通する本質的な態度(姿勢)をみていたというわけです。

私も他者のコラムを引用したり他者の意見に反応して意見を述べたりしますが、相手の真意を汲み取る努力もせずに反論することのないように注意しなければいけませんね。相手の意見をよく理解した上で、『私はこう思う』ということはあっていいことだし、議論をぶつけあっても同意しないことは多々あります。ただそれはまったく無価値かと言うとそうではなくて、お互いの違う意見に対する理解が深まり、その違いを認識できれば半歩前進だと思っています。