イラン - 日本

helguera2005-03-25

ホテルを出発しアザディ・スタジアムへ向かう。
相変わらず、日本人バスの注目度は高い。ただ、街中では友好的だった対戦ムードもスタジアムに近づくにつれて殺気を帯びたものになってくる。バスに近づいてきて、挑発的な態度を取ったり、バスの窓を叩いたり。スタジアムの敷地内は入場できなかったイラン人が家に帰る流れに逆行してバスが進むことになるので、かなりヤバイ雰囲気だった。
ただ、窓の隙間からツアーの女の子に電話番号を書いたメモを渡してくる男には笑えたけど。


バスはスタジアムの入場ゲートまで乗り入れた。横付けというより、乗降口が入場ゲートの中に入るぐらい乗り入れた。まるで選手になった気分だ。それでも日本人めがけて石が飛んできたけど。
15ドルの入場券を渡してスタンドに入った。スタンドまでの通路はかなり長いトンネルでそこを抜けるとすぐにゴール裏だ。席はゴール裏正面の1階席だが、左右はイラン人席だ。もちろん挑発的だが日本人は反応しない。一階席の前方は2階席から物が飛んでくるし、後方は2階通路から液体が振り撒かれる。自分が座ったのは後方だが金網が張ってあるので、物は飛んでこない。まあ、何か投げられることくらいは予想していたけれど。


試合についてはテレビで見ていた人のほうが詳しく分かると思う。掲示版は見えない位置だったし、アナウンスは現地語だし、それでも選手の名前は分かるのだが10万人の歓声にかき消されてまったく聞こえない。交代して入ってきた選手はその後のプレーを見れば分かるが、アウトした選手は想像でしか分からない、そんな状況だった。
それでも、日本の左サイドが機能していないことは感じた。中村、三浦選手とも足元でもらってから勝負するタイプなので、左サイドからの攻撃はほとんど機能していないように見えた。ボールが入っても足元だし、走るわけでもないのですぐに囲まれて潰されてしまう。左からチャンスが出来る気がしなかった。


一方の右サイドは日本の唯一の希望に思えた。右の前には常にスペースがあったし、中田選手がタメを作れたときは外側を加地選手が駆け抜けられるし、中田選手が中に入ったときはそのまま素直にスペースが出来る。なんでもっと右サイドを攻めないのだろうと思ったくらいだ。
先発のFW2人は何とも言えない。ボールが入ってもなかなかマイボールに出来ないし、裏に抜けるようなパスも出ない。先発のFWは機能していたのだろうか。


守備については日本の左サイドはやられ放題だった。特に中村、三浦、小野選手のサイド、ボランチのエリアはイランのスピードに乗った攻撃をほとんど受け止められないように見えた。何とか宮本選手がカバーして防いでいるようだった。
一方の右は加地選手が頼もしく見えた。中田、福西選手も守備力のある選手なので、その3人で何とか防いで、最後は中澤選手が止めるという形ができていたように思う。
どちらにしろ、中盤をフラットに4人並べるやり方は日本にとって機能したのだろうか。


試合が始まってからのイラン人の挑発はさらにエスカレートしていった。
試合開始前からのイラン人の盛り上がりも凄かったが、どうやら5時間前から入場していたようだ。15時30分ころスタジアムに入場したのだが、そのときにはイランサポーターは満員だった。スタジアムを1周3秒で回るかのような高速ウェーブ、メインとバックが交互に立ち上がってイランと叫ぶ応援、そして圧巻は全員が体を前後に揺すって分けのわからない昆虫のような動きをする応援だ。これは見ていると酔うんじゃないかと思うくらい気持ち悪かった。そして各応援の最後はブーイングとも口笛とも言えぬ昆虫が羽根をこするような“キィーン”という不気味な音が凄かった。これはテレビで伝わったのだろうか、何とも表現できない音だった。


試合が始まり、イランが先制すると挑発がエスカレートした。2階席から爆竹が投げ込まれ日本の女性サポーターが火傷をしたようで応急処置を受けていた。ゴミや果物やペットボトルが投げ込まれるのは当たり前で、自分も水か何か液体をかけられた。日本が同点にすると一瞬は静まり返ったが、イランが勝ち越したときは凄かった。それでも、やり返せないことが悲しい。相手を黙らせるのは日本が得点をして勝つことでしかできないのに。試合終了後もかなりの数のペットボトルが投げ込まれて、何人か怪我をしたらしい。


試合終了後、ゲートにつながるトンネルで小1時間待機した。イラン人が退場するのを待って日本人がバスに乗り込んだ。スタジアムを出て空港に向かう道は大渋滞で、イラン人はハコ乗り中央分離帯、歩道から熱烈に日本人のバスを挑発しながら見送ってくれる。それでも何もやり返せないのが悔しい。本当に相手を黙らせるのは日本が試合に勝つことでしか実現できないのに。


空港に着くと次の北朝鮮戦に向かうイラン選手が次々と到着して飛行機に乗り込んでいった。弾丸ツアーの飛行機が飛ぶのが午前2時、日本選手たちは午前3時30分の飛行機で成田に飛ぶようだ。選手たちには会えないが、次のバーレーン戦で頑張ってもらうしかない。どこかのテレビ局ではないが、30日のバーレーン戦が本当に『絶対に負けられない戦い』になってしまった。