アジアの個、世界の個

ワールドカップ予選を通過していよいよ本大会を見据えた強化が現実のものとなりました。紆余曲折、賛否両論あるジーコ監督の日本代表チームですが、本大会での試合を占えるコンフェデという実戦を間もなく迎えます。
予選通過を決めたことにより、ここのところテレビで予選を振り返る番組が多数ありますが、昨夜もNHKサンデースポーツの中で、宮本選手と中田英選手のインタビューを中心とした番組がありました。宮本選手の発言はある意味キャプテンらしい、模範解答的な発言でしたが、中田英選手の発言はこれまたキャプテンらしい、それもドゥンガのようなタイプのキャプテン的発言でした。


本来ならチーム内の憎まれ役は監督なりが一手に引き受けて、そのかわり強引にチームを同じ方向に向けるのがいいと思いますが、ドゥンガ的キャプテンもありなのだろうとは思います。ただ、このやり方はチームが空中分解する危険性を常にはらんでいるやり方のように感じます。チームがドゥンガの言うことを聞かなくなった瞬間に終わりますよね。『もっと高い位置でボールを奪って、もっと攻撃しようぜ!』と叫ぶドゥンガに対し、他の選手が『この相手には攻められない、下がって守ってカウンター1本しかできないよ…』と考え始めたら、その瞬間に内乱が勃発して空中分解です。
まあ、そんな事態を未然に防ぐ為にも、「1対1で負けない強さを身に付ける」という言葉が出てくるのだと思いますが、果たしてこの「1対1で負けない強さ」というのは、たった1年で身につくものなのですかね。


アジアの中で戦っている限り、日本の個はそう簡単に負けるものではないでしょう。同格かやや部が悪いと思わされる相手は、イラン、韓国、サウジアラビアあたりでしょうか。それ以外の国と戦うときは、個の力で負けると思う国はそうはないですよね。守備の場面であっさり突破されてしまったり、攻撃時にボールをつなげないほどのプレスを受けることもないでしょう。そういう意味で言えば、アジアでの戦いは選手の自主性と話し合いでも何とかなりました。


しかし、これから本大会を見据えたときに、本大会のグループリーグの対戦相手で日本の選手が個で勝てる相手というのはどれくらいあるのでしょうか。プレワールドカップとしてコンフェデをとらえた時に、メキシコ、ギリシャ、ブラジルと対戦国を考えると、個の力、1対1で勝てる相手なのですかね。
良くて同等というところでしょうか。100歩譲って選手の力が同格として、監督の力は明らかに対戦相手のほうが上回っているときに、果たして日本は勝つ可能性をどこに見出せば良いのでしょうか。管理されていない選手の自主性? それともハーフタイムの選手の話し合い?


アジア相手なら前半試合を下手な入り方で入ってしまったとしても、ハーフタイムまで無失点で切り抜けて、ハーフタイムに修正して後半で勝負を決めるということも可能だったと思いますが、ワールドカップ本大会レベルの国が、そんな日本の隙を見逃してくれるほど甘い世界なのでしょうか。
アジアレベルなら中盤のマークが甘くなって相手にミドルシュートを打たれてもシュートが枠を捉えないので致命傷にはなりませんが、本大会レベルではミドルを打たせることが致命傷になりかねない。


今回のコンフェデを現時点でのチーム力の確認として、アジア予選と同じ方法や選手で臨むこと自体は否定しません。世界に中の日本のポジションを正確に肌で感じるには絶好のチャンスですから。ただ、予選と同じやり方で口だけ勇ましく臨んでも、そんなに簡単にコンフェデ4強などという結果が得られるのかは疑問なのですが。
でも、そこで得るだろう問題点や課題を、この先1年の中でどう修正し解決していくのかを考えないと、いつまでたっても”いい経験”にしかなりませんよね。日本にとっての”いい経験”は98年の3戦全敗と一昨年のコンフェデグループリーグ敗退で充分です。その失敗をどう分析し、未来の戦いに生かしていくのか。これは選手が自主的に話し合って解決する問題ではなくて、協会が考えるべき問題です。


本当ならコンフェデの結果を待たなくとも世界における日本のポジションなどは、欧州リーグや欧州予選を見ていれば明らかだとは思うのですが、協会の幹部と呼ばれる方々は忙しいせいか、現状の日本の問題点を正確に把握していないようなので、このコンフェデを経て、この先1年の強化を真剣に考えて欲しい。
少なくとも選手任せの強化は、協会の仕事とは言わない。