ブラジル戦雑感

世界王者ブラジルと打ち合って2−2の引き分け。スポーツニュースのダイジェストでお互いのゴールシーンや決定的シーンだけを切り取って見ると互角で本当に惜しい試合だし、つい先日までアジア予選で苦戦していた日本代表があのブラジルと引き分けただけでも単体の試合としてみれば最良の結果ですよね。
出場した選手たちは本当に良くやったと思うし、残念ながら今回出場できなかった選手たちもチームをチームとして支えてくれたのだろうと思います。選手の皆さんにはアジア予選からの連戦で本当にお疲れ様でしたと言いたいし、良い試合を見せてもらって感謝しています。
試合直後の感想でも書きましたが、ほんの10年前には1−5の試合を演じ、サッカーをさせてもらえなかった対戦相手ですし、U−23とはいえアトランタでもまったく自分達のサッカーをさせてもらえなかったわけですから、それを思うと本当に感慨深いものがあります。


でも、でも、コンフェデという大会のグループリーグとして考えれば、試合前の引き分けでもいいブラジルに対し、日本は一度もブラジルからリードを奪えなかった。逆の言い方をすれば、ブラジルは90分間に渡って、完璧にゲームプラン通りの試合を演じて、一度も追い込まれることがなかったわけですよね。確かに加地選手のゴールが誤審で取り消されなければ一瞬なりとも慌てたと思うのですが、同じ引き分けでも日本が先制してブラジルに追いつかれた引き分けと、ブラジルが先制して日本が追いついた引き分けでは、グループリーグの最終戦としては試合の意味が180度違うと思うのです。


どこかの場面で日本が先行した引き分けなら、”惜しかった”という感想も正しいと思うのですが、昨日の試合の中で日本が惜しかった場面は大黒選手の最後のヘディングシュートがマルコス選手に止められるかどうかの一瞬だけだったように思います。あの前後の数分は確かにブラジルは少し慌てたでしょう。でも、日本がリードしてブラジルが本気で慌てる場面は一度もなかった。このことは引き分けという試合の結果とは別に、大会の戦い方としてよく考えなければいけないことなのだろうと思うのです。


早朝の自宅のテレビ前で日本の得点場面には狂喜乱舞したし、試合終了後は放心状態でした。でも、大会の結果は結果として直視しなければいけないし、『よくやった』からOKという大会でもないですよね。グループリーグの突破ができなかったこと。そしてもし突破していても、次の試合では左右のサイドの選手が累積警告で出場停止になって、大会で起用していない選手を使って戦わなければならなかっただろうこと。
スタメンを固定してチームの熟成を図る中で、中心選手が怪我や出場停止で離脱したときの備えが相変わらず出たとこ勝負なことは、グループリーグ突破を目標とするならお寒いチームマネージメントですよね。初出場で参加することに意義があるのなら、固定したメンバーで”当たって砕けろ”でもいいのですが、大会の雰囲気も戦い方も過去に経験している国がそれでいいのでしょうか。


今回のギリシャ戦やブラジル戦の戦い方で、開催国のドイツをはじめ欧州のサッカーファンに対し、日本サッカーの印象で良質な記憶を残したことは確かでしょう。でも、記録には残れなかったこと、これを忘れてはいけないのだと思います。
あの試合をスタジアムで見たドイツの方にとって、日本という国のサッカーが印象に残ったことも確かでしょう。でも、もし勝っていたら引き分けとは段違いの衝撃をドイツに残せたのに。
『日本はよくやった、いい試合をした』という誉め言葉は、98年のフランス大会直後にも言われていたように思います。あの時だってアルゼンチンやクロアチアをそれなりに苦しめた。でも、そろそろ『よくやった』から卒業したいですよね。そのためには何が必要でどういう強化が効果的なのか。『惜しかった』だけでは分析や反省にはつながらない。喜ぶべきところは喜び、それでもなお批判や反省すべき点は抉り出す。そのような痛みを伴なう評価をしつづけない限り、日本が強国になる道は開けないのだろうと思うのです。


『おまえは昨日の試合でも満足できないのか』というささやきが聞こえてきそうですが、満足できないのですよね。だって、もっとうまくやれる、もっと戦える選手はいるはずだ、そう思ってますから。試合までにすべての準備をして、考えうる様々な可能性を試して、それでも負けたならしょうがないと思うけれど、今の日本代表ならもっともっとシェイプアップして強くなることが可能だと思うのです。
代表監督には予選を突破した今こそもう一度選手選考を白紙に戻して、今の選手以上の選手がJリーグにいないのかをよく考えて欲しい。ブラジルに帰るのではなく、毎試合Jのスヤジアムに足を運んで、関西にも足を運んで選手を見て欲しい。J1でもJ2でも若手でも高校生でも、身を削って選手を探して大会にのぞむ準備をして、その結果が本大会でのグループリーグ敗退なら、悔いが残らず受け入れられると思うのですよ。


7月末の東アジア選手権でも新しい選手を探さないとしたら、協会の人たちはそれでいいのでしょうか。サポの皆さんは、それでも納得できるのかな。


日本が大会を去るにあたって 宇都宮徹壱さん
世界を驚かせた日本のユニークなサッカー 中田徹さん
日本代表が世界へ発信した「イメージ価値」 湯浅健二さん *1
準決勝進出を逃したのは負け セルジオ越後さん

*1:4分の1だけ日本の記事、湯浅さんの日本代表に対する期待値は変化しているのでしょうか