日本 - イラン

横浜国際競技場に行ってきました。
日が沈んでからはさすがに日中の暑さもやわらぎ涼しい風が吹いていましたが、それもスタジアムの外でのことで、スタジアムの中は空気も動かず蒸し暑かったです。座っているだけで汗が出てくる感じで、その中で試合をする選手は本当に大変でしょうね。
試合としてはある意味消化試合で日本が勝ってもイランが勝っても大勢に影響はない試合でしたが、66,098人の観衆に包まれたスタジアムは、消化試合なんて緩い雰囲気は許さない世界でした。ただ、さすがにワールドカップ出場を賭けた試合のようなピリピリした雰囲気ではなく、どこかめでたい祭りのような、まさにフェスタのような熱気と言ったらよいのでしょうか、そんな一種異様な興奮に包まれたスタジアムでした。


それから試合開始前に嬉しかったことがあったのですが、まずは3月のアウェイのイラン戦のアザディスタジアムでイランサポーターが試合後の混乱で数人亡くなった事に対して、黙祷を捧げたこと。そして、イランの国歌独唱の前に自然発生的にスタジアム中から拍手が沸き起こり、歌い終わった後も大きな拍手があったこと。最近のアジア相手の国際試合だと、サッカーの試合なのにまるで戦争のような憎しみを感じてしまうこともあるのですが、このように両国がアジアのライバルとしてまた仲間として、これからもイランと日本がうまく付き合っていけるといいなと感じた瞬間でした。今回の予選では3月のアウェイの試合でイランにも行きましたから、余計そのように感じてしまうのかもしれませんけれどね。


試合は国内組Aチーム対イランBチームという対戦ですから、どうもイランに得点を取られる気がしなくて、見ていても緊張感が持てなくて困りました。もちろん日本にはアウェイの借りを返してすっきり勝って欲しいのですが、今日のイランを見ていると負ける気がしないのです。それぐらい前半の日本はイランを上回っていたように感じます。
そして前半28分の日本先制の場面ですが、日本がイランボールを奪い素早く前線左に流れた玉田選手へフィード、玉田選手は左サイドで相手DFを振り切りマイナス気味のグラウンダーのクロスをゴール前に送り、ニアに飛び込んできた大黒選手が相手ともつれながらつぶれてボールはゴール前を横切りファーサイドへ。自分の座席に近いゴールでの出来事だったので非常に良く見えていたのですが、かなりリズムの早いショートカウンターのような攻撃だったので、FW2人の位置関係は確認できましたがファーサイドに日本の選手が詰めているのかどうかが、とっさに分からなかったのです。ところが視線を動かすとそこには青いユニの選手がちゃんといて、大事なボールを流し込むように見事なゴールを決めました。一瞬誰だか分からなかったのですが、何とそこには加地選手が詰めていたのです。豊富な運動量を誇る加地選手ですが、あの素早い攻撃の中でよく詰めていたなと、ゴールよりもまずそこにいることに感動してしまいました。そしてフリーだったとはいえ落ち着いてゴールの右スミに流し込むようなシュート、まるで取り消されたコンフェデのブラジル戦のゴールを取り返すかのような見事な得点でした。


この得点でもう日本の負けはないなと確信してしまったので、それからはボールの動きよりもボールのないところでの日本選手の動きを中心に見ていました。後半は日本のDFラインが目の前にきていたので、特に”1人余るDF”について注意をして見ていたのですが、1人余っているようには見えないのです。確かに人数的には1人多いのです。イランの選手が2人トップにいれば日本の守備は3バックが対応し、イランが3トップ気味になれば日本から見て左サイドに張り出しているFWに対して三都主選手がマークにつくので変則4バックのように見えて、人数的には1人余っています。主に余るのは宮本選手なのですが、でもその余り方がDFラインの後ろに1人深く余るのではなくて、常にフラットなラインの中で相手FWや味方DFと同列で余っているように見えるのです。
相手がボールを下げる(バックパスを出す)と宮本選手が素早くラインを3mくらい押し上げ、続いて中澤選手が上がり、田中誠選手が上がる。日本のDFで最後まで上がらず自らがオフサイドラインの基準になっていたのは、後半はもっぱら三都主選手でした。
相手のGKやDFの深い位置からの縦一本のロングフィードに対しては宮本選手が素早く下がり競り合いのこぼれをカバーできる位置取りをする(1人余る)のですが、イランがキープしている時はかなりラインの修正を意識しているように見えたのは気のせいでしょうか。


それとこれは相変わらずですが、時々ボランチの2人がどこかに消えてしまって、日本の3バックの前がポッカリと空いてしまうのは何とかならないものでしょうか。DFとボランチの距離感が近すぎてDFラインに吸収されてしまっているのか、遠すぎてポッカリ空いてしまっているのか。韓国やイラン相手なら”惜しいシュート、危なかった”で済みますが、来年の6月に戦う相手は見逃してくれないと思います。コンフェデのブラジルのように。


試合はその後も日本が負ける気はしなく、CKとPKで両チームが1点を取り合い日本リードのまま終盤へ。後半30分前後から先ほど書いたような日本のバイタルエリアをイランに自由に使われていたので、後半39分に 遠藤選手から今野選手へ、後半44分には玉田選手から阿部選手に交代して中盤を厚くしながら日本が逃げ切りました。あまりにも交代が遅いので、今日はよく頑張っているAチームへのご褒美として誰も交代しないのではないかと考えてしまいましたが、イランに使われていた中盤を閉めるための交代だったのでしょうね。今野選手の投入はまったく納得だったのですが、FWを1枚下げて阿部選手を投入したときはかなり考えてしまいました。ボランチを3枚にするイメージなのか、阿部選手を小笠原選手と並べるイメージで少し中盤の前目で使うのか。この疑問については私の観察力では最後まで答えがでないまま試合終了となりました。


結果は3月のアウェイでの1−2というスコアをそのままお返ししたような2−1での見事な完勝で、日本は無事ワールドカップ予選を終えました。試合終了後に川淵会長からサポーターへのメッセージがあったのですが、この方はかなり広告宣伝能力に優れている方だと思うので話半分で聞いていたのです。が、さすがに『弾丸ツアーでアウェイまで応援に行ってくれた人や、無観客試合にもかかわらず北朝鮮戦を応援しに来てくれた人たちに感謝しています。』と言われたときには胸にこみ上げるものがありました。
私は幸運にも最終予選は無観客試合を除く5試合を全てスタジアムで応援することができたのですが、寒さと残り時間に震えてたホームの北朝鮮戦から始まって、10万人以上の大観衆と監督の突然の4バックに圧倒されたアウェイのイラン戦。敗戦に落ち込む暇もなく迎えたホームのバーレーン戦では煮え切らない感じのオウンゴールにより何とか勝利して、パッとしなかったキリンチャレンジの2試合を挟んだアウェイのバーレーン戦では見事な勝利。無観客試合でも力の差を見せ付けて完勝した北朝鮮戦。
一次予選から考えたら1年半の時間が走馬灯のように頭をよぎりました。


これで予選の全日程がプレーオフに進むことなく終了したのですから、あとは世界の他の地域よりも長く与えられた準備期間を無駄にすることなく、Jリーグの日程と選手のやり取りをできるだけ工夫して海外組との融合を進め、来年の6月までの時間を有効に使って欲しいと切に願います。
まだまだ日本は決勝トーナメントまでを考えてピークを後半に持ってくるような強豪国ではないと思うので、グループリーグの初戦にきちんとチームのピークが来るように調整して欲しいです。コンフェデや東アジアのような、初戦は何となく終わってしまうことのないようにスケジュールを逆算してチームマネジメントを上手にやってくださいね、会長と監督。