ディポルティボ - バルセロナ

90分間すべては見られなかったのですが、面白い試合でした。
チーム全体が気を抜かないプレー、ボール際での激しい競り合い、ゆっくりするところと素早く攻めるところのメリハリ。そして、時折見せる個人のスーパープレー。こんな試合が生で見られるスペインの人々は幸せだなぁ。


前半35分過ぎ、ディポルティボが1点リードしている場面から見始めたのですが、実況や解説の話だとそれまではディポルティボが試合のペースを握っていたのですね。でも、バルセロナのディポルゴール前での一瞬のパス交換から、前半41分にエトーのゴールで同点。そして前半ロスタイムにはロナウジィーニョが時間を止めました。


右サイドに速攻で攻め込んだエトーが早いタイミングでゴール前を横切るクロスを入れ、中央に飛び込んできたジュリがスルー、そしてファーサイドペナルティエリア左角近くにいたロナウジーニョの足元にボールが納まります。必死で戻ってきたDFが止まっているロナウジーニョを見てポジションやラインを整えつつ寄せてきたその刹那、素早いボールの持ち出しから並んだ4人のDFを一瞬で置き去りにして、寄せてくるGKが詰めきる前に一瞬早く右足アウトサイドでボールをゴールに流し込んでしまう。
キレキレの時のジダンのプレーでも感じることですが、ボールを完全に自分の支配化に置いて、一瞬のタメで相手の動きを止めて、自分の間で自分のタイミングでボールを持ち出してしまう。相手が足を止めたその瞬間に、ジダンロナウジーニョのまわりの時間だけが止まっているように見えるのですよね。凄いです。


試合は後半7分にもデコの走り込みからバルセロナがPKを決めて1−3とし、試合の行方を決めたかに思いましたが、とんでもなかった。
ここからディポルティボはディエゴ・トリスタンバレロンを交代するという思い切った手段に出ます。でもバルセロナペースは変わらず、後半20分にはロナウジーニョが2点目と同じようにペナルティエリア左角から、巧みなフェイントでボールを浮かせてドゥシェルを交わし、見事なループシュートで4点目かと思いましたが、ファーサイドギリギリでフアンマがクリアをしました。このプレーがディポルティボを救いましたね。


これで首の皮一枚つながったディポルティボは、バルセロナ陣内高い位置で奪ったボールを素早く右サイドに運び、ムニティスが相手を外した瞬間に左足を振りぬき見事にカーブをかけてファーサイドに決めて1点差とします。GKが一歩も動けない見事なシュートでした。これで勢いに乗ったディポルティボは再びペースを握り猛然と攻め込み、タバルドのシュートがポストに当って跳ね返ってきたボールをカストロが落ち着いて決めて同点になりました。


試合の時間帯の中で、モメンタムが見事にチームの間を行き来している、そんな試合でした。バルセロナが同点にしてからは明らかにバルセロナペース、特に2点をリードしていた時間帯は、まるで勝利を確信したかのようにゆっくりボールをまわしてキープし、ディポルティボはボールすら奪えそうもない雰囲気でした。が、嫌なボールの失い方から1点差になった途端、試合の流れがはっきりと変わります。こうなると2点差の恐怖というか、1点差に詰め寄られたチームに踏みとどまる力はありませんでした。1点差に追いつかれたのが終了間際ならそのまま逃げ切れるのかもしれませんが、まだ20分も残ってましたからね。


結果的には3−3の引分けに終わりましたが、結果としての得点ほど大味な試合ではなく、とても繊細な試合でした。お互いに張り詰めたテンションの中で、どこか一箇所にほころびが生じた時にだけ得点が生まれる。あくまで得点が生まれるのであって、失点してしまうのではない。そんな風に感じられた試合でした。