デットマール・クラマーさん

昨夜のスカパーの番組以来気になってしまって少し探したら、昨年の11月に来日した時の公演やインタビューをまとめたこちらの文章にめぐり合いました。
「クラマーの言葉」(1/5)〜ゲルマンの風が吹いた一週間 スポナビ 後藤勝さん
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読んでいる最中から頭をガーンと殴られたような衝撃を受ける文章ですね。『過去を美しく振り返るだけではなく、過去の出来事を基礎として未来について語ろう』というその一言ですら、あまた多くいる日本のジャーナリストの方々の視点を遥かに超えてしまっているように感じます。

過去を振り返るよりも、未来への提言を


「サッカーは理論ではなく、試合を通して学べるもの」
「(近年の指導者は)トレーニングは学術的な観点から、という考えに偏りすぎている」
「ドイツで1万人の指導者を養成したが、彼らは論理を振りかざしているだけだ。原点は試合、プレーなのだ。システムがどうのこうの、肝心なところが分かっていない」
「『競うための技術』が欠けている。勝てないなら指導者が悪い」
「ドイツストリートサッカー最後の世代は1974年の代表チーム。その後ドイツのサッカープレイヤーの技術は下がっている」
「今のバイエルンの選手はベッケンバウアーの10倍のサラリーをもらっているが、テクニックは足元にも及ばない」
「重要なのは負けたとしても全力を出すこと。もう一回やらせてくれれば勝てる、などと思わせることがないからだ」
長沼健はフェアだった。当時の日本はフェアで美しいプレーをし、目的を達成できた」
「サッカーを通して人間が作られていく」
ルンメニゲは19歳のある日、ベンツに乗ってやってきた。『すぐに売れ!』と言うと、彼はフォルクスワーゲンを買いに行った」
ルンメニゲに『おまえの左足は買い物に行くときにしか役に立たない』と言い、一日3回のシュート練習をさせた」
「ボールアーティストは役に立たない」
「私のサッカー観は『チームのために全力を尽くす』『チームの害となることはしない』だ。釜本がスターだとは思わない。スターはチーム全員だ」

語録の部分をリンク先から一部引用させてもらいますが、この人が日本サッカー協会の会長だったとしたら、日本代表はどこまで強くなったのだろう。

新しい才能を発掘する時間を釜本自身が作らなければいけない、そして新しい釜本を発見したら、自分が育てればいい。なぜなら自分が育ってきた経験が彼にはあるので、正しく育てられるはずだ。

 釜本も仕事があり、忙しい身だとは思うけれども、日本中から才能を探してきて、探して探して探しまくって、その中からベストの子供たちを集めれば、きっと素晴らしい才能に出会えると思う。そういうスカウティングシステムを日本でも作らなければいけない。それを日本中に根を張り巡らせ、漁師の網のように隅から隅まで張りめぐらせて、もちろん12歳以下にサッカーを始めないといけないのだけれども、12歳以下、14歳以下、16歳以下、18歳以下の子供たちというようにきちっと区切り、若い子たちを観察して探しに行くということが大切だ。その中からベストの子供たちを探し出し、チームを作ってどんどん試合をさせる。そういうことを都道府県単位、学校単位、クラブチーム単位でやっていかなくてはいけない。
 才能の発掘および促進……1968年以降を考えてみてほしい。第二の釜本は出現していないのだよ。

もし今、自分が日本代表チームの責任者であれば、何をするのかということを、すごく声を大にして言いたい。もし私が日本代表に対して責任のある立場にいるならば、各都道府県、クラブチーム、小学校をすべて回り、12歳の子供を全部見る。12年後には24歳になっているわけだからね。24歳というのはナショナルチームの平均年齢だ。全国各都道府県から集まった12歳の子供たちの中から、44人を選りすぐり、4チームを作ってすべてのポジションに4人をそろえ、今から育成する。もしそのプロセス中に、育成段階で発展が見られないとか、それほどいい選手ではないということが分かった場合には、2つの道を開けておく。その子はチームから去ってもらう。替わりに新しい子供が入れるように、彼が出て行く道と新しい子が入って来られる道、2つの道を作っておくのだ。

 でもJFAも全国レベルで発掘するということに関しては経験がない。お金もかかることなので、スポンサーも見つけないといけない。
 もし、もっとそれを早くやっていれば、もっと早く第二の釜本が見つかっていたかもしれない」

クラマーさんの言葉について、感想を述べることが陳腐なことのように思えてきました。どんな感想を書いたとしても、この方の持つ言葉の強さや重みの足元にも及ばない。

2006年のことはもうあまり話したくない。なぜならそれは、あさってのことと同じくらい、すぐのことだからだ。
 2010年、2014年に何が起こるかということの方が、よほど興味深い。本当は4年後、8年後、12年後に日本のサッカーシーンがどうなっているかということを考えないといけない。そうしないとチームが危機に陥る。今トップにあるチームであっても、将来の展望を見据えてトレーニングしていかないと、すぐ下に落ちてしまう。

もちろん個人的に今年のドイツ大会は楽しみなのですが、中田、中村、小野、稲本、宮本、中澤、柳沢、高原etcといった中心選手たちはほとんど同年代で、いなくなるときは一気に代表からいなくなるのですよね。そのような日が来る時を見据えて、今の若年層やオリンピック世代の強化は停滞なく進んでいるのかと考えると冷や汗が出ます。今現在カタール国際ユース大会で頑張っているユースチームのことなども気にはなりますが、世間ではほとんど取り上げられない。このような風潮は危険ですね。
ナイジェリアのワールドユースを戦ったような強烈なインパクトのあるチームは、そう頻繁に出てこないかもしれませんが、だからこそ将来を見据えた計画的強化の重要性が問題になるわけです。U23代表監督の人選も進まない現在の日本サッカー協会の準備のスプードで、黄金世代以降が大丈夫なのか背筋が寒くなってきました。

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