チーム作りの方法論

選手の所属人数が限られていて選択の幅の少ないクラブチームとは違って、代表チームというのは監督のチーム作りの方法の差が大きくでるものだと思っています。レアル・マドリーというチームが選手の選択肢の限られた単なるクラブチームかどうかは微妙なところですが、それでも監督が変わってトレーニングが変わって使う選手が変わるとサッカーの質があれほど変わる。ましてやその国のサッカー選手のすべてから選手を選べる自由を持つ代表チームなら、監督のチームつくりの方法の差がより大きく出るのでしょうね。


その国のサッカーの特徴やその国のサッカー選手のストロングポイントを生かし、ウィークポイントを目立たなくするチーム作り。代表監督にだけ許される贅沢。
もちろんクラブ監督には、より長い時間選手と行動や練習を共にし、密度の高いチーム作りをする贅沢がありますが、好きな選手を選び、自分の理想とするチームを作る自由は代表監督にありますね。ただ、練習時間や試合数にはかなり厳しい限りがありますが。


私の好みとする代表チーム作りの方法論は、現状を分析し、目指すべき到達点を見つけ、そこに至る方法を探すこと。戦術ありきのサッカーと揶揄されるかもしれませんが、目指すべき目標へ到達する過程の中で、各選手の個性は最大限生かされると思うのです。
例えば映画作りの中で、作りたい映画のイメージが監督の頭の中にあり、そのイメージにできるだけ近い俳優やロケーションを選び、最高の映画を作る方法ですね。逆に監督が良いと思う俳優を先に選び、それらの俳優たちが一番生きるようにロケーションを選び最高の映画を作る。もしかすると結果的には日本を代表する同じような俳優が演じることになり、映画の出来栄えも大差がないかもしれないけれど、どちらが好きかという部分です。そして、例え前者の方法をとったとしても、そこで監督に選ばれた俳優さんは決して監督の操り人形ではなく、その俳優の個性をスクリーンの上で最大限発揮するチャンスはあると思うのです。なぜならその俳優さんの個性と監督の頭の中のイメージが一致したのですから。


現在日本代表はアメリカで合宿をしながらドイツ大会を戦うチームの基礎を固めています。予選を勝ち抜き、ターゲットが本大会の結果だけになったことで、監督の要求もいままでよりも厳しいものになっているのでしょう。ですが今現在チーム作りに参加していなくて、それでもチームの中心になるだろう選手は何人もいます。もし中盤に中田英、中村、稲本、中田浩二選手たちが入ってきたら、今アメリカでやっているチーム作りの延長線上になるのでしょうか、それとも中盤とDFラインの連携作りは1からやり直しになるのでしょうか。FW陣で言えば、柳沢、高原、松井選手たちが入ってきたらどうなるのでしょう。


主力選手の多くが海外のクラブに所属しているという状況は、かつての日本代表にはありませんでした。だからこそより一層監督のチーム作りの方法の差が大きくなるような気がしてなりません。もちろんジーコ監督の母国であるブラジル代表は、代表選手の多くが主に欧州など海外に多く在籍し、代表チーム作りは短期間の合宿のみで行う状況を経験しており、そのノウハウを現在の日本代表にも生かしてくれていることでしょう。ただ、そのブラジル流のやり方と現在の日本サッカーの位置づけがマッチしているのかどうか。ワールドカップの優勝が最大の目的であり、グループリーグの3試合は勝ち抜くのは当たり前でその中でチームを作っていくかのようなブラジル代表と、グループリーグの初戦にピークをあわせなければいけないような日本代表は、それなりに方法論が違うのではないか。
うまく考えがまとまりませんが、本大会を4ヶ月前にしても心配は尽きません。まあ、尽きるどころかこれからどんどん増えていくのでしょうけれど。