ボスニア・ヘルツェゴビナ戦後

会場のコンディションの悪さは認めるし、前日練習で積雪のあるグラウンドでやらざるを得なかった不運は同情するのですが、少なくとも2年近く組んできたバックラインと比較的代表で試合に出ている中盤の守備の連携としては進化があったのだろうかという疑問は残ります。
その点については監督は直前合宿で修正できると心配していないようですが。


ボスニア・ヘルツェゴビナ戦後 ジーコ監督会見 スポナビ

本大会のメンバーを選考した後で、ポジショニングなど、自分たちのやってきたことの再確認は、時間を掛けてできるので、そのあたりのことも心配はしていない。日本の持ち味である素早さを生かす時間帯というものも、選手が集まった時点で引き出していきたい。今日のように、長い時間帯で相手にスペースを与えることはない、という自信はある。

この辺りの監督に見えているビジョンというか自信の基になる物が見えない不安はあります。過去に格上相手に三都主選手の守備が機能したところの記憶が薄いし(私の記憶に薄いだけであるのかもしれないですけど‥)、同じく中盤の底に入る選手とDFラインの連携、距離感、ブロックとしての守備が機能していた記憶も薄い。ジーコ監督にはうまく機能していた試合のイメージがあって、私にはそのような記憶がなくてやられている記憶ばかりあるだけの違いなのかもしれませんが。
相変わらずサイドを人数をかけて攻撃された時に、三都主選手のフォローに宮本選手のようにCBがカバーに出て行くのかボランチがいくのかも明確でないし、昨日の試合で言えば宮本選手がサイドにつり出された時に、宮本選手と中沢選手の間を誰かが埋める意識も薄いように感じました。


結局のところ、DFラインの総取替え以降の守備の課題は何一つ改善されていないことを確認する試合だったのでしょうか。

――守備ではサイドを崩されてヘディングでシュートを打たれるシーンが多かったが、その点についてはどうですか?

 クロアチアに限らず、ほかの国もそうだが、サイドをえぐって放り込むチームに対して、今日はポジショニングも悪かったと思う。こぼれ球の位置、全体的なセットプレー(での守備)など、見直しが必要なところはあると思う。ただし、これまでできていたことでもあり、そのイメージはある。それについての修正はしていかなければならない。


ボスニア・ヘルツェゴビナ戦後 選手コメント スポナビ

中村俊輔選手
前半と後半では、あまりにも差があり過ぎた。ペースを上げる前にサイドをやられる。サイドをやられると間延びする。相手がボールを回す時に、バラバラに取りに行って、何度も1対1の場面を作られた。相手のエンジンがかかった後半は、引いて相手のミスを誘うことも考えないと。加地のところで1対1が多くなって、切り込まれてシュートを打たれたりすると、こっちも挟み撃ちの状況が作れない。


宮本恒靖
前半の守備は手応えが感じられたが、後半は相手の運動量に押されて、こちらは(ラインが)間延びしてしまった。ボスニアは最初はつないでいたけれど、次第にロングボールを入れてくるようになった。(日本としては)もっと後ろからコンパクトにできたのではないか。(中略)ボランチも下がって、もっとコンパクトにするように、福西やヒデ(中田英)に言えば良かったと思う。
(相手にクロスを入れられたことについて)もっとマークも間合いを詰めて、中を締める人を置かないと。

何だか、何度も聞いたような気がします。間延びした中盤、えぐられるサイド。


ただ、各選手にアピールの気持ちが強いことも事実なので、この試合のバランスの悪さがチームの能力とは純粋に言い切れない部分もありますね。

稲本潤一
後半は運動量が落ちて間延びして、こぼれ球が拾えず、サイドからやられてしまった。前半はボールをつなぐことができたので、もっと徹底すれば、と思う。
アピールする場面で出場できて良かった。伸二(小野)が前の方にいても、数的不利になっても、自分としては後ろには行きたくなかった。

このコメントを並べると、少し目眩がするような気がしますが、気のせいですよね。

田嶋幸三技術委員長
ワールドカップに向けた(合宿地などの)シミュレーションができたし、クロアチアを想定してワールドクラスのチームと戦うこともできた。課題を確認するために来たわけで、収穫もあった。選手も最後まであきらめない姿勢を出してくれて、(合流して)中一日の中田英も頑張ってくれた。
 ボスニアはいいチーム。簡単に勝てる相手でないことは最初から分かっていた。高さと強さで仕掛けてきて、こちらが耐え切れなかったところが今後の課題。

試合後 ボスニア・ヘルツェゴビナ代表スリシュコビッチ監督会見 スポナビ

――日本とクロアチアはどちらが強いと思いましたか

 今日の試合に限っていえば、われわれの方がいいプレーができた。日本は良かったとは言い難い。今日のような感じだと、クロアチアと戦うのは厳しいだろう。いつもの日本なら、もっとやれるだろうが。


課題があることはずっと前から分かっているのです。で田嶋さん、これから課題を修正する時間がほとんどないことは分かっているのでしょうか。この試合を見て、本気で高さと強さで仕掛けられたと思っているとしたら、怖い。
スリシュコビッチ監督の最後の一言は監督としての礼儀でしょうね。