CL準決勝セカンドトレグ ビジャレアル - アーセナル 雑感

ファーストレグの試合開始直後の張り詰めたような緊張感に対して、セカンドレグの試合開始時には両チームともファーストレグに比べてリラックスしていたように見えるのは気のせいなのでしょうか。90分の試合開始というよりは、180分の試合の後半開始というのが正しい感覚なのかもしれませんね。


試合は開始から前半15分までは互角にもみ合いましたが、そこから先はアーセナルがアンリ1人を残してどん引きという展開で進みます。ファーストレグと多少のメンバー交代はあるものの、ほぼ同じメンバーが試合をしているにもかかわらずこれほどまでに展開が違ってくるというのは、ホームスタジアムの観衆の後押しの力の大きさなのでしょうか。それとも、得点差を必要以上に意識してしまうメンタルゲームということなのでしょうか。ベンゲル監督にあの戦い方(守り方?)はゲームプラン通りなのか、それともビジャレアルの圧力に押された結果ああなってしまったのか聞いてみたい。前線に1人残るアンリに有効なボールが入ることもなく、ビジャレアルのチャンスの山だけが訪れる展開でした。


ただ、アーセナルサイドから見れば選手交代が試合の流れを作る引き金になってしまったと言う見方もできますね。試合開始から10分も経たないうちに左サイドバックフラミニが故障により経験の浅いグリシに代わってしまったことで、より一層「守らなきゃ」という意識が高くなってしまったかもしれません。案の定、交代で入ったグリシは最後の最後に守備の大ポカをやってしまうわけですが…。


一方プラスの交代としては通産の70分過ぎにレジェスに代えてピレスを投入してことでベンゲル監督はビジャレアルに傾きっ放しだった試合の流れを少しだけアーセナルに取り戻したかもしれません。サイドを主戦場にしがちなレジェスに対し、フィールドの中央でボールをキープしてタメが作れるピレスの投入で、アーセナルが奪ったボールを前線のアンリに放り込むだけだったアーセナルの展開が少し変わったように思えました。ピレスにボールが入ると、ビジャレアルの守備を円を描くようなドリブルで交わしつつ時間を稼ぐことができ、その間に守備の選手が一息つけるし攻撃に出て行ける選手も増える。最後までアーセナルは得点よりも時間を使うことに重きを置いていたとは思いますが、プレミアスタイルではないビジャレアルのサッカーに思いのほかピレス投入がはまったように見えました。


しかし、そんな苦労も全て吹き飛ばすPKのチャンスが通産の88分にビジャレアルに訪れるとは…。結果は残念なものでしたが、あの短い時間の間の両チームのサポの心理状態は察するに余りあります。
ビジャレアルのサポから見れば同点を確信し、追いついて延長になれば今日の試合でほとんど攻める気持ちを見せていないアーセナルにやられる恐怖よりも自分達が勝ち越せる自信の方が大きかったことでしょう。アーセナルのサポから見れば、88分間耐えてきたもの全てを失ってしまう。ここまでビジャレアルを引っ張ってきたであろうリケルメと無失点記録を続けアーセナルの守備を支えてきたレーマン。もう結果は運命の神様だけが決める世界のように思いました。技術や精神力を超えた部分で決まる運命のようなもの。リケルメの技術や精神力がレーマンより劣っていたとは思えません。試合や勝負に勝敗という決着がある以上、決着をつけるための何かが運命を分けた、そんな気がします。


アーセナルとしては復刻ユニフフォームを着て戦ってきた今シーズン、プレミアリーグでは今ひとつの成績ですが、ビッグイヤーにできるチャンスが訪れました。対戦相手はバルセロナに決まったようで、すさまじい決勝になりそうです。