ブルガリア戦雑感

試合そのものは現地で見たのですが、その後は移動の連続で落ち着いて試合を振り返る時間も取れませんでしたので、ここで少し雑感としてまとめてみたいと思います。


・23人枠について
ブルガリア戦後 ジーコ監督会見 スポナビ

――最終選考に迷いを感じさせる選手はいたか? (質問の前半のみ)

 今日は多くの選手がピッチに立ったわけだが、みんな気持ちを入れてやってくれた。1人1人の力は分かっているが、みんな(プレーに)気持ちが入っていて自分としてはうれしかった。彼らの頑張りは賞賛に値する。ただし最終メンバーについてのベースは頭にある。

ジーコ監督の頭の中ではすでに23人の青写真は出来上がっていて、それを突き崩すのは半端なことではないとは思います。でも、この試合での巻選手をはじめ当落線上だと自覚している選手達の献身的な頑張りは無意味ではなかったと思っています。もちろんプロとして0.1%でも可能性があるなら全力を尽くすことは当然として、この試合で頑張ったから選ばれるというような直接的な意味では無意味かもしれません。しかし、例えばジーコ監督の23人枠に入っている選手がこれからコンディション不良で外れるようなことがあった時、補欠候補選手の中の順位で1番にいないと意味がない。たぶんスタメンや23人枠に序列があるのと同様に、補欠枠にも序列があると思うので、その一番手に必ずいなければならない。そのような意味で、ブルガリア戦の頑張りは重要な意味があると思っています。
これは勝手な想像ですが、スピード系の選手が故障したから佐藤選手をピックアップするとか、身体系の選手が故障したから巻選手をピックアップするとか、そのようなタイプ別には整理されていないのではないかと考えています。


そのような頑張りの中で不幸にして村井選手のようなアクシデントも起こってしまいますが、これはジーコ監督の選手選考の仕方とはまったく関係ない部分で起こったことなので、運が悪かったとしか言いようがないと思っています。前回の高原選手の直前の病気や、森岡選手のアクシデントや宮本選手のマスクなど、残念な事故は起きてしまう。ただし、それが起こった時にスムーズに対処ができるように代わりの選手を準備して育てて経験を積ませているか、そのようなリスクマネジメントは非常に重要な監督の仕事だとは思いますが。右サイドで同様なことが怒った時に、繰り上がる選手がここ最近招集されていないのは気になっています。左サイドは中田浩二選手がカバーできると思いますけれど。


ブルガリア戦は、日本代表強化のプロセスの中ではどのような意味を持つのか。
試合前にも試合中にも感じていたことですが、代表強化のプロセスとしては無意味に近い試合だったというのが試合後の感想です。
これはやはり選手選考を過去の実績や日本代表への貢献で選ぶと監督が明言している以上、サバイバルマッチにはなりようがないし、チームの形の明確なイメージを監督主体で成立させるのではなく選手主体で成立させるチームである以上、海外組が参加できない大会は連携面の構築でも無意味。ただし、ほとんど同じメンバーでやるだろうDFとGKには肌寒いものを感じましたが。また、浦和と鹿島の選手のように、中一日で試合に臨む選手がいる、他の大多数の選手も中2日で、直近のリーグ戦もハードな日程をこなしているというコンディション面の悪条件。これらを考えると代表の強化に直接つながるとは考えにくい試合でした。


さらに対戦相手のネームバリューにおけるモチベーションも上げにくい。過去の試合の中で、チェコ代表やイングランド代表やブラジル代表との試合であれば、選手のモチベーションは放っておいても最高潮に達するでしょうが、東アジア選手権での試合など、選手のモチベーションが上がりにくい状況の中で監督のモチベーションコントロールがほとんど期待できないことは予想できるので、この意味でも難しい試合でした。ただし、ドイツ大会に入ってしまえばワールドカップ本番という、これ以上選手のモチベーションが高まる試合はないと思うので、その意味ではまったく心配していません。逆に気合が空回りしないように、うまく選手を抑える必要があるかもしれませんけれど。


それではこのブルガリア戦の設定自体に意味がないのかと言えば、決してそんなことはないと思います。関東での開催がどうしても多くなってしまう日本代表の試合を関西でも定期的に実施することの意味は非常に大きいし、前回大会直後に就任したジーコ監督のチームの3年半の成長を日本のファンに見てもらう意味でも非常に価値のある試合だった。

――今日の試合とは離れるが、来日して15年で日本から学んだこと、それから監督就任から4年を振り返って感じることは

(前段略)
 それから監督になって4年になる。日本のサッカーの経験、技術といったものが高まっている中での就任となったが、そこで自分がやりたかったのが、精神的な問題だ。リードされても、リードしていても、バランスを取るということ。それが技術を生かす意味で重要だと思った。そうしたことは、自分が就任してやれていると思うし、それができるようになれば、日本も勝負強くなれると思う。はやる気持ちを抑えながら、前後左右のバランスを整えながら気持ちを前に出せるような戦い方。それからミスを恐れないこと。もちろんミスというものは最小限にとどめなければならないものだが、ミスを恐れるあまり積極性がなくなってしまうと、消極的なプレーになってしまい、トライしなくなってしまう。同じミスを繰り返さずにトライするということ、そうした強い気持ちは今でも日本の選手に学んでほしいと思う。

ブルガリア戦の中でも玉田選手の積極的なプレーや巻選手の不屈の闘志による頑張り、佐藤選手のチャンスをモノにするんだというアピールなど、随所に選手個々の頑張りは見て取れました。


前監督時代は基本的な動き方は監督の頭の中にあって、その上で個人のプラスアルファを攻撃陣の中に期待される形でしたが、今のやり方は「ポジションは決めるがそこでの動き方は(ある程度)自由だ。自分で考えて、やってみろ」というものだと思っています。そこで、選手達が失敗を恐れずに積極的にチャレンジし続けたことは評価に値することだったと思います。その中で村井選手のアクシデントが起こってしまいましたが、本当に、本当に残念だけれどもそれはそれでしょうがなかったとしか言いようがありません。


3年半という与えられた時間の中で、チームとしての上積みを持つタイプのチーム作りではないので、その意味では集大成のようなものはあまり期待できない試合でした。この部分については非常に不満が残ります。『あれだけの時間と試合数と(相当な予算)をかけて、直前にこの試合かよ。』という思いは正直心に浮かびますが、今のやり方では直前合宿で海外組が合流しないと何も始まらない。その意味ではスコットランド戦もブルガリア戦で出場しなかった選手のコンディション調整となってしまう可能性もあるけれど、それでもやはり当落線上の選手達の闘志は感じられる試合になるだろうと期待しています。
ということで長々と書いてきましたが、「当落線上の」選手達のモチベーションは心配ないと思っていますよ、宇都宮さん


以下追記

上のエントリーはこちらのエントリーを読む前に書いたので決して反対意見とかではないのですが、それでも違う考え方としてリンク先を載せておきます。

「当落線上」のアリア(宇都宮徹壱さん) Ordinary Days さるねこさん