閑話休題

話を本筋に戻すとき、または本題に入るときに用いる言葉。接続詞的に用いる。むだな話はさておいて。それはさておき。さて。

代表合宿が始まり、日本代表選手が23人全員そろい、福島のJヴィレッジは連日凄いことになっているようですね。Jリーグの試合会場より代表合宿に多くの人が集まってしまうという状況は、喜ぶべきことなのか憂うべきことなのか。昨日も書きましたが、選手達には合宿に集まってくれている人々のパワーをしっかりと受け取ってもらって、来るべきドイツの地での活躍という形で表現して欲しいと思います。ガンバレ、日本!!


これは私の個人的な考え方ですが、合宿や練習は監督と選手達のものだと思うので、3バックの練習から始めてもシュート練習から始めても、良い準備ができれば全てはお任せだと思っています。お金を取るプロである以上、試合という本番でいかに結果を残すかということが大事であって、今はそのための準備期間なのだから悔いのない準備をして、できるだけ万全なコンディションで本大会に臨んで欲しいです。
さて、チームがドイツに渡ってドイツ戦を戦う前のこのひと時を使って、少し代表について振り返って見たいと思います。


4バック、つるべの動き、1人余る……、懐かしいかなり初期の頃の言葉ですね。それ以外にもたぶん外に見えないチーム内の約束事はあるのだと思いますが、今ひとつ見ている人間にチームの約束事が伝わってきませんでした。3バック、オートマティック、フラットライン…、前監督に対するアンチテーゼのように始まったジーコ監督の日本代表ですが、時間とともに随分姿を変えました。それは”理想〜現実〜理想と現実の妥協”のようにも見えるし、”海外組〜国内組〜海外組と国内組の融合”のようにも見えました。様々な情況の中でチームも揺れ動き、選手も成長し監督も成長する、そんな3年半だったのではないかと思います。


信頼。
よく現在の日本代表を評して、「監督が選手を信頼している」という表現を聞きますが、一部では当っていて、ある一部では大外れなのではないかと思っています。見込んだ選手は多少の怪我でも代表に召集するし、多少コンディションが悪くても試合に使う。でも、「選手を信頼している」というよりは、「勝っているチームを信頼している」に近いのかなと考えています。チームが勝っているときは、多少の連戦でもスタメンを変更したりしない。勝っている時の序列というものは明らかに存在する。しかし、大量失点を喰らったり不甲斐ない戦いをしたりすると大変なことが起こる。


総とっかえ。
言い過ぎかもしれませんが、『信頼』されているから選手が頑張る部分もあるとは思いますが、それ以上に『信頼』と『総とっかえ』の微妙なバランスが選手達に伝わったからこそ、より一層チームが引き締まったのではないかと思っています。スタメン組は安心して自分のプレーをしてもいいけれど、不甲斐ない試合をしたらあっさり外される時もある。控え組は中々出番はまわってこないけど、時としてビッグチャンスがまわってくることもあるから常に準備を怠ってはいけない。初期の頃に「キャバクラ事件」などもありましたが、本当にチーム内の競争が健全化したのはアルゼンチン戦後のDFライン総とっかえからかなと。


シュート練習。
これも考え過ぎかもしれませんが、シュート練習は決めきれない選手達への監督からの叱咤激励の意味もあるかもしれませんが、それ以上にこんなメッセージが隠されているように思えてなりません。『サッカーを難しく考えるなよ、サッカーは落ち着いて相手のゴールの枠に蹴りこめば勝てるゲームじゃないか。』みたいな。どのように守って、どこでボールを奪って、どのようにボールを前に運んで、どのようにフィニッシュの形を作る。もちろんそれも大事だけれど、そればっかりで頭でっかちになるのではなくて、一瞬のチャンスの中でいかに落ち着いてシュートを決められるのかどうかが大事なんだよというか。強豪相手になればなるほど、チャンスの数は少ないだろう。その中でいかに決めきれるかが勝負を分ける。試合の行方を背負って、悲壮な顔でシュートを打つのではなくて、サッカーの最大のカタルシスとしてのシュートを決める瞬間を楽しめよ。こんな感じかな。


トルシエからジーコという監督交代は、かなり壮大な実験ですよね。”規制”から”自由”への変更などという表現も目にしますが、規制の上にも自由はあるし、自由の中にも規制はある。結局のところは”規制と自由”や”組織と個”の中のさじ加減をどこに置くかが監督の腕の見せ所だと思うのですが、日本サッカー協会は意識してか無意識かは分かりませんが、配分を変えるのではなく土台をひっくり返してしまった。その一貫性のなさに腹が立つし、それでどれだけ遠回りをさせられたかを考えれば文句の一つも言いたいところですが、もう少しで壮大な実験の答えが出ます。


『代表としてのチーム作り』と言う意味では見ていてハラハラドキドキの3年半でしたが、ここから先の3週間の『試合に向けてのチーム作り』については大して心配はしていません。23人のメンバーが決まって、1箇所に集まって、試合に対する準備をする。これは監督も選手達もそれぞれ過去に何度も何度もクラブや様々な場所で繰り返している作業だと思うので、期日に間に合わせるためにはどうすればいいということは感覚として分かっていることだろうと思いますから。誰が主導権を取るかという違いはあるにしろ、作業としての締め切りはきちんと守られると思っています。あとはそのスケジュールの中で最良の準備をしてくれれば、と願うばかりですね。


例えば1点負けている試合終盤にDFの選手が、「ベンチの上がれという指示を待つ」のではなく、「ベンチに上がっていいかを聞く」のではなく、「自らの判断で上がっていく」強さをドイツでも見せて欲しいと思います。
行け、日本!!!