天皇杯決勝 浦和 - G大阪

helguera2007-01-01

国立競技場へ行ってきました。
スタジアムに到着した頃は雲に覆われた国立の空も、試合開始の時間になると一面青空になりました。バックスタンドの中段から見る国立競技場のスタンドは8割方が赤いサポーターで、青いサポーターは2割もいるでしょうか。中立地の開催ではあるのですが、関東という地域で言えば浦和のホーム状態です。
しかし、『また今年も元旦が来たんだなぁ』という感慨に耽る間もなく、試合開始からG大阪が浦和陣内に攻め込みます。


試合の前半はバックスタンドの目の前で繰り広げられる、浦和の相馬選手とG大阪の加地選手の攻防が楽しめました。両チームとも基本は3−5−2になるのでしょうか、ほとんど同じような布陣だったので、正真正銘の1対1の戦いになっていました。どちらも攻撃に持ち味のある選手だと思いますが、やはり前半45分間の勝負を見ると判定で加地選手の優勢勝ちでしょう。相馬選手も積極的に前に仕掛けるのですが、ボールをその場に残して自分だけ突破してしまったり、クロスを上げても離れたところにいるG大阪の選手にぶつけてしまったりと、かなり厳しい状況でした。
それに対する加地選手ですが、攻めあがるタイミングを心得ているというか、やはり日本代表として様々な修羅場を潜り抜けてきた地震からなのか、上がる時とステイするときのメリハリがあって、効果的に攻撃に絡んでいたように感じました。


試合全体の流れは、攻めるG大阪に対し、必死に守る浦和という図式で前半は進みます。G大阪が積極的に攻めて惜しいチャンスを作りますが得点には至らず、浦和がボールを奪い帰して一息ついても攻め手は見つからず、再びG大阪ボールに。一進一退の攻防と言うよりは、G大阪から見て一進一休というような前半でした。決定的なチャンスの数で言えば、G大阪には前半だけで4、5回のチャンスがあったでしょうか、でも浦和にはミドルシュートが数本あっただけでした。前半の45分間だけで、G大阪が2−0や3−0でリードしてもおかしくないような展開でしたが、前半終わっても0−0だったので、『浦和にとってこの展開はラッキーだったよね。これはハーフタイムに浦和はテコ入れしてくるかな? でも、どこかとか誰かが目に見えて悪いわけでもないし、監督はどうするのだろう…』と思いながらハーフタイムを過ごしていました。


しかし、やはりハーフタイムには両チームとも選手交代はありませんでした。『それならばブッフバルト監督は選手に激を飛ばしたのか?』と興味深く後半の立ち上がりを見たのですが、前半と同じようにG大阪のペースで後半もスタートしました。前半あれだけ攻めても得点が取れなかったので、後半は浦和のペースになってしまうかと思っていたのですが、結局後半も30分前後までG大阪のペースは変わらなかったように感じました。
ただ、後半途中から選手交代でフレッシュな選手を投入してギアチェンジに成功した浦和に対し、G大阪は選手の足が止まってくるとそこからのもう一踏ん張りが効かなかったように思います。選手の足が止まってきたときが、G大阪のペースが終わる時。そんなことは感じていたので、『後半35分過ぎに浦和のカウンターが決って、浦和が1−0で優勝』と後半の途中から話しながら見ていましたが、まさか本当にそんな形になるとは…。


後半の42分に浦和が決勝点となる先制点を奪ったのですが、攻め込んでいたG大阪に対し、途中交代で小野選手に代わり出場していた岡野選手がカウンターで右サイドを駆け上がり、G大阪のマークを振り切って中央へクロスを流し込みます。これを走りこんできた永井選手が体を投げ出すようにゴールの中に押し込みました。ブッフバルト監督の選手交代がズバリ的中した瞬間でもありましたが、あの時間帯まできっちりと走り回っていた永井選手の殊勲でもあると思います。この場面の前でも、足が止まったG大阪のDFとボランチのパス回しに対し労を惜しまずプレッシャーをかけてマイボールにした場面もありましたし、自分のためにチームのために走り回る永井選手のような存在が居てこその決勝点と感じました。
またポンテ選手も攻撃だけでなく、自陣左サイドが相手と数的同数になっていると思うとすぐにペナルティエリア横まで戻りボールを奪い、浦和の攻撃につなげていました。選手交代で長谷部選手が出てきたり、他の試合では小野選手が控えだったりと豪華な選手層がメダル浦和ですが、このような目立たない無駄走りの積み重ねの部分も大きいよね、などと思いながら浦和の先制を見ていました。


これで残り時間わずかでリードされてしまったG大阪ですが、最後まで猛攻をかけるも得点は奪えませんでした。特に得点が動かない膠着した90分間であるにもかかわらず、選手交代を一枚も切らなかった(切れなかった?)西野監督は印象的でした。全体的には自分たちのペースで試合が進んでいたこともあるでしょうが、スタメンのフィールドプレイヤー10人に対し、投入することによりパワーアップできたり試合のペースを変えられる選手が見ている私にも思いつきませんでした。怪我による交代は有り得ても、戦術的理由での交代が難しいチーム、それが今日のG大阪でした。


それに対し浦和は長谷部選手をベンチに温存し、試合の途中にペースを変えるための交代ができるというのは大きいですね。後半の途中で小野選手が足を痛そうにしていたので、『小野に代えて長谷部?』と思いながら見ていましたが、ブッフバルト監督の選択は「平川選手に代えて長谷部選手を投入し、山田選手をサイドに出す」というものでした。”足が止まってきたG大阪に対し、ちょっとだけ守備力が落ちても攻撃力を上げる。落ちた守備力は足の止まったG大阪に対し、イーブン”という、見ていてうなるような交代でした。そして勝負の時間帯で小野選手に代えて俊足で味方の為の仕事が出来る岡野選手の投入とは…。これでG大阪の守備に一瞬でもほころびが見えれば浦和の得点は時間の問題という展開になり、本当にそうなりました。


試合が決定的なチャンスの数で決るのなら、今日の試合は13−3ぐらいでG大阪の圧勝だったでしょう。でも、勝負は得点の数で決まるもの。G大阪にとっては試合に勝って勝負に負けるというか、受け入れがたい結果となってしまいました。チーム力とか選手層の厚さだけでなく、試合を始める選手と終わる選手というか、監督も含めたチームの総合力の差が出たかなと感じる展開でした。最後の最後に守備固めで3人目の交代である堀之内選手が出てきた浦和に対し、最後までスタメンの11人で戦ったG大阪。試合の終わり方も対照的でした。


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