U22 日本 - シリア

helguera2007-03-28

国立競技場に行ってきました。
1ヶ月前の香港戦の時にはかなり寒かった国立競技場でしたが、さすがに3月の末で桜も咲き始めた国立競技場はそれほど寒くもなく(寒くなかったわけでもありませんが…)、サッカーには絶好のコンディションでした。同じ組で最大のライバルと目されるシリア代表でしたが、試合前のアップではシリアの選手たちはかなりリラックスモードにも見えました。さすがに4カ国中の2カ国が次に進めるとなると、シリアとしては日本に勝てなくても2位にはなれるだろうという余裕でしょうか。それに対する日本はこの試合だけではなく、前の試合からの宿題を抱えているということで、シリアに比べればピリピリしたムードが漂っているように感じました。


その日本代表のスタメンは、前の試合やそれ以前の親善試合などと比較すると平山、李、家長選手が攻撃的な位置に並び、ボランチに本田拓選手が入っているのが特徴的だったでしょうか。試合前には、『やはり反町監督は3トップに拘ってくるのか…』と思ったのですが、試合が始まるとどうも違う感じです。攻撃時は確かに家長選手が平山選手や李選手の左側に並ぶこともあるのですが、シリアボールになると家長選手の位置が随分と低く見えました。前線に残っているのが平山選手と李選手の2人だけだったので、『これは2トップ気味にしてきたのかも…』と思いながら見ていました。前半は日本の攻めが目の前だったのですが、それでも家長選手がかなり高い位置にいて自由に動いているので確信にまでは至りませんでした。


さて、試合は日本のキックオフで始まりましたが、そのボールが流れていきなりシリアのGKに渡ってしまいます。『おぃおぃ、大丈夫かよ日本…』と思ったのですが、そのボールを開始10秒にもかかわらずキープして時間つぶしをするシリアGKには呆れました。『勝つ気あるのかな…』と思わせるようなシリアGKのプレーでした。
しかしどうも固さが目立つ日本の攻撃に対し、カウンター気味に攻めるシリアがチャンスを向えます。左右のゆさぶりからシリアの見事な得点に見えましたが、審判の笛でノーゴール。これで日本は救われました。本当は『1点ビハインドの状態で戦う方が最終予選のシュミレーションになるかも…』とも思ったのですが、まぁラッキーという事で。確かにシリアの選手と日本の選手が両方ユニをつかみ合って日本の選手が倒れましたが、『あれをファールと取らない審判もいるだろうな…』と思うような微妙なプレーでした。


そこで命拾いした日本ですが、そこからはもうイケイケ状態でしたね。特に先制点となった家長選手の左から切り込んできての右足のシュートは鳥肌モノでした。利き足の左のコースを切られていたのでどうするのかと思いましたが、右足からの見事な放物線を描いたシュートがシリアゴールに吸い込まれました。ちょうどボールが向ってくる方向に座っていたのですが、”突き刺さる”と言うよりは”吸い込まれる”という見事なシュートでした。
そしてすぐ目の前の水野選手のFKから平山選手が頭で決めましたが、これも水野選手が蹴ったボールが飛んでいる間に得点を予感しました。だって、ボールが飛んでいく方向にかなりのスペースがあって、そこに青い選手がフリーでいるのですから。それを平山選手が確実に頭で決めて日本が2点差としました。


シリアの”勝つ気があるんだか無いんだか”という状況を考えるとこの2点目で勝負は決ったと思いました。が、そこからの追加点が遠かった。前半には平山選手の見事なミドルシュートクロスバーに弾かれ、後半にはやはり平山選手のニアサイドへの強烈なシュートがポストに嫌われ、『やはり平山は頭しか決らないのか…』と思い始めたとき、見事なボールの動かし方から平山選手が抜け出し、GKとの1対1を落ち着いて決めて3点差とし、その時点で実質的には試合を終わらせてくれました。そこからは『日本が何点取るか』が自分の中での焦点となりましたが、終わってみればスコアは3−0のまま試合は終了しました。


結果を見れば完勝の3−0だし、当面のライバルを倒した完璧な勝利でしたが、それでも手放しでは喜べませんでした。攻撃で言えばもう少し得点のチャンスはあったと思いますが、決定的なチャンスをことごとくふいにしました。また攻撃のビルドアップ時や守備時に不用意にボールを失う場面も多かったですし、相手の最終ラインを破る一番大事な場面でパスの出し手と受け手の呼吸の合わない場面が多すぎるように感じました。いくら練習時間の少ない代表チームとはいえ、同じ国内リーグでプレーしている選手たちなのだから”日本サッカーの蓄積としての阿吽の呼吸”というか”日本サッカーのリズム”というか”日本サッカーの文法”というものがもう少しあっても良いのではないかと思います。今日のシリアの守備は緩いと感じましたし、最終予選で戦う相手が今日のシリアよりも弱いとは思えないので、日本代表にはもう少し高いステージに上がって欲しいと思います。もちろん、上がれるだけの才能ある選手たちが集まっていると思いますしね。


今日の国立は18,000人前後の観衆だったようですが、香港戦の12,000人よりは集まりました。ただ、今日の試合ではまだまだ見に来たお客さんに感動を与えるまでにはいっていないと思うので、”監督と選手たちのあと一歩の頑張り”を期待したいです。つまらないミスを減らし、ボールだけ動かして足が動かない時間帯をもう少しだけ減らす。そうするだけで随分と魅力的なチームになると思うのですよね。個々には技術もアイデアもハートもある選手が揃っていると思うので、それをチームとしての次のステージに上げて欲しい。得点差のある試合でも終了の笛が吹かれるまで隙を見せることなく、相手に「つけ入る隙が無かった」と思わせるような強いチームになって欲しい。なれると思うんですけどね、このチーム。