覚悟の質

昨日のエントリーに引き続きB級コラムです(いつもがB級だからC級か…)。かなり曖昧模糊としたはっきりしない話なのですが、とりあえず書いておきます。


やはりどうしてもヴェルディの成績ということは常に考えてしまうわけです。なぜ勝てないのだろう、なぜ昇格圏内に入れないのだろう。いつもは非常にヴェルディフロントに対して批判的な私ですが、それでもヴェルディフロントが仕事をしていないなんてことはこれっぽっちも思っていない。たぶん、日夜努力をされてヴェルディが強くなるために仕事をされていることでしょう。それは今季の補強を考えても分かります。でも、でも、昇格圏内には手が届かない。
もちろん監督の問題もあると思います。選手ラモスは大好きだったけれど、正直現時点での監督ラモスは評価できない。やはり今季のターニングポイントは7連敗のあのタイミングで監督更迭を判断できなかった優柔不断な決断になるのではないか、そんなことも今から頭をよぎります。


何も、ちょっとうまくいかなかったからといって、やたらめったら監督を代えればいいという話ではないと言うことは分かっています。例え負けが込んでいたとしても、チームとして正しい方向に進んでいるのならば、苦しくても監督を代えない事が正しい判断であるときもあるでしょう。代えたらどうなったのか、逆に代えなかったらどうなったのかということは、パラレルワールドが存在しない限り結果について比較することはできません。だから、どちらが正解だったのかは永久に分からないこと。でも、そこでの行動からクラブとしての覚悟の程は伝わってくると思うのです。
ヴェルディが7連敗で苦しんでいるころ、先にC大阪が都並監督を解任しました。これが正解かどうかは分かりません。でも、そこにクラブの覚悟というものは伝わってくる。そして、ヴェルディは現時点でそのC大阪に順位的に上をいかれてしまっている。


J2のクラブが昇格を果たす時に、何が最終的な起爆剤になるのだろうと考えることがよくあります。最終節で勝ち点差1の違いで昇格できたり、涙を飲んだり。何年かかっても上がれないクラブもあれば、降格して1年で戻るクラブもある。その差を決めるのは何なのだろうという疑問です。
もちろん、こんな深遠な疑問に簡単に答えが出るとは思わないです。でも、ここ数年の昇格劇で感じていることがあります。それは戦力とか戦術とか、そんなものを超えたクラブの覚悟がとてもピュアに先鋭化したときに、そのクラブはフッと上昇気流を掴まえるのではないか、というような思いです。


例えば甲府ですが、ほんの数年前には昇格どころかクラブが存続するか消滅するかの瀬戸際にあったときもありました。その時点では、甲府がJ1に昇格するなどと考えた人は多くなかったことでしょう。でも、見事に入れ替え戦に勝って昇格を果たした。まったくの外野からの当て推量ですが、クラブが消滅の危機を乗り越えたときに、クラブの中で何かの覚悟が決まったと言うか、ピュアなものが高まったと言うか、ベクトルの方向が定まって先端が先鋭化したと言うか、そんな作用が起こったのではないかと思うのです。昇格するとか順位が何位だとかいう目先の何かではなく、クラブがそこにある意義のようなものを突き詰めていったときに見えてくる何かがあって、クラブフロントもサポーターも選手も監督もスポンサーも、皆同じ方向を向いた覚悟が出来上がったのではないか。


例えば同じようなことは今年の札幌にも言えて、クラブそのものの不祥事など、暗黒の時期を乗り越えた結果見えてくる何かがあるのではないか。それは意識して見えるものではなくて、クラブフロントやサポーターや選手や監督などに何らかの条件が整ったときに見えてくる流れと言うか、上昇気流というか。
それは昨年の横浜FCの前代未聞の1試合経過時点での監督交代と言う出来事や、同じく昨年の柏の岡山劇場など、とても特殊な条件でクラブ周辺がひとつにまとまった時に掴める上昇気流のようなものがあって、結局のところここ数年のヴェルディはまだそれらの上昇気流をつかめるほど覚悟が極まっていないというか、思いが先鋭化していないのではないか。ラモス残留という判断は、そのような覚悟のなさを示しているのではないか。


サポーターの質量や熱量の大きさで言ったら仙台なんてもっと早く昇格していてもおかしくないと思うのです。でも、クラブとしての覚悟がまだ定まっていないのではないか。*1それと同じような雰囲気は福岡にも感じることがあります。
ヴェルディで例えるなら今年は今のままラモス監督でダラダラといって、昇格圏内にかすりもしない中位で終えて監督交代。そして来季は新監督でいいところまでいくも勝ち点差1で涙を飲んで昇格を逃す。今のヴェルディの雰囲気だとそれぐらいに劇的な悲しみや”やるせなさ”を経験しないと、昇格に向けた純度の高いピュアな思いというものがクラブ周辺に沸き起こってこないのではないか、そんなことを考えてしまいます。


J2のクラブが昇格をする時には、その時に居た選手や監督やクラブフロントの力だけでなく、その前年より前に種を蒔き芽を育てた方々の苦労もあってのことだと思います。でも冒頭にも書いたように他のクラブのフロントや監督や選手が苦労をしていないとは思わない。ヴェルディのフロントやスタッフだって一生懸命仕事をしてたくさんの苦労をしていることと思います。それでも、何かが足りない。何が足りないのだろうということを考えていると、やはり最後に行き着くのは”なりふり構わない覚悟”が足りないのではないかと思うのです。それはクラブフロントだけでなく、選手も監督もサポーターもスポンサーも含めたクラブ全体としての覚悟が足りないのではないか。


降格を経験した時にもそれまで見えなかった景色を見ることができました。が、勝ち点差1で昇格を逃したときにはそれよりももっと大きな何かが見えてくるのか…、と想像することがあります。できればそんなシチュエーションは体験したくありませんが、そういうシチュエーションを体験したクラブはみんな強くなっているように思えるのです。そして強くなり方がブレていないように感じます。目先の何かにとらわれずに、開き直った強さや覚悟を手に入れ、関係するすべての人の思いが同じ方向を向くかのような、純度の高い覚悟、ピュアな思い。
今のヴェルディは向かうべき方向すら見えていない状況に感じてしまいます。

*1:最終節での悔し涙を経験しているので、もっともっと強くなっていてもおかしくないように感じるのですが…、と言っても現在2位ですが。