日本 - サウジアラビア

負けちゃいましたね。それも完璧に。手も足も出ない完敗ではありませんでしたが、90分間一度もリードを奪うことなく常にサウジアラビアに先制され、3回目の勝ち越しで力尽きてしまいました。0−4や0−5という大敗の完敗ではありませんが、相手の術中に嵌ったという意味では完敗でしょう。


でも、正直に言えば悔しくないのです。なんだか、負けるべくして負けた試合のように思えてしまって。日本も綺麗なサッカーをしていましたが、サウジの方が前に進むサッカーをしていた。とにかく相手に隙があったら前に進む。たとえ数的に同数だろうが不利だろうが、前に進める時は前に進むし、シュートコースがあるならシュートを打つ。ペナルティエリア近くまで行ってもシュートを打たない日本よりも、今日の試合で勝者にふさわしい戦いをしたのはサウジアラビアだと感じています。ただ、リードしてからの露骨な時間稼ぎは何とかならないものかと思うけれど。


日本だってしゃかりきになって前に進む力がないわけではない。それはオーストラリア戦でもそうだし、この試合でもそうでしたが、相手にリードされると尻に火がついたように攻め始める。そこから何度も追いついたことは素直に日本の強さだと思いますが、決勝トーナメントに入ってからは1回も勝ち越せていないというのが素直な日本の現在の実力だと思います。
パスをつないで相手を崩し、局面での数的有利を作る。サイドチェンジを多用し、選手の運動量を増やして数的有利を作る。でも、それはあくまで手段であって目的ではない。点を取るためにはシュートが必要だけれど、日本の攻撃は『誰がシュートを打つんだよ!』とイラつく場面が多すぎます。相手を崩す場面が多い方が試合を優位に進められるだろうけれど、試合に勝つのはシュートを放って決めた方です。それにはシュートを打たなきゃ始まらないし、同点のイーブンの状態でももっとリスクを負って仕掛けなければいけない。その辺りの彼我の差がこの試合の勝敗に直結しているのではないかと感じました。


でも、この試合は仕方がない敗戦なのかもしれません。個の力で崩すのではなく、組織の力を高めるのが現在の段階なのでしょう。ドイツワールドカップなどを経験している中堅やベテランと、年齢はいっていても国際経験の少ない中堅の世代。そして試合出場はかなわなくても多くを吸収して欲しい若い世代。昨年以前の数年間でストップしていた緩やかな世代交代と新陳代謝を促しつつ経験を積む、そんな大会だったと感じているからです。本当ならアテネ世代がもう少し順調に経験を積んだりできていればよかったのですが、アテネでもそれ以降もあまりチャンスを与えられなかった。そのツケを払いつつ結果も追い求める二兎のバランスの結果がベスト4というのが正直な現在の日本の実力でしょう。あとは昨年のオシム監督就任以来築き上げてきたチームの基礎に対し、攻撃の部分で個の力をどれだけ積み上げることができるのか。サウジやオーストラリア相手に1対1で攻撃を仕掛けて相手を抜き去れる選手がどれだけ日本にいるのか。そんなディテールの差がこれからの勝負になるのだろうと思っています。


負けちゃったことは残念なのですが、冷静に考えれば”こんなもんだろう”という気もします。悔しいのだけれど、無茶苦茶悔しいと言うほどでもない、そんな不思議な気分です。