日本 - オーストリア

録画をして試合終了後に時差で結果を知らないまま見たのですが、いや、かなりアレな試合でした。”凡戦”と言ったら言い過ぎかもしれませんが、地元オーストリアが前に出てきた試合開始直後の10分間を除いては、ほとんど日本が主導権を握っていたにもかかわらず、効果的なシュートは数えるほど…。相手が格上というならしょうがない部分もあるのですが、90分のうち80分間は日本が主導権を握っていたと思われる試合ですから、もう少し”おぉ!!”と思わせてくれる攻撃を見たかったです。収穫はオーストリアの皆様に遠藤選手のPKをお見せすることができたことぐらいでしょうか。オーストリアのお客さんも試合の内容は忘れても、あのPKは忘れないでしょう。PK戦での決着は決着をつけるだけで、特に意味も感じられないし。


「めくれやすい芝生」は埼玉スタジアムのこけら落しのイタリア戦を思い出したり、「せくすぃー加地さん」では2002年のW杯決勝のアディダスvsナイキの対決を思い出したりと、試合以外には見所も話題になりそうなこともありましたが、内容そのものに目を引くところが少なかったような…。引いてしまうオーストリアを相手に攻めあぐねてしまうのはしょうがないかもしれませんが、ゴール前でのアイデアだったり意外性だったり瞬間的なスピードの変化だったり、少人数でのコンビネーションだったり、シュートやクロスの精度だったり…。そんなこれまでの日本の課題をあらためて見せられたかのような試合でした。


収穫と言えば、中澤、田中闘選手がDFに揃うと、阿部選手の不在を重大事には感じなかったことと、稲本選手が中盤の底に入ることで中盤の守備でフィジカル的に負けないことでしょうか。中央のCBの2人とボランチの2人以外は、基本的にはアジアカップバージョンでしたから、アジアカップのVTRを見せられているような既視感を覚えるのは当然と言えば当然かもしれません。田中達選手がもう少し前線に”動き”を作り出してくれるかとも思いましたが、あまりにもオーストリアの守備意識が強くてその隙を与えてもらえませんでした。


あと気になったことは、日本のパススピードの遅さです。対戦相手のオーストリアが決して凄かったわけではありませんが、それでもオーストリアのパススピードと日本のそれを比べると、オーストリアが急行だとすれば日本のパススピードはやはり各駅停車ですねぇ。強くて早いグラウンダーのパスを縦につないで攻撃を作ろうとするオーストリアに対し、弱くて遅いパスを横につないで攻撃を作ろうとする日本。”よーい、ドン”で選手を競争させれば、選手の走るスピードはオーストリアも日本も変わらないのでしょうが、攻撃に切り替わった時の縦へのスピードが違いすぎました。大きさサイドチェンジのパスが出るなど、日本の良さも各所に見られましたが、前に進むのに手数がかかる日本の攻撃では相手のゴール前に辿り着いた時には守備の枚数も揃ってしまっていますから、そうするとゴール前でのアイデア不足などの問題がよりクローズアップされてしまいます。


これからの日本は攻撃のスピードアップを目指すのか、それとも今の遅攻にさらに磨きをかけて世界のサッカー地図の中で独自の路線を進むのか。Jリーグの試合を見ているだけではスピードの遅さは気になりませんが、欧州遠征など異文化と出会うと強烈に意識させられてしまいます。これからの日本はどちらに進むべきなのか、どちらに進もうとしているのか。そんなことを考えさせられる試合でした。