2007.10.17 日本 - エジプト

久しぶりにちょっと時間が取れたので、昨年の最後の代表戦となってしまったエジプト戦の録画を見ています。
見始めて1分で鳥肌が立つような違いを感じました。なんだろう、この違い。まず大前提としてJのシーズン中に行われている点、そして日本のホームで行われている点、さらにオシム監督が就任して1年4ヶ月を経過している時点での試合である点は考慮しなければいけません。でも、でも、違いすぎる。


まず試合立ち上がりから相手のボールを持った選手への寄せが早いしタイト。相手の選手との距離がとにかく近い。だからこそ高い位置で相手ボールを奪えるし、奪った後に攻撃に参加する選手の数も多いし、選手同士の距離も近い。テレビの切り取られた画面の中にいる日本代表の青いユニフォームが多い。「次にボールを誰に渡そう」なんて詰まることも少なく、常にパスを受けられる位置にいる選手が複数いて、選択肢がたくさんある。


この試合のエジプトはたぶん昨日の試合の韓国と比べても弱い相手であるとは思えないけれど、そのエジプトをまったく自由にプレーさせていない。タイトについている1人が抜かれてもすぐ次の日本人選手がフォローするし、走りこんでくるエジプト選手にも日本の青いユニフォームが併走してくる。今は失われてしまった選手の動きや躍動感がそこにはあります。選手はそんなに変わっていないのですけれどね。


__大久保__前田__

山岸_鈴木_中村_遠藤

駒野_阿部_中澤_加地

_____川口____


左サイドの駒野も右サイドの加地も攻守に効いているし攻守のバランスも良いし、まさしくサイドに君臨しています。大久保や山岸は縦に長い距離を走り守備を助けた上で攻撃にも効いている。前に走り抜ける大久保や山岸に絶妙のタイミングでボールが出る瞬間は快感ですらあります。中村と遠藤も長短織り交ぜたパスを自由自在に繰り出しているし、サイドチェンジを効果的に使っている。阿部、中澤、鈴木の守備ブロックは堅牢で誰か1人が獅子奮迅の活躍をしているわけではなく、両サイドや中盤の選手まで含めてチームでよく守っている。


録画映像を持っている方がいたら、東アジア選手権から間を空けないで見比べてみると違いがとても良く分かると思います。その違いは1分でも5分でも15分でも45分でも分かります。ピッチ上に躍動感が溢れています。エジプトのくさびのボールが縦に1本入るだけで日本選手が3人すっと集まってきて自由にさせない。攻撃でもボールを持っている選手の横や逆サイドを意図を持った日本選手が全力で追い越していき、そこにパスが飛ぶ。全てのパスが通るわけでもないし、全てのプレーがうまくいくわけではないけれど、全ての選手の動きに意図が感じられます。見ていて楽しいし、ワクワクするチームです。


サイド攻撃と言っても個の力で崩すことを目指すのではなく、右サイドを加地と中村と遠藤がボールを受け渡しながら、相手を揺さぶって揺さぶってクロスを上げる。相手を揺さぶる方法も前後のボールの縦の動きであったり、味方選手を追い越す選手の縦の動きであったり。左は左で山岸、駒野、大久保が絡み合いながら崩す。”エレガント”という言葉を好んで使う監督でしたが、どこまでいくことを目指していたのだろう。90分が経過してもなお右サイドを駆け上がっていく加地の姿など感動的ですらあります。



ただ、日本代表のベンチが映るたびに胸が締め付けられるような想いを味わっちゃいますけれど。ハーフタイムの監督コメントで「もっとボールを早く動かそう」って、今でも充分早くボールが動いているように見えるんですけれど。オシム監督が目指しているものは、このピッチ上に現れているボールや選手の動きよりも、もっと早いのですね。
頭の中に描かれていた完成形を見たかった。