ロンドンオリンピック サッカー日本代表 男子

ブラジル対メキシコという日本になじみのある2カ国の決勝戦が終わって、ロンドンオリンピックのサッカー競技が幕を閉じました。まだオリンピックの閉会式は終わってないけど、開会式前から競技が始まった日本サッカーを中心に見続けてきたので、すでにオリンピックが終わったような気持ちになっています。この面白かったロンドンオリンピックの日本サッカーについてちょっとだけ。


まずは男子日本代表。下馬評は圧倒的に女子の方が高く、ほとんど期待されていなかった男子サッカー。欧州への移動についても男子がビジネスクラスで女子がエコノミーだったことで悪い意味で注目されてしまいましたが、ふたを開けてみれば期待以上の大活躍でした。五輪予選を通じて迷走しつづけた関塚ジャパンでしたが、最後の最後で帳尻を合わせてくれた印象です。ただ、帳尻を合わせたチームの常で戦い方の幅の広がりを作る時間はなかった、スタメンの11人は魅力的なチームを作ることはできたけど、選手交代してギアチェンジができるとか、この相手にはこの戦い方を選択するとか、ほとんど融通が利かないチームでしたね。
でも、五輪予選を通じてチームを作ることができなかった以上、オリンピックを考えるとこれがいっぱいいっぱいだったと思います。最終的にOAでDFラインの強化を図り、何とか形にはなりましたけど最後にそこが崩れたら跳ね返す力は残っていなかった。


試合日程的に初戦で一番強いだろうと思われる相手と当たるというのは、やはりそこにフィジカルだったり戦い方だったりのピークを持ってこなければならないわけで、後半失速するのは責められません。グループリーグの初戦で大敗でもしてしまったら、中2日の連戦であっというまに沈んでしまう。それを考えたら初戦は最低でも引き分けにしたいし、あわよくば勝ちたい。スペインは強豪国とはいえグループリーグの初戦に標準を合わせてくるとは思えないから油断もある。それを考えれば守備を固め前線からチェイスをかけいいところで奪えたらシュートカウンターを仕掛ける。相手が前に出てきて相手のDFラインの裏に広大なスペースがあるから、永井の走力も生きる。ハマりましたねぇ、面白いようにハマりました。あのスペインの慌てっぷりを見ているのは痛快でした。まんまと罠にはめた感じです。


でも、冒頭にも書いたけどおそらくスペインに標準を合わせただろう日本代表はスペインを罠にはめたけど最終的には自分たちも自分たちの仕掛けた罠にハマってしまいました。スペイン、モロッコ、ホンジェラス、エジプトと4試合を戦った後のメキシコ戦では、永井の走るスペースは与えてもらえなかったし、メキシコのボールのつなぎ方のうまさにもやられて効果的にボールを奪うこともできなかった。また、考えられた相手のセットプレーから初失点を喫しさらにミスから逆転を許してからは、余裕を持って守る相手の守備をこじ開けることはできなかった。これはガチ守り縦ポンサッカーの韓国戦でも同じ状況になりましたが、そもそも引いて守る相手を崩そうとしたメンバーを集めたわけでもないので、しょうがないっちゃーしょうがない。五輪予選を通じてほぼ同じメンバーで同じような戦い方をしてチームを育ててきたような状況なら、相手が前に出てきたときや引いてきたときなど、様々なオプションの引き出しをつくることもできただろうけど、残念ながらそこまではできなかった。それがこのチームの限界でした。


最後の試合は残念な形で終戦してしまいましたが、それでも前半の4試合からメキシコ戦の先制までは充分に夢を見せてくれました。永井のチェイシングからのボール奪取や清武、大津、東が絡んだ時の自由自在なポジションチェンジなど、見ていてもとても楽しかった。あと出場時間は短かったけど、酒井高徳も可能性を感じさせてくれました。OAで主将を務めた吉田や徳永なども守備の安定をもたらしチームに落ち着きを与えました。その他ボランチコンビも面白かったけど、やはり中2日の6連戦は体力を奪うとともに時間の経過により判断力も奪っていったのかなと思います。中盤の扇の要みたいなポジションにOAがもう一人いたらどうだったかなと思わないこともありませんが、それでも予想以上の活躍を見せてくれて6試合最後までメダルの夢を見せてくれた男子日本代表には胸を張って帰ってきてもらいたい。優勝したチームに負けたんだから、しょうがないし、あとどれくらい力があれば優勝できるのか実感として得たのだからメダルは取れなかったけどこれからのサッカー人生に大きな財産が得られたはずです。本当にお疲れさまでした。

ロンドンオリンピック サッカー日本代表 女子

銀メダル、本当におめでとうございます。
欲しかった金メダルにはあとちょっとで届かなかったけれど、決勝の内容を考えても金メダルに勝るとも劣らない銀メダルだったと思います。


こちらの女子日本代表は男子と違ってワールドカップ前からほぼ同じ選手が選ばれていて、スタメンについてもほんの少しのポジションチェンジやGKのスタメン変更などありましたが、やはり積み上げてきたものの大きさが違う懐の深い代表チームでした。もちろん自分たちのやりたいサッカーはあると思うけど、対戦相手だって全力で勝ちに来てるのだから全ての試合で思い通り試合を運べるわけでもないし、一つの試合のなかでも相手の時間帯になってしまう時もある。それらを全て仕方がないこととして受け止め、その時にできる最大限の努力をして最後まで諦めない。特にワールドカップ優勝という成功体験をすでにしているチームだから、諦めない先で何が得られるか、耐え続けて相手の気が緩んだ時に何ができるかを知っているチームの強さのようなものを感じました。


ワールドカップの時点では個人的に評価の低かった大儀見(当時は永里)さんでしたが、今回のロンドンでは利いてましたね。彼女がいないときに前線でまったくボールが落ち着かない。一人でも何秒間は確実に時間が作れるし、ポストプレーも距離の短い落としだけではなく、サイドチェンジのような大きな視野の広いプレーもできる。ゴール前の決定力の部分では永里さん時代の面影を感じる部分もありましたが、この大会のなでしこの中でMVPを選ぶなら私は大儀見さんを選びます。今回特に押し込まれている試合での存在感の大きさは群を抜くものがありました。


チーム全体としてはワールドカップの時に比べてやや運動量が少ないかなと感じる時間帯もありましたが、それでも中2日の6連戦を考えれば責めることはできません。攻撃の時も守備の時も数的優位を作ってフィジカルで勝る相手に対応していくのがなでしこの基本かもしれませんが、さすがにこの日程では押し上げができない時もあった。攻撃については一人でなんとかできる選手が生まれそうな予兆はありますが、守備の時に特に強引にドリブルを仕掛けてくる相手に対してディレイするだけではなく体で止めてイエローカードは覚悟するみたいなもう少しずるいプレーも必要なのかな。フェアプレーがなでしこの信条なのは分かりますが、やはり強引にこじ開けてくる相手を止めるには数的優位だけではどうにもならない時もあるし、特にボランチセンターバックに力強さを求めたい。


もう少し交代選手が明確に役割をこなせればとは思いましたが、それでも交代の手は男子より有効に機能していたと思いますし。決勝の最後の時間帯で岩渕さんがあれを決めていれば歴史が変わったかもしれませんが、相手のGKを考えるとこれも責めることはできない。これからのなでしこリーグの試合でシュートを撃つときに、あのGKをぶちぬくことを常に考えてプレーして次の機会にはソロさんの守るアメリカゴールをこじ開けて欲しいと願っています。
澤さんはもちろんのこと川澄ちゃんや大野さん、岩清水さんにはすでに貫禄すら感じられるし、鮫島さんは相変わらず可愛かった。表彰式の丸山さんにはちょっと引くものもありましたが、負けてなお魅力を放つなでしこは日本の誇りであり日本のイメージを変える存在であると思います。本当におめでとうございました。

ロンドンオリンピック サッカー日本代表 解説者 番外編

まったくのオマケで戯言ですのでお許しを。まあ私のエントリー全てが戯言レベルですが。


まずは宮本さん。非常に理知的で分かりやすい解説だった。ただ、その分かりやすさは日頃からサッカーを考えながら見ている人にとっての面白さで、オリンピックでだけサッカーを見る人にも伝わったかどうかは分からないところです。スカパーなどの金を払ってでもサッカーを見たい人にはハマるけど、民放地上波なら松木さんのような存在の方がハマるのかも。たぶん松木さんと究極の対極にいるのが宮本さん。

三浦アツさん。声質がちょっと聴きとりにくい。でも、技術的な部分は面白かった。現地が三浦アツさんでスタジオが大竹さんだと兄妹なのか姉弟なのかが気になってしょうがなかった。

長谷川健太さん。歯に衣着せぬ言い方が気持ち良い。実況が誘導しても違うことは違うと言いきれる強さがあって、面白かった。個人的には次期U23監督をして欲しい。

川上さん。話し方が物議を醸す。前回のワールドカップでは大竹さんの話し方が物議を醸したような気もするので、女性の解説者にとっては避けては通れない部分なのか。声質の好き嫌いははっきりと分かれるところ。私は今一つ…(以下自粛)


これ以外の人が解説で喋ってたとしたらごめんなさい、まったく印象にも残らなかったのか、試合が面白すぎて記憶に残らなかったのかどちらかで他意はありません。基本サッカー中継はNHKで見てたので民放のスタジオで誰が喋ってたのかはほとんど知りませんし、見てませんでした。ただオリンピック期間中の前半にテレビ朝日の朝の番組に出ていた松木さんは最高に面白いエンターテイナー*1だったことだけは確かです。


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*1:エンターテイナー(もしくはエンターテナー)は、自身の特技、演技、芸、パフォーマンス、マジック、音楽などを披露し、観客を楽しませる或いは笑わせることで接待するコメディアン、ミュージシャンを指す。ウィキペディアより