日本一周 離島編1

国道232号線をさらに北上して天塩町に着いた。走り出して1時間も経っていないが、今日はこのあたりで停滞だ。なぜかというと、コインランドリーを見つけてしまったからだ。いくら汚い格好でも平気なオフローダーとはいえ、体につけるものは着替える。当然洗濯物も溜まる。そんなツーリストにとって、コインランドリーはありがたい。本当はどこかの旅館かホテルに宿泊したときにあると最高なのだが、とりあえず天気もいいし今日は洗濯デイだ。
もちろん洗濯機のほかに乾燥機もあって、シャツやパンツや靴下も乾燥機に放り込むが、少し湿っぽい。近くの公園の芝生の上で天日干しをした。天気のいい日に走らないのはもったいない気もするが、芝生に寝転んで洗濯物が乾くのを待っているのも気持ちがいい。


天塩の町で国道232号線は内陸に入り、旭川稚内を結ぶ国道40号線に合流する。しかし、天塩から海沿いを進む道もある。道道909号線*1だ。この道は北海道でも1,2を争う気持ちの良い道だろう。
http://www.jikukobo.co.jp/1_lib_1_hok_michi/27.html
天塩の町を抜け天塩川の河口を越えると道は海に突き当たり、そこからはひたすら原野の中を突き進む道になる。右手にはサロベツ原野、左手には日本海、遠く日本海の先には利尻島礼文島が見える。特に利尻島利尻富士とも呼ばれる綺麗な単独峰だが、海の中に山が聳え立っている不思議な光景だ。
http://park11.wakwak.com/~hokkaido/rishirirebun/49.jpg
その、気持ちのいい風景の中を信号のない道がひたすらまっすぐに続いている。天塩の町から離れれば、視界に人工物が入らなくなり、目に飛び込んでくるのは大自然だけだ。時々ゆるやかなアップダウンを繰り返し、それでも道は北へ、北へ。稚内に続くこの道道は日本であって、日本でない。


そういえば、北海道を走るツーリングライダーの儀式のようなものがある。すれ違うライダー同士で挨拶を交わすことだ。挨拶と言っても止まって話をするわけでもなくて、すれ違いざまに軽く挨拶を交わす。ピースサインだったり、親指を上に上げるサムアップサインだったり、ただ手を軽く上げるだけだったり。皆が自分なりのスタイルですれ違いざまに挨拶を交わすが、このように気持ちのいい直線道路だと、その挨拶も大きく派手になる。バイクのステップに立ち上がってバンザイポーズをしてみたり、仮面ライダーの変身のポーズをしてみたり。見渡す限りの直線道路だから、遠くから相手のライダーの姿が見える。そうすると準備の時間もあるし、なにより気持ちの良い道を走っていると、自然と気持ちが高ぶってオーバーアクションになってしまうものだ。すれ違う相手も同じ心の高ぶりを感じているはずだから。
あまり派手だったり目立つのは好きではないので、自分の挨拶は右手の人差し指と中指を2本くっつけて、ヘルメットの右脇まで上げて手首を返す、軽い敬礼のような挨拶をしていた。結構、気障なポーズだけど。


この道を最後まで走りたいけれど、今日は洗濯デイだったので、サロベツ原野の外れにある兜沼公園キャンプ場で撃沈。ここは公園の中にキャンプ場があって、その公園には入浴施設も併設している。やはり、風呂がないとね。
翌朝はまっすぐ稚内港に向かい、礼文島行きのフェリーに乗る。約2時間の船旅だが、これが揺れた。
http://www.kaiferry.co.jp/risiri/timetable/index.html
今までいろんな場所でフェリーに乗ってきて、船旅は好きだし多少の揺れは苦にしないが、この時ばかりはやばかった。2等船室の床の端と端が、揺れに合わせて1メートルぐらい上下する。このままだと体調的にまずそうなので、床に体をつけて寝て過ごした。天候が下り坂なのだろうか。そういえば、北海道に来てから雨が降っていない。
礼文島に無事上陸したが今日は何もする気が起きなかったので、まっすぐキャンプ場に向かう。礼文島の北端近くにある久種湖畔キャンプ場に向かったが、どうもテントを張りたい気分ではない。天候も怪しいし、何だかキャンプ場が湿っぽく感じるのでテント泊はやめて民宿に泊まることにした。気分が向かない時に無理してキャンプをしても楽しくないからね。



翌朝、目が覚めたらだるくて起きられない。どうやら体調を崩したらしい。旅に出て1週間、疲れが溜まっているのだろうか。一日民宿から出ないで寝て過ごした。
翌日は体調も戻ったので活動再開だ。礼文島には島を一周する外周道路のようなものはない。稚内側のフェリーが着く港側に南北に通る道路があるだけだ。このため、日本海側には手付かずの自然が残っている。その海岸沿いを歩くコースがあり8時間コースと4時間コースがある。
http://www.rebun.info/stay/c_guide1.html


本当は愛と冒険の8時間コースに挑戦するつもりだったのだが、病み上がりでそこまでの元気と体力の余裕もなかったので北の4時間コースを歩くことにした。青空と緑の大地と透き通るような海。よく南の海をエメラルドブルーと言うけれど、北の海だってエメラルドブルーなんだ。また、遅い夏の高山植物が咲いている。本当はもう終わりかけらしいけれど、少しだけ花が咲いていた。本州なら高い山にしか咲かない高山植物が、北海道の北端近くになると平地に咲いているそうだ。名前は分からないけれど、綺麗なものだった。病み上がりにとって4時間コースでちょうど良かった。もう1泊民宿に泊まって、翌朝礼文島から利尻島に向かうフェリーに乗った。3泊も民宿に泊まってしまった。

*1:県道のようなもの、現在は106号線に名称変更