日本一周 オホーツク編2

クッチャロ湖畔での楽しい語らいの翌朝、昨日出会った2人と住所を交換し挨拶を交わし一足先に出発する。このまま国道238号線でオホーツク海を南下しても良かったが、初山別から稚内礼文、利尻と海沿いでばかり行動していたので、少し内陸が恋しくなった。浜頓別の町から道道724号を走っても良かったのだがそれでは面白くないので、国道を少し北上して戻りクッチャロ湖を一周しようとしたが左折する場所を通り過ごし、一本奥の林道に入ってしまった。左折してすぐにダートになったので間違いには気がついたが、地図を確認するとこの道でも道道724号に出られることが分かったのでそのまま進むことにした。しかし、この判断は甘かった。


一口にダート(未舗装路)と言っても、その路面状況は様々だ。締まった土の路面は比較的走りやすいが、濡れると気を使う。砂の路面は滑るしコーナーは要注意だ。でも、この迷い込んだ道はジャリ道だった。それも自然の砂利ではなくて、舗装する一段階前のふぞろいの大粒の砂利。スピードをある程度出さないと前輪が深い砂利を掻き分けてて進まないので非常に不安定だし、スピードを出しすぎるとコーナーで前輪が砂利の上を滑ってコントロールを失ってまっすぐに飛び出してしまう。関東ではここまで深い砂利道を走ったことがなかったので、ペースを掴むまでは苦労した。苦労したと言うよりは、おっかなびっくりで腰が引けていたと思うが、5キロも走るとかなり慣れてきたのでまわりの風景を楽しむ余裕が出てきた。北海道では国道や道道を走っていても大自然が目の前に広がるが、このような林道を走ると大自然の中に包まれているような錯覚を覚える。この全長10キロ程の林道は猿払川に沿って湿原が続いていて、ガイドブックには絶対に載っていない湿原風景を堪能した。


まあ、それでも道道724号線の舗装路に合流すると体がホッとするのだから、オフローダーとしては口ほどにもない根性なしだ。そのままサロベツ原野に近い幌延町まで走り、国道40号線を天塩川に沿って南下する。一気に美深町まで南下したところで少し山が走りたくなったので道道255号を左折し、美深峠を越えて国道239号線を通り、再び興部町オホーツク海にぶつかった。本当は途中の西興部村にあるウエンシリ岳の夏でも解けない氷のトンネルを見に行こうとしていたが、面倒臭くなってスルーしてしまった。というより、久しぶりにバイクで信号のない快適な道を長距離走ってしまったら、気持ちよくて止まれなくなってしまったと言った方が正解かもしれない。ランナーズハイではないが、ライダーズハイのようなものだ。


再びオホーツク海沿いの国道238号を南下するが、そろそろ今日のキャンプ場を決めなければならない。候補は2箇所あって、ひとつは紋別空港の近くにあるコムケ湖の湖畔のコムケ国際キャンプ場だった。近くまで行ってみたが、何となくピンと来なかったのでサロマ湖まで進んでキムアネップ岬キャンプ場にテントを張ることにした。
キムアネップ岬キャンプ場は、文字通りサロマ湖に突き出した岬の先端がキャンプサイトになっている。道路は岬の三角形の根本までしかなくて、そこに駐車場があってバイクも車もそこに止めて、一輪車などで荷物をキャンプサイトまで運ぶ。キャンプサイトの左右はサロマ湖なので、静かな…はずだった。しかし、8月も第一週に入り北海道ローカルの方々も夏休みになったのか結構人が多く、中には発電機を持ち込む人までいる始末。それでも夕暮れ時のサロマ湖は静かだった。夜は宴会状態だったが。


このキャンプ場も歩いて行けるところに入浴施設があった。温泉かどうかは分からないが、建物はドライブインと民宿の間のような微妙な建物だった。車で旅をしていたら立ち寄らない建物かもしれないが、バイクで旅をしていると風呂に入れるのなら建物の汚さとかは気にならない。自分の方が汚いからね。車での旅と比べて、バイクの旅は建物とかに要求する清潔感のレベルが一段階下がることは確実だ。たいていの汚さでは気にならないし、どこにでも座り込んで休むことができるようになってしまった。地面は友達。
友達と言えば、夏のキャンプ場で虫は友達のような物だが、このキャンプ場はこおろぎが多くて大変だった。夜はまだ良かったのだが、撤収する際にテント本体の生地とフライシートの間に多数のこおろぎが侵入していた。