横断編

シラルトロ湖を出て国道391号線を弟子屈に向う。この国道は釧路川に沿って走る、気持ちのいい道だ。弟子屈で国道241号線を阿寒方面へ。この国道もまた気持ちのいい道だ。弟子屈から阿寒まではちょっとした峠道になっていて、直線に飽きた体には気持ちの良いコーナーだ。『北海道の道の魅力は、はるか彼方まで続く直線道路』とか言っておきながら、コーナーが続けばそれはそれで嬉しいのだから、バイク乗りもいい加減だ。
阿寒湖に到着するがあまりにも観光地なので少し興ざめだ。あまり長居をせずに走り出す。本当はオンネトー湖に寄るつもりだったのだが、阿寒湖の毒気に当てられて素通りしてしまった。後で考えると急ぐ旅でもないのだから惜しいことをしたと思った。でも、止まりたくなくなるほど、国道241号線が気持ち良い道だったと言うことだ。阿寒を過ぎてからは下り基調の直線的な道が続く。バイクに乗っているのではなく、まるで自分が宙を飛んでいるような道だった。大げさだが。


山を降りきって足寄町に着いた。ここは松山千春の実家があるらしい。そこには大きな肖像画があるらしい。…らしいというのは結局行かなかったからだ。観光バスが来るほどの観光地だと言う噂を聞いていたし、観光地は阿寒湖で懲り懲りだった。足寄を素通りして池田町に向う。池田町からは国道を走らず、十勝川温泉を通る道道士幌町に向う。
本当は士幌町でナイタイ高原というところに行きたかったのだが、時間がなくなってきたので今日の宿泊地に向う。時間に余裕のある旅だったのだが、今日はちょっと道を急ぐ。山奥の秘湯である菅野温泉に行きたかったからだ。菅野温泉は途中からかなりの距離の未舗装路を走らなければならなかったので、早めに着きたかった。着きたかったと言っても、着いたところで泊まるのは旅館ではなく野営場だが。


然別峡野営場は林間の中にあって、少し湿っぽい感じがして好きではなかったが、それでもここには温泉がある。野営場から歩いて川沿いに下りれば鹿の湯という野天風呂があるし、菅野温泉旅館まで上がれば有料だが温泉旅館のたくさんある風呂に入れる。テントサイトの多少の湿っぽさなど我慢しなければいけないだろう。ただ、連泊したくなるようなキャンプ場ではなかった。
到着してテントを設営し、まずは旅館の風呂に向う。混浴の風呂もあったがいいことはなかった。一度テントサイトに戻り、今度は川沿いの鹿の湯に向う。こちらは野趣満点で、すぐ近くを流れる川が爽快だった。しかし、誤って落ちたら助からないかも…と思うような流れだったが。


翌朝はテントを撤収し山を降りる。来る時は少し苦労したダートだったが、帰りはなぜか楽だ。同じ道を往復することで、コーナーを覚えているせいだろうか。楽しみながら、山を降りた。然別湖をかすめ、国道273号に合流する。通称三国峠を越える。昔は国道とはいえ未舗装のハードな峠だったらしいが、工事中の箇所だけ未舗装だった。それでも、景色は素晴らしい。峠を越え層雲峡に到着するが、当然ロープウェイなどに乗るお金はないので素通りし、旭川を目指す。旭川をかすめ和寒幌加内と通り過ぎ、国道239号で天塩山地を越え日本海側の苫前に出る。苫前から初山別まではひとっ走りだ。