大会31日目 そして祭典の終わり

今日は仕事だが早退する。本当は休みたいところだったが、月末は休めない。休めないといっても無理を言って早退するわけだが。
6月の30日間のうち、試合のために休んだのが今日の早退を0.5日と計算して14.5日。仕事をしたのが15.5日。仕事の仲間の皆、本当にありがとう。こんなわがままを許してくれて感謝の言葉もない。


午後2時ごろ仕事を切り上げ、JRで横浜に向かう。夜8時のキックオフなので、今日も帰れないので横浜に泊まる予定だ。無理して帰れないこともないだろうが、試合の余韻も楽しみたいし、慌しくスタジアムを後にしたくない。スタジアムからの退出が、最後の1人になってもいいくらいだ。ワールドカップジャーナルえのきどさんが、『ワールドカップ〜』と叫んでる人を見たと言っていたが、今日ばかりはそんな気持ちだ。横浜駅に着いてシュウマイを買う。


宿泊先は横浜ベイシェラトンにした。最後の夜くらい豪華にしたい。ホテルにチェックインすると、やけにセキュリティが厳しかった。どうやらワールドカップ関係者が宿泊しているようだ。エレベーター前に警備員がいて、ルームキーを見せないと乗せてくれないし、ロビーに外国人がたくさんいる。どうやらドイツ関係者のようだ。少なくとも南米の人には見えなかった。


着替えて新横浜駅に向かう。新横浜駅からスタジアムまでは、まるでお祭りのようだった。日本にこんなにいたのかと思うほどのブラジル人が歌い踊っていた。きっとチケットを持っている人は少ないのだろう。それでも雰囲気を感じたくて、いてもたってもいられなくてスタジアムのそばに集まってきてしまうのだろう。チケットを見せなければ通れないセキュリティゲートから先は一気に日本人が増えた。席に着くとゴール裏2階かなり遠い席だが、決勝の舞台にいられるだけで幸せだ。


試合前のセレモニーは質素だが国旗を使った印象深いものだった。開会式前の派手なセレモニーに比べるとまったく物足りないが、観客が楽しみにしているのは試合そのものなので、この程度で充分だ。ただ、富士山が膨らんで大きくなるのは恥ずかしかった。


ドイツ 0-2 ブラジル  20:00
マッチナンバー64。ワールドカップの決勝をスタジアムで見ることなんて、もう人生で最初で最後の経験になるのだろう。試合中の緊張感とは違ったワクワクドキドキ感は忘れられない。試合は今大会ほぼノーミスで来ていたカーンの信じられないミスで決った。トーナメントに入ってからのブラジルの決定力は驚異的だ。でも、一番気に入ったのはクレベルソンだけど。


試合が終わったあとのゴールポストにもたれかかって立ち上がれないカーン、声を掛けに行くカフー、この2人は忘れられない。
そのカフーがジュールリメ杯を受け取って高々と掲げるシーン、そして吹き出される紙ふぶき。感動とはまた違う、得体の知れない感情で背中に鳥肌がたった。BGMとして流れる2002アンセムも忘れられない。スタジアム中に舞った折鶴。この場にいることができて、本当に良かった。


カフーカップを掲げる場面を見ながら、『死ぬまでに1回、日本代表がこのカップを掲げる姿を見たい』と本気で思った。今このスタジアムにいるブラジル人、そしてテレビの前にいるブラジル人は本当に夢心地なのだろう。心の底からの歓喜、そんな感情を味わってみたい。いつかは日本代表のキャプテンがカップを高く掲げるのに合わせて大声で叫びたい。一緒に両手を高く突き上げたい。狂いたい。


セレモニーも終わりスタジアムを出て、横浜駅前のホテルに帰るまでの間、横浜の街全体がお祭りの余韻を楽しんでいるようだった。新横浜の街を楽しんで、ホテルの部屋にたどり着いた頃には日付が変わっていた。こうして6月が終わった。