日本 - アルゼンチン

helguera2004-08-18

結果は1−2の惜敗ですが、内容は限りなく完敗でしたね。
この試合はエコパスタジアムのバックスタンド2階中央付近から見ていたのですが、両チームのボールと人の動きの質の差は歴然としていました。


アルゼンチンはボールのつなぎ方もうまいのですが、それよりもつないでいるときも常に前に入れるチャンスを狙っていますよね。単純に縦に楔のボールをFWの足元に入れるのではなく、常にボールを左右に動かしながら日本の守備を揺さぶってからボールを運ぶ印象です。そして、ボールを動かすときに常に人も動いているのですよね。全力で縦に走りぬけるような動きはそんなにたくさんはないのですが、パスの受け手は常に動きなおしてボールを呼び込むし、出し手もパスしたらすぐに動きなおして新しいポジションを取ります。この3〜5m位の動きなおしがそこいら中で繰り返されている感じです。パスが出た瞬間に日本選手の注意は受け手に一瞬集中しますが、その隙をついて出し手は動きなおすので日本選手の視界から消えます。これがいろんなところで何度も何度も繰り返されているんです。そして日本守備陣は混乱していく。


例えばピッチの中央付近でボールを持った選手が右サイドの前のスペースへパスを出そうとしている状況のときに、もちろん右サイドの選手はパスが出る前から動き出してパスを呼び込んでいるのですが、その時にパスが来そうもない左サイドの選手も前に動きなおして日本の守備の混乱を常に狙っているのです。ボール自体は右サイドに動いて前線に運ばれているので日本の守備もそちらのケアをしているのですが、そのとき逆サイドの選手は絶好の位置でドフリーになっています。右で攻撃が詰まったら大きく左にサイドチェンジもできるし、右からクロスを上げたら外から詰めることもできる。ボールの近くだけではなく、DFラインの選手を除いたすべての選手が常に局面を考えながら動きなおしているかのような印象です。


それに対し日本は…まあ、動かないですね。アジアカップの時はコンディションを考えて省エネで動かないのだという意見もありましたが、FWの2人が時々戻ってボールを呼び込む動き以外は、自分から動き出してボールをもらったり、裏を狙ったりする動きは皆無ですね。チームとして動いてもらうという共通理解がまったくないのか、足元でボールを大事につなごうとするあまりリスクチャレンジのパスを出す気持ちが薄くなってしまっているのか分かりませんが、ボールの近く以外で動いている選手が見当たらないような感じです。後半は藤田選手と本山選手が投入されて少しだけ状況も変わりましたが、それでも藤田選手が自分より後ろにいる選手に向かって何度『もっとあがってこい』と声としぐさでアピールする姿をみたことかわかりません。それに比べると前半の45分間は絶望的でした。前半だけでアルゼンチンに大虐殺されてしまうかと思いました。


前半25分前後のプレーだったと思いますが、アルゼンチンのコーナーキックから日本ボールになり、長いパスが右サイドを駆け上がった選手に出た場面がありました。完全に日本ボールではありませんが、イーブンのボールで日本選手が競り合っていてマイボールになるかもしれない、そんな場面でした。中央のFW2人はクロスに備えて全力で相手ペナルティエリアに走りこんでいます。その時にふと左サイドを見ると三都主選手がのんびりと歩いているのですよね。もしクロスが上がったら外からつめるなり、こぼれを拾うなり『波状攻撃をかけるためにはお前も全力で上がる場面だろう』、と心の中で思いっきり突っ込んでいました。


この場面だけではありませんが、とにかく日本選手には走って受ける、動いて受ける、スペースで受ける、こういう意識が皆無のようでした。右サイドの加地選手が中途半端に止まる場面で何度自分の後ろのほうから走り抜けろという声が飛んだことでしょう。まさしく様子見の連続でした。
セットプレーだけでもアジア相手ならなんとかなるかもしれませんが、アルゼンチンのプレーと直接見比べると、その差に言葉も出ませんでした。明日の新聞紙上ではオリンピックの話題の陰に隠れて、『日本惜しかった』とかいう見出しになるのかもしれませんが、日本サッカーの退化もしくは停滞を実感させられた試合でした。


まあ、個人的にはずっと出番のなかった山田卓也選手をたとえ10分間でも見ることができたことと、その山田卓也選手が思いっきりはじけてピッチを所狭しと駆け回ってアルゼンチン選手と日本選手にプレッシャーをかけまくっている姿を見ることができたので多少は満足しています。アルゼンチンのため息がでるようなボールの動かし方も見ることができたし、鈴木選手の豪快なヘディングも見ることができたし。それを除けば、ほとんど何もない試合でしたけどね。