攻めの気持ち、逃げの気持ち

helguera2005-01-14

今朝は気温マイナス7度、曇り時々青空って感じでスタートしたのですが、時間の経過とともに雲が取れてニセコのシンボル羊蹄山がとってもよく見えました。あんなにはっきり山全体を見たのは何年ぶりだろう。毎年2〜3回ニセコヒラフに来ているのですが、晴れたことがない。まあ、パウダーを滑りたい私としては、晴れているより雪が降っている方が嬉しいのですが。


さてシーズン3日目の今日の滑りはさすがに体が慣れてきてイメージしているものに近い滑りになってきているのですが、連続3日目で体にたまってくる疲れと差し引きゼロって感じです。昨夜は降雪も少なかったようで、ゲレンデの状態はくるぶしまでのパウダーですが、場所によっては新雪が吹き溜まりになっています。朝一は山頂直下のエース第四リフトが動き出した直後に1,000m台地に着いたので、リフト始発から4人目の乗客でした。ここは積雪で木がほとんど埋まってしまっていて、どこを滑っても自由という場所なのですが、降雪が少ないとはいえ風で昨日のラインが消されているので、ノートラックの斜面に自分のラインを描いていく気分は最高です。時々わざとボードを横にずらして誰も見ていないのに派手なパウダースプレー*1を上げたりして楽しみました。


結構な急斜面なのですが、気持ちが乗っているときはぜんぜん何とも思わないのですよね。自分の技術は変わらないのに、“いける”とか“平気”とか“楽しい”という気分で滑っていると急だろうがデコボコだろうが何とも思わず滑りぬけられるのですが、同じ斜面でも“いやだな”とか“怖い”とか思っているとコケたりするのです。気持ちが斜面を攻めているときは自分の勝ちなのですが、気持ちが斜面から逃げていると斜面に負けてしまうのですよね。攻めの気持ちと逃げの気持ち、気持ちの持ち方ひとつで体がうまく動いたり動かなかったり。技術的には同じ人間が滑っているのに、人間の体って難しいです。


昼食をとった後、雲ひとつない青空が広がったのでリフトを乗り継いで一番上まで上がって、リフト終点からはハイクアップ*2してニセコアンヌプリ山頂を目指しました。標高1,308mの山頂までは30分くらいの登りなのですが、リフトがないところは本物の雪山なのでなかなか楽じゃありません。
リフト終点から直登が始まるのですが、結構な急斜面でもあり、足元は新雪でもあり登るごとに心臓がバクバクしてきて、踏み出す足の一歩ごとに心臓が口から出てきそうな感じです。顔さえ上げられず次に足を踏み出す場所だけを見て、右足、左足、右足と次の足を確実に出すことだけを考えて登っていました。
きつい直登が終わると右に曲がって稜線を緩やかに登っていきます。傾斜はそれほどでもないところなのですが稜線を超えていく強風にあおられて、油断しているとスノーボードの板ごと反対側の斜面に飛ばされそうな強風です。時々立ち止まって風をやり過ごさないと登れないような状態でした。そんな場所を登りきると山頂なのですが、今まで見えなかった太平洋がバーンと間近に見えてここまで自分の足で苦労して登ってきた人にだけのご褒美のようです。360度さえぎるもののない眺望を楽しみました。


少し休憩して呼吸を整えたあとは山頂からノートラックの大斜面を一気に滑り降ります。30分かけて登った斜面をたぶん2〜3分で滑り降りてしまうのですが、立ち木一本もない大きな斜面を自分の自由なラインを描いて滑り降りてくる気分は言葉では表現できません。自分ひとりだけでその斜面を独占している状態で、なんだか分からない大声を出しながら滑り降りてきました。1月のニセコヒラフでこんなに好天にめぐりあうとは思っていなかったので嬉しい誤算でもあり、今回の旅のハイライトとなりました。

*1:新雪をハイスピードで滑るときに、ターンで雪がたくさん舞い上がるさまのこと

*2:リフトがない所を自分の足で登っていくこと