教育現場と著作権の問題

このニュースで、どうしても分からないことがあります。
国語テスト、消える長文 著作権理由で訴訟も 朝日新聞
以下、リンク先より引用

●長文は教科書を見て回答

 「教科書を読んでこたえるもんだい 『鳥のちえ』を読んでこたえましょう。53ページ10行めから、55ページ9行めまでを読みましょう」

 小学校2年生の教科書に準拠したあるテストでは冒頭に、こんな記述がある。

 通常は、まず教科書に載っているものと同じ文章が掲げられ、その後に設問が続く。このテストには長文はなく、大きな写真などが掲載されている。子どもたちは、各自の教科書を開いて問題を解く。

 現場には戸惑いも生じている。

 漢字の書き取り問題は、教科書を見るとテストにならないため、あらかじめ別のページに印刷されている。教室では長文問題を終えて、教科書を片づけてから改めて書き取りテストを配布する。1時限に2回のテストをする格好で、ある小学校教諭は「手間がかかるようになった」と話す。


著作権法を読むと、営利を目的とするかしないかで、著作物に対する使用料が発生するかしないかを区別しているように読めるのですが。
以下、第35条と第36条を一部引用

(学校その他の教育機関における複製等)
第35条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(試験問題としての複製等)
第36条 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。


この2つの条文を読む限りでは、営利を目的としない学校の先生が作ったテストなら複製をしても(正当な範囲なら)使用料は発生しないが、営利を目的とする教材出版社の作るテストを使用するときには使用料に相当する補償金が必要になると読めます。


そこで分からないのは、現在の小中学校では、日々の授業の中で教材出版社のテストをそんなに頻繁に使用しているのかということです。遥か昔に私がその年齢だったころには、教材出版社のテストを使うのは、有料で受験した全国一斉学力テストや全県でのテストぐらいなもので、日常では先生の作った小テストのようなものをやっていた記憶があるのですが、現在は違うのでしょうか。
教育現場のことを良く知らない人間の素朴な疑問ですが、著作権上の問題とは別に、どうもこの疑問に引っかかってしまいました。


それにしてもこれを機会に著作権法を少し読んでみましたが、対象となる物がどこに属するかで判断の困るような部分がありますね。例えば、

(著作物の例示)
第10条2項 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第1号に掲げる著作物に該当しない。


(編集著作物)
第12条 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。


(時事問題に関する論説の転載等)
第39条 新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送することができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

事実を羅列して報道しているだけなら著作物とはみなさず著作権は発生しないが、それを選択や配列して編集し創造性を有すると著作物となる。また論説は転載しても良いなど、著作権法も勉強すると深いのでしょうね。


最後にこちらでも気をつけなければいけない引用の部分について、引用します。

(引用)
32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。