天皇杯 大宮 - 浦和

helguera2005-12-29

国立競技場に行ってきました。
いや、大宮はよく頑張りました。試合前は0−3ぐらいで負けてしまうのかと心配していました。だって、シーズン中の対戦が1勝3敗で、さらにシーズン中に比べてもトゥット、トニーニョ選手がいなくて、藤本選手が累積警告で出場停止。対する浦和も田中闘選手や田中達選手はいませんが、それでも選手層の厚さの違いは歴然としています。本当に悲惨な試合を見せられるのかと心配していたのです。ましてや前半の12分で桜井選手までが負傷退場してしまうとは…。


試合は藤本選手を欠いている大宮がまったく中盤を作れず圧倒的に浦和が攻め込んで始まりました。ほとんどハーフコートマッチかと思うような攻めでしたが、シュートは打たせません。そのうちに大宮が左サイドから浦和陣内深くにボールを運んでクロスを入れ、ゴール前でのヘディングシュート。浦和が押していたにもかかわらず、シュートらしいシュートは先に大宮が放ちました。
しかし力の差はいかんともしがたく、やはり時間と共に両チームのサッカーの質の差が見えてしまうように感じました。


大宮は負傷の桜井選手に代わり若林選手を入れましたが、森田、若林選手の2トップでは、後方からのボールをほとんどマイボールにはできません。かといってヘディングで競り勝てるわけでもなく、裏を狙って走りこむわけでもない。桜井選手を欠いた瞬間から、大宮の得点はゴール前でクロスに競り勝てるか、若しくはセットプレーだけだろうと感じていました。


一方の浦和は面白いようにボールを回せて、左サイドの三都主選手と右サイドの岡野選手が交互に上がり、中央ではポンテ選手がタメを作り、マリッチ選手が相手のマークを外す。前半中ごろの自陣深くから長谷部選手が右足のアウトサイドキックで左サイドを走る三都主選手の前に出したパスは綺麗でした。相手の選手を外すコースを通って、タッチラインを割らないように右に曲がり三都主選手の走る前方のスペースに走る速度に合わせて転がってくるようでした。
中盤でパスがつながらずにゲームを組み立てられない大宮に対し、長谷部の1本のパスで状況をあっさり打開してしまう浦和。うーん、違いすぎる。


そんな中の前半23分、コーナーキックから浦和があっさりと先制します。チームを離れることがすでに決っているマリッチ選手が、大宮のマークを頭1つ振り切って放ったヘディングシュートが綺麗な放物線を描き大宮ゴールに吸い込まれました。
この得点で浦和が圧勝するかと思ったのですが、失点したことで攻める気持ちが出てきた大宮がセットプレーのチャンスを得て、壁を少しずらしたボールを片岡選手が豪快に蹴りこんで同点に追いつきます。この場面ですが、藤本選手もいなくて誰が蹴るのだろうと思っていましたが、そうきたか。


前半はそのまま1−1で終了し、後半も浦和が押して大宮が守る展開は変わらないものの、膠着した状態が続きます。そんな流れの中で大宮も時間をかけてボールを持てるようになった後半17分、大宮の斉藤選手がボールを右サイドで持つもののクロスを上げるタイミングを失い、「持ちすぎだ」と思った瞬間に浦和の選手に囲まれてボールを奪われ、そのまま大宮から見て右サイド、浦和から見て左サイドを速攻でボールを運ばれ中へクロス、ニアサイドに入った選手を囮にファーサイドから飛び込んできた長谷部選手が見事に合わせました。バウンドしたシュートが大宮のGK荒谷選手の頭上を越え、「外れた」と思いましたが、そのままゴールマウスに吸い込まれていきました。
この場面は斉藤選手だと思うのですが、持ちすぎて奪われた瞬間に勝負が決ってしまったように思います。


これで浦和の勝利が決ったかとも思ったのですが、追加点は入りません。1点差のまま迎えた後半43分、浦和がポンテ選手を下げて守備を強くするためか酒井選手を投入します。交代の手としては間違いではないと思うのですが、気持ち的に守りに入ることに嫌な予感がしてたのです。そうしたら後半44分、大宮がコーナーキックからの波状攻撃でゴール前で森田選手が浦和GKの都築選手と絡み合って潰れ、無人のゴールに冨田選手が頭で押し込みました。これで同点、延長です。


しかし、大宮の健闘が許されたのもここまでで、延長に入ってからは大宮の自由になる時間やスペースは与えられませんでした。浦和が90分で勝ちきれなかったのは、後半1点を勝ち越してから、本気で2点差にしにいかなかったことだと思っていました。だから、大宮に追いつくチャンスを与えてしまった。延長戦に入る前に、ブッフバルト監督が相当気合を入れたのでしょうね。延長に入ってからの浦和は、大宮のDFラインにまで守備のプレッシャーをかけて、大宮の選手を自由にさせませんでした。
90分の中での浦和は、大宮に対し自分達が格上だと構えているように感じましたが、終了間際に追いつかれて延長戦に入ってからの浦和は相手がどこかということをあえて忘れ、「世界のどのクラブだろうと潰してやるぜ」というような、迫力を感じました。


元々力の差がある対戦の中で、強いチームが油断をしてくれれば良い勝負になりますが、本気で潰しにきたら力の差が顕著にあらわれてしまうのは必然でしょう。1対1での勝負ではどの場面でも大宮の選手が勝てる気がしませんでした。しかし、大宮は今シーズンを選手全員の組織力でカバーしてきた。
でも、守備に組織力は発揮できても、攻撃では組織力プラス個人の才能だったり、ひらめきだったりがないと中々相手を崩すことができません。今日の試合の中では、大宮の頑張りも見えたし、また同時に今の大宮の限界も見えてしまったと感じました。特にFWですね。


これで大宮の今シーズンが終わりました。昨シーズンのJ2時代から見ていますから簡単に降格するようなチームではないと思っていましたが、シーズン前半は予想以上に健闘し、シーズン半ばには予想を超えて調子を落としました。これも今日のゲームと同じで、前半の対戦ではJ1のチームが少し油断をしている中で守りを固めて一刺しで決めていましたが、J1の中でも上位に順位をつけてくると対戦相手も本気で潰しにかかります。すると、個人の力で打開できない大宮のようなチームは苦しくなる。幸いにもシーズン終盤に補強などでもう一度チームを立て直し、見事に残留を果たしました。しかし同時にチームの限界が見えたシーズンであったと思います。来季はどのような補強をして、三浦監督がチームを作ってくるのか非常に楽しみです。
まあ、J1は他人事なんですけどね。

以下追記

試合後の三浦俊也監督(大宮)コメント J's GOAL

延長戦に持ち込んだことは評価できるが、力の差はあった。守備はそれほど差がないかもしれないが、ボールを持ったときのクオリティが違った。これはシーズンを通して感じてきたことで、来季への強化ポイントでもある。
(中略)
今日の試合だけを考えれば、勝つためにわずかな確率を探すということだったと思う。藤本を出場停止で、桜井を負傷交代で欠いて、特に攻撃面では厳しかった。
まだまだ上はあるし、浦和の選手個々の力の高さも感じて、選手たちは試合後にガックリしていた。
ただ、シーズン全体を考えれば悪くはなかったと思う。
大宮には、一度どこかのチームを解雇になったような経験を持っている選手が多い。だから、彼らは『何かを成し遂げたい』という気持ちを持っている。これからもそういうチームにしていきたいと思う。

何かを成し遂げたいという気持ちを持っている選手が集まっていたら、精神的にはとても強いですし、自己犠牲を厭わない集団の強さを発揮できそうです。


こちらはスポナビですが、ニュースでも今ひとつきちんと取り上げてもらえない天皇杯ですが、このような動画ダイジェストで何時でも何度でも見られると言うのは嬉しい限りです。