CL アーセナル - レアル・マドリー

痺れるような試合でした。
ファーストレグをアウェイだったアーセナルが1−0で勝っているので、この試合では得点を取らなければ何も始まらないレアル・マドリーでしたが、最後までゴールの遠い試合でした。海外のクラブで一番好きなクラブはレアル・マドリーで、2番目に好きなのがアーセナルという立場ですので正直どちらが次に進んでも嬉しいし、どちらがこの試合で消えても悲しいことには変わりないのですが、そんな些細なことは忘れさせる熱い戦いでした。前日に応援するチームの情けない試合を見てしまったので、より一層この試合の凄さを感じました。日本の国内はリーグが始まった直後で、海外のリーグは長く戦ってきたシーズン終盤ということでの連携の未熟さと成熟の違いを考慮しても、それでもなお選手個人の戦う気持ちの違いに痺れました。2試合のうちの1試合目であることについて昨日のヴェルディが抑えて戦っていたのなら別ですが、アーセナルの選手もレアル・マドリーの選手も気持ちは昂り熱く燃えてもプレーは冷静に鋭く、スコアレスドローという結果でも見終わった後に爽快な疲れの残るそんな試合でした。


技術的に高いから凄いとか、上手いから凄いというのではありません。もちろんこのレベルの選手だってミスはするし、危険な場面もある。グラベセンはDFへのバックパスをさらわれたし、セルヒオ・ラモスなどはパスミスの他にもロビングで浮いてきたボールのクリアを空振りしてアンリにさらわれ、大ピンチにもなりました。それでもそんなミスは忘れさせるほど他の場面では戦っていたし、闘志を見せて100%以上の力でぶつかっていた。そこまで自分たちの限界を越えた上での敗戦なら素直に拍手も贈れます。アグリゲートスコアでは自分達が劣勢なのだから、アーセナルに攻められても自分達からどんどん仕掛けていくレアル・マドリーの選手たち。局面を変えるための横パスやサイドチェンジはあっても、びびって後方の選手が攻めあがらないとか、後ろ髪を引かれているような攻撃姿勢は一切見せませんでした。昨日のACLについては技術や戦術よりも、ホームであるヴェルディの選手たちにそのような気持ちが感じられなかった、リスクチャレンジを恐れる姿勢が見えたことが情けない。


話を戻します。
レアル・マドリーはDFセンターのラウル・ブラボーや前述のセルヒオ・ラモスのプレーに危なっかしいところはありますが攻めて点を取らなければならないのでロベルト・カルロスもサルガドも積極的に上がります。それに対するアーセナルのDFたちですが、チャンスと見ればエブエもトゥレも時にはフラミニさえも上がっていきます。そして何よりも素晴らしいのはただ何となく上がるのではなくて、攻めあがったからには絶対にクロスを入れるぞとか、絶対にシュートで終わるぞといったような、強い決意がプレーの思い切りに垣間見れるところです。守備のポジションにいるけれど、ボールを持って上がった時の仕事はボールを失わないことではなくて、シュートを打って得点を取ることだとフィールドの選手全員が強烈に意識している試合姿勢が凄みを感じさせるのではないでしょうか。


個々の選手については良かった選手もいるし悪かった選手もいるとは思います。レアル・マドリーで言えばベッカムは終始目立たなかったし、ロナウドも前半3分のヘディングシュートとあわやPKかと思ったような突破以外は見せ場を作れなかった。でも、それでも中途半端なプレーではなく常に前を意識したプレーであったのでそれが救いになっていると思いました。
逆にアーセナルのフレブは強い気持ちをみなぎらせるかのような前への突進でアンリに好パスを何本も通していました。アンリについては時々味方のパスに対し拍手のしすぎでもっと走れよと思う試合もありますが、この試合については文句のつけどころが無いくらい戦ってシュートも打ちました。得点という結果は残りませんが、この日のアンリは違う次元でプレーしていたのではないでしょうか。
もちろんアンリの自由なポジショニングを許すのはチームメイトであるリュングベリやセスクなどが献身的な上下動を厭わず繰り返すからでもあるので、アンリを支えている選手についても見逃せませんね。


あとは正直あまり好きなタイプではないレーマンですが、この試合では終始冷静さを失わず好プレーで安定していましたね。ラウルのポスト直撃シュートに続いたシュートを倒れこみながらかき出した時は好きになりそうでした。また、リーグ戦では感情を表に出しすぎて不安定なところも見られましたのでラウルが突っ込んだ場面では烈火のごとく怒って冷静さを失ってしまうのではないかと心配しましたが、そんなこともなく最後の1秒まで気を抜かずにアーセナルゴールを守りきりました。
GKで言えばカシージャスも負けたくない気持ちが伝わってきて見ているのがつらかった。ロスタイムのCKでアーセナルゴール付近まで攻撃参加した後のカウンターでピレスにロングシュートを打たれた時は「やっちまったか」と思いましたが、ロベルト・カルロスの快足に救われました。まあ、点を取られようが自分達が取らなければ始まらない試合ですから、しょうがない場面ではありました。


試合の模様や勝負のポイントについては語らせたら私より上手な人がたくさんいると思うので、そこは譲ります。選手個々については語り始めたら全員についてコメントできそうな、そんな久しぶりに見た死力を尽くした戦いでした。
そんな試合でも、試合後に両チームの選手が言葉を交わし、味方の健闘を労い相手の健闘を称え、特に結果として飛び蹴りを見舞ってしまったラウルがレーマンに話しかけている場面はとても印象的でした。2試合をトータルで考えればアーセナルが次に進むにふさわしいチームだと思いますが、レアル・マドリーにも拍手を贈りたいです。この試合でラウルと2トップを組むFWがモリエンティスだったらどんな結果になったのか、そんな有り得ないことを想像してしまう気持ちも少しだけありますけれど。