ドイツ日記 1日目

成田空港を離陸してからずっと雲の中だ。
空港近くのホテルからシャトルバスに乗って移動しているときに、日本代表ユニを着て到着した人を見かけた。オーストラリア戦を見てきたのだろうか。あの1試合だけで帰ってくるとしたら、ずいぶんと厳しい旅だったろう。すれ違うバスで見かけただけだから言葉を交わすこともないが、実際に話しても言葉が出ないかもしれない。


今回の飛行機は自分で手配した。ちょうどその時期は直行便が取れなくて、ヒースローを経由するブリティッシュエアウェイズに乗ることになった。この便には、エコノミークラスとビジネスクラスの間にワールドトラベラープラスというクラスがあって、機内食などはエコノミーと同じだが、前後のシートピッチがエコノミーよりかなり広い。また横の席の並びもエコノミーの3−4−3列(何だかフォーメーションみたいだな)ではなく、2−4−2列なので、前後にも左右にもシートの余裕があって快適だ。
しかし、カーテンの向こう側には独立したシートが前後互い違いに並んでいるビジネスクラスがある。通路側が前向きなら隣の窓側は後ろ向きと、お互いが隣り合わないように並んでいる独創的なシートアレンジだ。後ろ向きで飛行機に乗ったことはないが、どんな感覚なのだろう。一度は経験してみたいものだ。ファーストクラスは…、たぶん一生経験しないだろう。


ちょうど8年前も北廻りでフランスに向かったな。あの時はチケット騒動に巻き込まれていたから不安な気持ちであまり眠れなくて、窓から延々と続くシベリアの大地を飽きもせずに眺めていた。本を読んだり映画を見たりする気にもなれず、ひたすら時間を過ごしていたっけ。今回はチケットを事前に確保した分、同じ時間でも苦痛のようなものはない。ただ、ドイツに着いてから、毎日試合会場までちゃんと移動できるのかという一抹の不安はある。そして、日本代表。まあ、グループリーグの残り2試合については考えても不安が大きくなるだけなので考えないようにしている。機内で読むつもりで買ってきたサッカー雑誌も手に取る気がしない。


サッカー雑誌と言えば、成田空港近くのホテルで朝食を取っているときに横にいた人がたぶんどこかの雑誌編集者か何かでスカパーに出演していたこともある人だったと思う。ホテルの中にもブルーフラッグが掲げられたりしていて、無理やり煽っているようにみも感じられたが、弾丸ツアーなどに比べると今日の移動は静かなものだ。サッカー関係と思われる乗客は数えるほどしかいなかった。


ヒースロー空港でフランクフルト行きに乗り継ぎ。ここでの乗り継ぎ時間は2時間の予定だったが、フランクフルト行きが遅れて、結局3時間待ちになった。今日は移動だけの一日なので特に焦るわけでもないが、体は疲れているので早くホテルにチェックインしたいところだ。ようやく飛行機がヒースローのターミナルを離れたが、離陸するまでもまた大変だった。ジャンボジェットから小型機までが、一本の離陸用滑走路に対し3列で並んで順番待ちをしている。ざっと数えても10機以上待っていた。結局飛行機が動き出してから離陸するまで30分近くかかった。それだけ時間がかかった割には、実際に飛んでからフランクフルト空港までは1時間位だったのだから、飛行機ってやつは効率が良いのだか悪いのだか。


フランクフルト空港に着いてホテルに向かう。今回は市街地ではなく空港近くのホテルを予約してあった。市街地のホテルが混雑していて高かったこともあるが、何よりも毎日ホテルから試合会場に鉄道で移動するのに、フランクフルト空港駅は都合が良かったからだ。日本の空港だと、到着して長距離列車に乗ろうとするとモノレールやシャトルバスなどでターミナル駅に移動しなければ乗れないことが多いが、ここフランクフルト空港は空港の地下にローカル線が、道路を渡って反対側に長距離線が発着している非常に便利な空港だ。その上、様々なショップやレストランやマクドナルドまである。トム・ハンクスの「ターミナル」という映画ではないが、寝るのだけがホテルであとは空港で用が済んでしまいそうだ。


ホテルにチェックインしてテレビを見ながらこれを書いているが、今大会苦戦しているスェーデンが89分に先制した。パラグアイDFの奇跡的なクリアがあった時に引き分けを予想したが、サッカーとは何と残酷なものか。