ドイツ日記 6日目

helguera2006-06-20

夜9時キックオフは、きつい。
日本代表の試合開始時間について、「2試合連続で昼の3時キックオフはあまりにも不利だ」と書いたばかりなのに、いざ自分が観戦する立場になると、夜9時キックオフは厳しい。


今日はカイザースラウテルンで夜9時から行われるパラグアイトリニダード・トバゴの試合に行った。ドイツに来てから初めての夜の試合ということで非常に楽しみにしていたし、朝も少しだけゆっくりできた。日中の時間はカイザースラウテルンへの経路から少しだけ寄り道してハイデルベルグへ寄った。マンハイムまでICEで30分、そこからローカル線に乗り換えて15分、意外と近いんだ。それでも、フランクフルトの都会の雰囲気と比べて、ハイデルベルグ中央駅前ものどかだし、15分ほど歩くと到着する旧市街地は中世の面影を色濃く残す街並みだった。ただし、ほとんどの建物がショッピングのお店になっているのは、しょうがないとはいえ非常にあざとい気がする。しかし、バーやレストランなどの飲食店はかなり良い雰囲気だった。


ハウプト通りを歩き、聖霊教会からハイデルベルグ城へ向かう。ここは旧市街の横の小高い丘に建ち、近いのにかなり急な坂を上る道だった。となりにケーブルカーがあるのは知っていたが、急坂の雰囲気もかなり良いので、坂を登ることにした。長崎のオランダ坂を5倍の長さにして、うっそうと茂った木陰にしたような感じの坂だった。要は石畳で歩きにくかった。


ハイデルベルグ城そのものは「中世の城だな…」というありふれた感想しか持たなかったが、急坂を登るだけあって城から眺める旧市街の景観は素晴らしかった。城の建つ丘と谷間の旧市街と川と反対側の丘。これらがこじんまりとまとまって、時の流れを止めているように見える。下に降りれば今時のショッピングセンターなのだが、上から眺める分には時代を超えてしまっているように感じた。城からの帰り際に大聖堂の鐘が鳴ったが、古城の石畳の道で鐘の音を聞くと本当に時間がゆっくりと流れているような感じだった。


ハイデルベルグ駅からローカル線でカイザースラウテルンに向かう。路線の関係で、乗り換えなしの1時間半で到着だ。途中で小さな峠を越えていくが、各駅で止まる列車から駅前を見ると、やはり時間が止まっているかのように感じた。それぞれの家に今時の車が止まっていたりするのだが、家の造りが日本人には中世風にしか見えないし、日本のようにこれでもかと電信柱があるわけではないので、非常に街並みがすっきりしている。昔見たアニメに出てきそうな街だった。


カイザースラウテルン駅に着くと、サポーターの姿は見るものの、駅前はいまひとつ盛り上がっていない。不思議に思いながらスタジアム方面に少し進むと、広場で大変なことになっていた。
まずは大きなスクリーンを囲んでのPVの為の広場があったが、ここで直前に行われていたドイツ戦を放送していたらしく、地元ドイツ人がお祭り騒ぎだった。そして、横のメインストリートでは無数の出店があり、そこには赤いユニを身につけたトリニダード・トバゴサポーターが大量に集結していた。厳しいながらも決勝トーナメント進出の望みを残すからか、それとも初出場だから結果より今を楽しみたいがためか分からなかったが、盛り上がり方が半端じゃなかった。対戦相手のパラグアイサポはほとんど見かけなかった。


スタジアムは駅の近くに見えているのだが、これがまた不便な場所だった。サポーターが集まっている広場から線路のガードをくぐるともうスタジアム直下なのだが、そこから登れるのはメインスタンドの客だけ。両ゴール裏やバックスタンドの客はスタジアムがある小高い丘を回りこんで反対側から登らなくてはならない。とても不便だった。駅から遠くて、バスや路面電車に乗るのなら最初から覚悟をしているが、近いのに遠回りをさせられるのはなんとなく腹が立った。
丘を登る道が細い道だったが、予想通り帰りは大混雑だ。スタジアムから出る人々が、何本かあるとはいえ細い小道に集中するので、スタジアム出口付近が満員電車状態でまったく進まなかった。それに対し現地係員は誘導するでもなく、見てるだけ。さすが、ドイツ人クオリティ。


試合は力通りの結果に終わったように感じた。開始直後は両チームともセットプレーからチャンスを作り、それをお互いのGKがファインセーブで防ぐという互角の立ち上がりだったが、時間の経過とともにミスが目立ち始め、その頃からパラグアイペースとなったように感じた。前半途中から試合に退屈した現地観客がウェーブを始めたが、大勢着ているトリニダード・トバゴのサポーターも無邪気にウェーブに参加していた。「チームが押されているのに、ウェーブやってる場合じゃないだろ」と思いながら見ていたが、その直後にセットプレーでのオウンゴールで失点した。やっぱり。


後半は1点を必死に追いかけるトリニダード・トバゴの反撃が盛り上がってウェーブどころではなくなったが、昨年のコンフェデでもドイツ人観客は試合にかかわらずウェーブをやっているが、戦っている当事国はそんな余裕はない。ウェーブはハーフタイムにやってくれ。
また、夜9時のキックオフだったが、本当に暗くなってナイトゲームっぽくなったのは後半からだった。夜9時でも明るいと、生活が随分違うのだろう。


しかし、本当に厳しいのは試合終了後からだった。スタジアムの出口は渋滞するし、駅まで回り道で遠いし、フランクフルト空港駅まで帰る列車は0時54分発で1時間も駅で待つし。駅前のバーでビールを飲む元気すらなかった。ホームでダラダラと列車を待ち、入線してきた列車に乗り出発を待った。しかし、出発時間が迫るほど車内が赤くなり、ほとんど異国状態だった。まあ、本当に異国だが。
そして一番辛いのは、深夜1時を過ぎていると言うのに、車内で寝るのを我慢しなければいけなかったこと。疲れているから寝れば爆睡するだろうし、フランクフルト空港駅で寝過ごしてしまうとたぶん終点のドルトムント駅までさらに3時間熟睡して朝を迎えることになる。途中の駅で目覚めたって、帰る手段がない。何とか起きたまま無事に降りることができたが、ホテルの部屋に帰ってきたのは深夜3時近かった。