ドイツ日記 7日目

helguera2006-06-21

ちゃんとしろ、DB(ドイツ鉄道)。
昨夜の戻りが遅かったので、午前中はゆっくりと過ごし午後からフランクフルト市内に買い物に行こうとSバーンに乗ったら…、もう大変。


フランクフルト空港駅からスタジアム駅を通ってフランクフルト中央駅までは15分ぐらいなのだが、今日乗った列車はスタジアム駅で満員のサポーター(チケットを持っていなくてスタジアムに行ったものの市内に戻る人々)を乗せたまま、中央駅手前のマイン川を渡ったところで立ち往生。5分10分遅れることは日常茶飯事だが、ここまで止まるのは珍しい。止まって30分ぐらいはおとなしくしていたオランダ、アルゼンチンのサポーターも、さすがに30分以上になると勝手に扉を開けて線路を歩き出す。運よくその前で座れていたのでおとなしく待っていたが、取材のヘリまで来る始末。結局動き出したのは止まってから1時間15分後だった。15分のはずが1時間45分もかかった。


本当は市街の繁華街まで乗るつもりだったが、さすがにこれ以上列車に閉じ込められたくなかったので、中央駅で降り駅前のカイザー通りをそぞろ歩きしながら繁華街へ向かった。刃物で有名なヘンケルのショップでは、アーミーナイフに目が釘付けだ。本体から折りたたんでいる様々な刃やツールが出てくるあのタイプだ。陳列された商品を良く見ていると、なんとUSBメモリー付きのアーミーナイフもある。時代が変わったものだ。
その後すぐ近くの三越に寄る。ここはまるでドイツのリトル日本だった。店内にいるのはほぼすべて日本の観光客。覗いただけで何も買わなかったが、いくら免税の手続きが簡単とはいえ、あれほど日本人が集まるのか。


三越を出て、ゲーテ広場へ向かう。広場を歩いていると、公園のベンチに外国人に混じって一人腰掛けている松木安太郎さんを発見。以下はその会話(のできるだけの再現)。

エ: 松木さんですか?
松: そう。
エ: こんなところ(公園のベンチ)で何をしてるんですか?
松: 今日の試合(オランダ対アルゼンチン)を見て、明日のブラジル戦を見て帰る。
  (ワールドカップで来ていることは、聞かなくても分かる。会話が噛み合っていないが、かまわず先に進める)
エ: 読売クラブ時代からのヴェルディファンです。昨年の柏(での降格が決定した試合)にもいました。
松: そうなんだ、そういえば昨日の試合結果知ってる?
エ: 神戸に0−2で負けました。
松: 神戸と次と2試合厳しい試合が続くからね。
エ: ラモスに守備の組織をしっかり作るように、松木さんからガツンと言ってやってください。
松: 分かった。
エ: それでは、お気をつけて。

ブラジル戦の前日にワールドカップを開催しているドイツで出会ったのに、日本代表の“に”の字も会話に出てこない不思議な二人。でも、松木さんからヴェルディの試合の結果を聞いてきたということは、やはり読売の血は抜けないのだな。テレ朝での日本代表の試合の解説についてはいろいろと言いたいこともあるが、実際に出会うと読売の選手とサポの関係になってしまうから不思議だった。角澤アナへの伝言でも頼めばよかった。


市街地を後にしてSバーンは懲りたので路面電車でスタジアムに向かう。さすがのアルゼンチンサポも大勢のオランダサポに囲まれると静かにしている。ドイツからの距離の関係か、オランダサポ7割アルゼンチンサポ3割といったところだろうか。今日もアルゼンチンサポの近くだった。
試合は両国ともGL突破は決めていて、メンバーを落として順位と面子だけをかけて戦う消化試合だったが、それでもミスがほとんどない締まった好ゲームだった。前半の45分があっという間に感じた。日本やトリニダード・トバゴの試合を見た後にアルゼンチンやオランダの試合を見ると、このクラスでは簡単なミスはしないんだなということを強く感じた。得点が入らなくても、両者攻撃的でミスが少なく面白い試合だった。ささうがに後半のロスタイムは「引き分けOK」という雰囲気が漂っていたが。


席がゴール裏の高い位置だったので、縦位置で見るオランダ選手の動きが面白かった。例えばオランダのゴールキックで試合が再開される場面。オランダの10人のフィールドの選手は、ほぼ等間隔でピッチ上に左右に目一杯広がってポジションを取る。そしてファンデルサーのキック後に落下点に向かって急速に集まっていく選手たち。広がり集まり、広がって集まってという選手たちの動きが美しく見事だった。これらの組織性や規則性がオランダが強くなることを阻害しているのだろうか。そうとは思えない。少なくとも選手たちの自由と自主性だけではあのような動きは続かない。オランダでさえ組織の規律を持っているのに、なぜ日本はそれを放棄してしまったのだろう。


そして試合と同時に気になったのが、アルゼンチンサポの応援にかける決意。これは歌が90分間途切れないこともあるけれど、前半の中ごろに試合に退屈した(たぶん)現地ドイツ人がウェーブを始め、0−0にも拘らずオランダサポはウェーブに同調したがアルゼンチンサポは一部が同調しただけで最後までウェーブには加わらなかった。
中だるみした試合ならウェーブもしょうがない(個人的には嫌いだ)が、この試合はそうではなかったし、選手が真剣に戦っているのに試合中にウェーブが起こること自体が不思議だ。ウェーブに乗らなかったアルゼンチンサポにスタジアム内からブーイングが飛んだが、アルゼンチンサポはブーイングを返していた。試合を楽しむと言う意味でどちらが正しいのかは分からないが、感覚的にはアルゼンチンサポのウェーブに反応せず応援を続ける姿勢が好きだ。試合を楽しむのではなく、自国の勝利と活躍を期待して遠くドイツまで来たのだから、ワールドカップというお祭りを楽しむのは試合前と試合後でいい。試合中は何があっても応援が優先だと思う。
そして選手たちが不甲斐ない戦いぶりを見せたら、たとえ自国とはいえ試合後にはブーイングと批判を。批判があるからこそ、強くなるのだと思う。批判のない全員賛成状態は信じられない。