オシム監督インタビュー

昨夜の「やべっちFC」のオシム監督のインタビューを見ました。前からオシムさんを追いかけている人間には目新しいことはありませんが、あらためて聞くと深いですね。

−−代表監督を引き受けた理由は?

監督就任を何故喜んでくれるのか解りません。それは危険です。信頼してくれているということに関しては、心から感謝しています。私はすでに日本に3年半いるので、事情もある程度知っており、どんな仕事であるかを知っていました。だから慎重に考えなければならないと思いました。
しかし同時に、私は何か変えることが出来ると確信していました。その信念がなければ引き受けなかったでしょう…。私は(変えられると)信じています。ただ、私だけなら不十分…、サッカーに携わっている方々、そして誰よりも選手たちは”信じる”ことが大事です。私のことも信じ、そして何よりも自分たちの力を信じる必要があります。彼らには今までとは違う道を歩んでもらいたいです。真剣にサッカーをやりたいという気持ちがあるなら、彼らはよりサッカーに力を入れるべきです。サッカーとはピッチ上だけの仕事ではない。もっとサッカーを生きるべきだと思います。


−−勝利というものの捉え方は?

勝利を望んでいますが、全ての勝利が良いとは限らない。勝利が気付くべき重要な部分から、注意を反らせてしまうことがあります。そうなると、どうしても勝ちたい時に勝てなくなる。過剰なぐらい慎重になる必要はないが、全ての相手を深く尊敬する必要はあります。全ての試合の勝利か、ちゃんとしたチーム作りか、どちらが大事か考えてみましょう。このことに関して私は、はっきりした態度をとらなければならない。「結果を残したいが、失敗してもチームの将来を確保することが出来たならそれでいい」と。これから多くのことを帰ることが可能です。その変化を求めるべきです。


−−”水を運ぶ選手”とは、具体的にどういう選手か?

”水を運ぶ選手”とは、一般的にそれほどサッカーは上手くないが、「他者のために水を運んでくれる」、つまりよく走り働いてくれる選手のことです。
偉大なチームには中心選手と呼ばれる選手がいて、それからよく働く選手もいます。自分の分も他人の分も働く選手です。例えばチェルシーでは、汚い仕事をしているのはマケレレ選手です。守備をしなければならない時、ファウルをあえて何本か犯す必要がある時、そして他人の分まで走らなければならない時に活躍する選手が(チームに)必要です。


−−日本化の意味は?

人に見習うことはダメではないが、人のやり方を採用する時に何らかの形でそれを”日本化”させるべきです。日本はすでに他国から良いところを吸収したので、学んだことをこちらの状況に合わせ調整する。今までは他国を見習っていたので”グローバル化”の中にあったが、これからはそれを逆転し、”グローバル化”自体を”日本化”しなければならないと思います。

インタビュアーが角澤氏だったので非常に心配でしたが、質問は事前に番組スタッフが用意しているものをぶつけているようだったので、極めてまともなインタビューとなりました。「さあ、ここは守りたい日本!」とか言うのかと思った。


冗談はともかく、前半の『日本の事情は知っている』という部分が、日本のサッカーのプレーの質を指すのか、日本サッカー界が抱えている構造的な問題を指しているのか、ちょっと考えてしまいました。私の個人的感想としては、どうも後者のような気がします。協会やマスコミやスポンサーがスターシステムを発動させ、すべてが集金ベースで動いているのを目の当たりにし、本当のサッカーを取り戻すために就任を決意したのかな、そんなことを考えています。


それと「やべっちFC」の前に「うるぐす」で川淵氏のインタビューも見たのですが、特筆すべきこともなくスルーの方向で。いつもの”言い訳の論理”である「トルシエの自由は狭く、ジーコの自由は広すぎて選手が応用できず、そのためにオシムの適度な自由を選んだ」的なことを語っていましたが、もう壊れたテープレコーダー状態ですね。すでにピントがずれているのか、世論をミスリードするためにわざとピントをずらしているのか。どちらかは本人にしか分かりませんが、そろそろ退場してもいい頃合でしょう。


以下追記

こちらのインタビューは酷いというよりも、もう漫談というか、完全に”ボケと突っ込み”の美しい世界を築きあげてますね。どちらがボケとは言わないけれど。
【オシム監督に聞く】 サンスポ

(テレビカメラのライトの前に立ち)

「まるで日光浴に来たみたいだ」


−−代表発表当日に練習の意図は?

「質問の意味が分からない。発表した日に練習してはいけないのですか? 日本では慣れていないのは理解しますが」


−−今回の選手選考のポイントは?

「代表を編成するために必要な選手だということ。ポイントといわれても分からない。真剣に聞いているのですか? ジョークとして聞いているのなら謝ります。もう少しサッカーについての質問をお願いします」


−−イエメン戦先発は

「試合が始まる直前でないと私も分かりません。ひょっとすると2人、いや5人かも。トレーニングを見てから決めます。新しくきた選手はなじみがないので…。今のは冗談ですが」


−−ゆっくりしたところからスピードアップする練習に見えたが

「スピードの変化はあらゆるサッカーの試合で必要。それがしっかりできるのがいいチームです」


−−選手の成長を感じるか

「冗談ですか? 1日やそこらでマスターできるなら私は魔法使いですよ」


−−千葉の選手は練習をよく理解している?

「特別扱いはしていない。ジェフだけでなく浦和のことも聞いてほしい」


−−イエメン戦も勝利だけが成功ではない?

「いつも同じ考え。失敗から学ぶ姿勢がないとやっていけない。負けるのは嫌いだが、禁止しても勝てるわけではない」


うーん、記者も早くオシムさんについて学ばないとまずいんじゃないでしょうか。少なくとも、日本的な予定調和のインタビューが成立する相手ではないことは、一日も早く理解しないと。


『−−試合まで時間がないですが?』
という質問に対し、
『短い時間で精一杯の準備をします』
という、日本的予定調和の答えは返ってこない。


返ってくるとしたら、
『−−試合まで時間がないですが?』
という質問に対しては、
『それは私も知っている』
で終わってしまうでしょう。


少なくとも、
『−−試合まで時間がないですが、トリニダード・トバゴ戦のように選手を同じクラブからユニットで使いますか?』
のような、具体的な質問じゃないと答えてくれないと思います。


まあ、具体的質問をしたとしても、
『それは試合まで答えられない』
と言われて終わりそうな気もしますが(笑)。


参考
オシム監督に聞く 報知