見出しから考えるサッカーメディア論(というほど立派なものではないけど…)

先日のこちらのエントリーを書いてから、継続して考えていることがあります。
見出し 拙ダイアリー8/21
こちらのエントリーに対してリンクを貼って頂いたり、コメントを頂いたりした皆様、ありがとうございました。ひとつひとつのコメントにお返事をする前に、頭の中でモヤモヤした続きがあったので返事をいたしませんでしたが、このエントリーをもってお返事ということでご容赦ください。


まずは『日本代表のためだけにJリーグがあるわけではないので、今の見出しはおかしいのではないか』という部分については、数日経った今でも同じです。これは、メディアや協会も含めた日本サッカー界が今後も肝に銘じなければいけないことだと思います。
で、それを踏まえた上で、売るためや視聴率を取るためにキャッチーな見出しとして日本代表視点を利用することの是非について考えています。


確かに何事も簡単に分かりやすく伝えるためには、キャッチコピーやキーワードなど分かりやすく読者や視聴者に刷り込みやすい切り口があったほうが良いというのは分かります。それがスターシステムの発動だったり、Jリーグの試合を報じる時も「日本代表の誰々がどうだった」という姿勢につながるのでしょう。短時間で、短い情報量で、視聴者や読者に試合を伝えるには何らかの取捨選択をしなければならない。それが現在では日本代表というブランド力なのでしょう。
ただ、そこで行われているのは目先の利益だけの確保というのか、スターの使い捨てであったり、サッカーというコンテンツの使い捨てのように感じてしまいます。試合として非常に面白いものであったとしても、それを伝える切り口が日本代表選手のゴールシーンだけだったり。その選手が日本代表を外れればそれっきり。また次の注目選手をスターシステムに押し上げて利用するだけ。その日暮らしではありませんが、常に今のことしか考えない。


とにかく”伝える”ということに特化すればそれでもいいのかもしれませんが、”サッカー文化の担い手”の大きな一部として、果たしてそれでいいのだろうか、という疑問がつきまとっています。すべてのJの試合が面白く中身の濃い試合だとは思わないけれど、それでも毎節何試合かは面白く中身の濃い試合もあるでしょう。それらの試合を丹念に取り上げ、分かりやすく面白く視聴者や読者に伝える。それをキッカケにサッカーやJリーグに興味を持つ人が増えれば、長い目で見ればサッカー番組の視聴率や読者の購買意欲の増加にもつながる。

消費者のメディアに対する厳しい要求
 ↓
良質なメディアの増加
 ↓
新たなファン層の取り込み
 ↓
ファンの増加によるメディアの視聴率UPや購買意欲の増加
 ↓
消費者のメディアに対する要求

理想的過ぎるかもしれませんが、このようなサイクルが確立されれば、メディアも消費者も互いにハッピーな関係が築けるのではないかと思うのです。


しかし、現実は、

メディアの浅い切り口
 ↓
ファンの既存メディア離れ
 ↓
メディア離れによる視聴率DOWNや購買意欲の低下
 ↓
さらなるおざなりの報道

まあ、これは極論ですけど、現状では既存メディアが目先の利益にこだわるあまり、将来の顧客作りを自ら放棄しているように感じてしまいます。



ただ難しいのはメディアもビジネスですから、現時点でどれほど優秀な人材をJリーグの各試合に派遣できるのか。また、練習や合宿などから試合まで継続して取材できるのか。浅い切り口を改善するには深く長く取材し、それを伝える枠や時間も多く取らなければならないが、現実的にそのような枠を確保できるのか。
このようなことを考えるとサッカーメディアにおける全国紙の存在や全国放送のテレビでサッカーを伝えることには限界があるのかな、そんなことも思っています。


地域密着型の色が濃いサッカーについて、全国紙や全国放送の果たす役割と、地方紙やローカルテレビ局の果たす役割の分担が重要になってくるのではないか。そして、それは地方によってはすでに当然のようになされていることであって、関東圏が逆に立ち遅れているだけなのではないか、と思うようになりました。
例えば夕方のニュースの時間でも、全国放送枠と地方ネタ枠があると思うのですが、新潟や北海道では当たり前のようにアルビレックスコンサドーレの話題が取り上げられているのではないでしょうか。日本各地のテレビを見たわけではありませんが、きっとローカルニュースの時間帯に積極的に地元クラブを取り上げているテレビ局も多いことでしょう。
しかし、関東のキー局ではグルメ特集ばかりだったり(笑)、その他スポーツとは関係のない話題ばかりだったりするのではないかと思います。このような事情は各地どうなのでしょうか。


もちろん関東圏だってテレビ神奈川とかテレビ埼玉とか千葉テレビとかは存在し、それぞれ独自に地元チームを盛り上げるべく取り上げているのだとは思いますが、いかんせんキー局が映ってしまうとわざわざローカル局を見ようとする人も少ないだろうし。
まだ考えがまとまらない部分も多いのですが、将来のことも考えた良質なサッカー報道への取り組みというのは、すでに地方紙や地方局では始まっているのではないか、そんなことが頭をよぎりますし、今後の可能性を考えるとそれしか方法はないのではないか、そんなことも考えてしまいます。
メディアを”サッカー文化の担い手”として考えた場合、その役割を担えるのは地方メディアの力しかないのではないか、全国紙や全国放送はすでに限界なのではないか。まだ、答えがまとまらないのですけれど。